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11/27水19:00〜20:00
「リンクジュース」とは、飲料のジュースが流れていくように、リンク元ページからリンク先ページへ、検索エンジンの評価価値が渡される、と考える概念を指す。
ひと昔前のSEOでは、よく知られた言葉だったが、現在では注意が必要だ。
Googleの公式見解として、リンクジュースの存在が認められているわけではない。誤った理解のもとにリンクジュースをSEOに利用しようとして、逆に検索順位の低下を招くリスクもある。
本記事では、以下を解説する。
● そもそもリンクジュースとは何なのか?
● Googleはリンクジュースについて、どう述べているか?
● 現在のSEO実践者は、リンクジュースにどう向き合うのが正解か?
「リンクジュースは初耳だ」という人から「昔、熱心に取り組んでいた」という人まで、知識をアップデートして、日々のSEOに役立ててほしい。
目次
まずはリンクジュースとは何か、基本的な知識から解説していこう。
冒頭でも触れたとおり、「リンクジュース」とは、あるWebページから別のWebページへリンクが張られたとき、リンク元からリンク先へ渡される価値(権威性やドメインパワーなど)を指す概念だ。
英語の“juice”には、「活力、エネルギー、(金銭などの)甘い汁」といった意味合いがあることを踏まえると、イメージしやすいだろう。
▼ リンクジュースのイメージ図
上の図でいえば、“WebページA”は5つのページから、被リンクを受け取っている。
このときに、
「リンク元ページから、ジュースが注がれるように、SEOに有利な評価価値が流れてくる」
と捉えるのが、リンクジュースの考え方だ。
たくさんのWebページから、たくさんのジュースを注がれたページは、検索エンジンから高評価され、検索結果の上位に表示されやすくなる、というロジックである。
リンクジュースについて深掘りしていく前に、ひとつ断っておきたいことがある。
「リンクジュース」は、“SEOの世界で俗にいわれる概念”であり、Googleが公式に認めているものではない。
むしろ、Googleはリンクジュースについて否定的なのだ。
Googleのスポークスパーソンであるジョン・ミューラーは、「リンクジュースの話は、全部忘れて良い」という主旨のツイートをしている。
I’d forget everything you read about “link juice.” It’s very likely all obsolete, wrong, and/or misleading. Instead, build a website that works well for your users.
〔訳〕「リンクジュース」について読んだことは全て忘れて良い。全てが時代遅れで間違っていて、さらに誤解を招く可能性が非常に高い。それよりも、ユーザーにとって適切に機能するWebサイトを作ってほしい。
私たちバズ部の考えとしても、まったくジョンの言うとおりだと思う。
リンクジュースのことを気にせず、コンテンツづくりに邁進することが、最高のSEO対策である。
ただ、一方で、
「とはいえ、知識としては知っておいたほうが近道できる、リンクジュース絡みの話」
があるのも事実だ。
この先は、
「コンテンツが最重要なのは、当然の大前提(リンクジュースは、あくまでも補助的なスパイス)」
というマインドセットを再確認したうえで、読み進めてほしい。
ここからリンクジュースについて、深掘りしていこう。
まず、“PageRank高比重時代”のリンクジュースの話は、ジョンが言うように無視してほしい。
どういうことか、詳しく説明しよう。
そもそも、リンクジュースという言葉は、2000年代前半の古いSEOで盛んに用いられた概念である。
ネット上にあふれているリンクジュース情報のほとんどは、上図の2005年頃に流行した、古典的なSEOテクニックだ。
現在は通用しない。なぜなら「PageRank」という、過去にGoogleのメインだったアルゴリズムを攻略する手法だからである。
PageRank(ページランク)は、Googleのアルゴリズムの中で最も古く、最も有名なアルゴリズムだ。
Google創業者であるラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンが開発し、1998年に米国特許の出願がなされ、2001年に申請許可が下りている(US6285999B1)。
Googleの創業は1998年だ。Googleは、PageRankをスタートとして、現在の巨大企業にまで成長したのである。
PageRankのアルゴリズムでは、WebページからWebページへのリンクを「投票」と解釈する。
「どのサイトが、他ページから最高の情報源として、多く投票されているか?」
を解析してランキング要因とするのが、PageRankである。
※詳しくは「ページランクとは?今でも意識するべき理由と調べ方を解説」を確認しておこう。
過去に流行したリンクジュースは、今となってはレガシーとなりつつある旧PageRankのアルゴリズムを攻略する概念だ。
Googleの技術は大きな発展を遂げ、現在では、PageRank以外に数百以上のアルゴリズムが稼働していて、PageRankの重要度は相対的に低下していることを押さえておこう。
実際、2011年8月の時点で、Google公式ブログに、
というメッセージが公開されている。
ここから、さらに10年以上が経過した現在である。
Googleは、独自開発したAIテクノロジーを駆使して、どんどん先へ進んでいる(「Googleのアルゴリズムとは?2022最新アップデートから対策まで解説」も参照してほしい)。
PageRankをベースにした古典的なリンクジュースのノウハウを、熱心に突っついている滑稽さが、わかるだろう。
Google内部の人間が、呆れて「無視せよ」というのも、当然だ。
では、
「他ページから受け取る被リンクによって、ページの評価が高まることは、ないのか?」
といえば、これは“ある”。
被リンクは、依然としてSEOにとって重要である。
話を先に進める前に、「リンクジュース」の言葉の意味を整理しておこう。
古いリンクジュースという言葉を、ここでは、
「リンク元ページからリンク先ページへ、何らかの情報が、検索エンジンに伝えられるという概念」
と再定義する。
かならずしも、“甘い汁”ではないところがポイントだ。
この意味において、2020年代以降のSEOにおいて注視すべきは、旧PageRankよりも「TrustRank」である。
TrustRank(トラストランク)は、PageRankと同じように、リンクをベースとしたアルゴリズムである。
※注:Googleよりも先行して、Yahoo!が特許取得した同名の「TrustRank」というアルゴリズムが存在する。
そのため、Googleは「TrustRank」の商標登録ができず、正式名としては使われていない。
Yahoo!のTrustRankと、GoogleのTrustRankは、別のアルゴリズムなので、混同しないように注意が必要だ。
ここで取り上げるのは、GoogleのTrustRankである。
GoogleのTrustRankは、「Search result ranking based on trust(信頼に基づく検索結果ランキング)」の名で特許(US7603350B1)を取得している。
▼ US7603350B1の図解の一部
出典:US7603350B1
Googleは「Trust DB(信頼データベース)」を持っていて、そこには収集したWebページに関する、信頼情報が蓄積されている。
特許の内容は非常に長文で全体は紹介できないが、ごく一部を引用しよう。
〔訳〕システムは、Webクローラーを利用してWebページを調査し、どのユーザーが、特定のサイト・ページを信頼しているのかの情報を見つけることもできる。
Webページを調査している間に、Webクローラーは、以下のようなさまざまな関係を調査可能である。
(1)“信頼されたもの” に属するページへのリンク
(2)ユーザー(サイト運営者)が信頼するページを識別する信頼リスト
(3)無価値なページの所有者を信頼するユーザー(サイト運営者)を識別する無価値リスト
As indicated above, the system can also use a web crawler to examine web pages to locate information indicating that which user trusts a particular entity. While examining web pages, the web crawler can look for a number of relationships, including: (1) links from the user’s web page to web pages belonging to trusted entities; (2) a trust list that identifies entities that the user trusts; or (3) a vanity list which identifies users who trust the owner of the vanity page.
出典:US7603350B1 Search result ranking based on trust Google Patents
実際には複雑な仕組みでアルゴリズムは動いているが、押さえておくべきポイントは、
「自サイトのページのリンク関係から、信頼ランクが採点されている」
という事実である。
かみ砕いていえば、
「Googleが“信頼できるサイト”と認識しているサイト群と、自サイトがリンクによってつながると、信頼スコアを加算するリンクジュースが流れてくる」
と考えられる。
逆に、信頼ランクの低いページと近しい関係と判定されれば、信頼スコアが減点される、といえるだろう。
最近の動向としては、PageRankの特許がアップデートされていることにも、注目しておこう。
選ばれた少数の信頼できるページとの関係の近さによって、信頼度を測る仕組みが存在する。
出典:US9165040B1 を加工
ポイントは、以下の3つである。
● 「信頼できる」ページ(=シードページと呼ばれる)を選定し、シードページからのリンクをたどって、良質であると思われる他のページを発見する
● シードページからの直接リンクだけでなく、シードページからリンクされたページの先のリンクも、たどっていく
● シードページからのリンク間の距離が短いほど、ランキングスコアが高くなる
TrustRankやシードページの概念を、どうSEOに活用できるだろうか。具体例で考えてみよう。
たとえば、中小企業を支援するBtoBのオウンドメディアを運営していたとする。
権威性の高い、go.jpドメインの中小企業庁から被リンクを獲得できれば、信頼スコアが上昇し、SEO効果が得られるだろう。
しかし、中小企業庁から直接リンクしてもらうのは、かなりハードルが高い。そこで、「中小企業庁からリンクされているサイトからのリンク」を獲得できないか?と、考えてみるのだ。
「信頼サイト群の輪の中に入る」ことを意識して、被リンクの戦略を立ててみてほしい。
同時に「無価値サイト群の輪の中に入る」ことがないようにも、注意しよう。
ここまで、他サイトからの被リンクについて話してきた。
「内部リンク(自サイト内のリンク)」とリンクジュースについても、触れておこう。
古典的なSEOテクニックでは、
「検索上位を獲得したページから、他のページへ内部リンクを張って、リンクジュースを分け与える」
「検索上位に押し上げたいページへ、サイト内からの内部リンクを多数張って、リンクジュースを集中させる」
といった手法が使われていた。
リンク先へ、高評価が配分されると考えられていたからである。
現在、このようなことはないので、注意したい。
ジョン・ミューラーも、ユーザーからの質問に、以下のとおり答えている。
I’d forget everything you read about “link juice.” It’s very likely all obsolete, wrong, and/or misleading. Instead, build a website that works well for your users.
— John Mueller is mostly not here 🐀 (@JohnMu) July 29, 2020
ユーザー「トップページのリンクジュースを、カテゴリページに渡したいのですが」
ジョン「リンクジュースについて読んだことは、すべて忘れてください。
時代遅れで、間違っていて、誤解を招く可能性が非常に高い。
それより、ユーザーのためになるWebサイトを作りましょう」
出典:Twitter
「内部リンクによって、検索順位がアップすることはないのか?」
という疑問に対しては、アップすることはある。
ただし、それは「リンクジュースのおかげではない」ことを理解しておく必要がある。
内部リンクは、Googleやユーザーに、サイトのコンテキスト(ページ同士の関係性やさまざまな状況)の情報を伝える役割を果たす。
たとえば、Googleは、内部リンクのつながりを見て、サイト内でどのページが重要なのか理解する。
全ページから内部リンクされているページ(例:トップページ)であれば、重要度の高いページだと理解するだろう。
Googleは、当然、重要ではないページよりも重要なページのほうを、検索結果に表示させたい。結果として、内部リンクによって検索順位がアップすることはある。
以上の話をまとめると、内部リンクは、リンクジュースのためではなくコンテキストを伝えるために注力すべきSEO施策だ。
実践に関する詳細は「内部リンクとは?SEOでの重要性と効果が出る張り方のコツ」をチェックしよう。
最後に、リンクジュースの話題となると頻出の「nofollow」について触れておこう。
「nofollow」とは、リンクを張るときにHTMLのアンカータグ(a タグ)の属性として適用できる値である。
nofollowの値は、もともとブログのスパム対策(*1)として、2005年にGoogleによって考案された。
「rel=”nofollow”を持つリンクは、リンク先のPageRankに影響を与えない」
としたのである。
2005年当時は、リンクジュースの最盛期でもあるから、
「自サイトのリンクジュースを渡したくないページにリンクするときは、”nofollow”を設定する」
という手法が一般化した。
*1:ブログのスパムについては「トラックバックとは?意味と不要な理由をわかりやすく解説」で説明している。
nofollowが開発されてから20年近く経つ現在、Googleはnofollowの扱いを変更している。
以下は、2019年9月のGoogle 検索セントラル ブログからの引用である。
nofollow の導入当時、Google は、このようにマークされたリンクを検索アルゴリズムで使用するシグナルと見なしていませんでした。このたび、この点も変更されました。すべてのリンク属性(sponsored、ugc、nofollow)は、Google 検索でどのリンクを考慮または除外すべきかに関するヒントとして扱われます。これらのヒントは、他のシグナルとともに、システムでリンクを適切に分析して使用する方法をもっとよく理解するための手段として利用されます。
つまり、現在ではnofollowの値を持つリンクであっても、検索アルゴリズムで使用するシグナルとしてみなされる。
「コメントスパムに、評価を与えたくない意思表示」など、合理性がある場合には引き続きヒントとして利用されるが、評価を与えない合理性がないのにnofollowの値を設定しても、Googleは無視すると考えられる。
詳しくは「nofollowとは?設定すべきケースは2つだけ!正しく理解しよう」を確認しておこう。
本記事では「リンクジュース」をテーマに解説した。要点を簡単にまとめておこう。
リンクジュースの基本として押さえたいポイントは次のとおりだ。
● リンクジュースとは被リンクで受け取る価値を「ジュース」に例えた俗語
● 非公式のスラングであることに注意
● Googleは「リンクジュースの話は無視すべき」といっている
上記を踏まえたうえで、以下を解説した。
● 「PageRank高比重時代」のリンクジュースの話は無視する
● 旧PageRankの重要度は下がっている
● いま注視すべきアルゴリズムは「TrustRank」
● 内部リンクはGoogleのコンテキスト理解のために重要
● nofollowを使ったテクニックは過去のもの
リンクジュース自体は、古いSEO手法のレガシーといってよい。
ただし、「そんなものは存在しない」と完全に切り捨てるのではなく、“現代におけるリンクジュース的なモノ” に丁寧に目を向けながら取り組むことで、より精度の高いSEOを実現できるだろう。
本記事をその一助としていただければ幸いである。
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