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11/27水19:00〜20:00
指名検索、すなわち「会社名・ブランド名・商品名」などを含むピンポイントな検索は、企業にとって大きなビジネスチャンスとなる。
この機会を最大限に活用するためには、適切なSEO対策が不可欠だ。しかしながら、指名検索に本気で取り組んでいる企業は、どれほどあるだろうか。
こんな声が聞こえてくる。
「わざわざ、自社の商品名でSEO対策しなくても、検索上位は獲れているから」
「すでに購入決定しているユーザーに、リソースを割いても仕方ない」
──本当に、そうだろうか。
対策を後回しにしているうちに、あなたの企業の指名検索は、競合他社からアフィリエイターまで、さまざまなサイトが狙っている。
指名検索からの流入こそ、手堅くキッチリ獲得して、売上につなげたいところだ。
本記事では、指名検索の基本から重要性、SEOへの取り組みまでを包括的に解説する。指名検索の取りこぼしを解消して、利益率を高めてほしい。
最初に、「指名検索」とは何か、基本的な意味から確認しておこう。
指名検索は、「特定の会社名・サービス名・商品名などを含んだ検索」を指す。
たとえば、[iPhone 15]という具合に、商品名がピンポイントで検索されるケースがある。あるいは、[最新のiPhone]のような、ブランド名や商品名を含んだケースも指名検索である。
具体的な定義は、SEO先進国である米国のSEO用語として理解しておくと、理解が深まるだろう。指名検索は、英語では「Branded Search(ブランド検索)」に当たる。
米国のSEOツール会社であるAhrefsのサイトでは、ブランド検索とノンブランド検索の違いが、以下のとおり解説されている。
Difference between branded search and non-branded searchThe difference between branded and non-branded search is that a branded search contains your company, service, or product name, whereas a non-branded search doesn’t. This applies to both organic results and search ads.
〔訳〕ブランド検索とノンブランド検索の違い
ブランド検索とノンブランド検索の違いは、ブランド検索にはあなたの会社名、サービス名、製品名が含まれているが、ノンブランド検索には含まれていないことである。これは、オーガニック検索結果と検索広告の両方に当てはまる。
ブランド検索 ノンブランド検索 Ahrefs SEO ツール SEO ツール アップルウォッチ アップルの形をしたウォッチ 出典:Branded Search vs. Non-Branded Search:What’s the Difference?
日本語で「指名検索」というと、“商品名の単一キーワード” を連想しやすい。
しかし、SEO用語としての指名検索(=ブランド検索)では、
「会社名・サービス名・商品名などが含まれたキーワード(複合キーワードを含む)」と理解しておこう。
背景として、一般的にSEOで重視されるのは、潜在顧客層を幅広く獲得するためのキーワード戦略である。
「まだ自社を知らないユーザーが、悩みや課題を解決したいとき、どのような語句で検索するか?」
という思考を出発点として、セールスファネルの初期段階の集客目的で、SEOが活用されるケースが多い。
しかしながら、利益を効率的に確保するために、じつは穴場ともいえるのが、指名検索のSEOなのである。
その理由は、次のセクションで見ていくことにしよう。
指名検索のSEOに取り組むべき理由として、次の6つが挙げられる。
1つずつ、見ていこう。
1つめの理由は「『今すぐ客』の割合が多い」からである。
指名検索を行うユーザーは、すでに十分に高い購買意欲を持っていることが多い。これは、特定の製品やサービスに対する具体的な関心があるためだ。
以下にその特徴をリストアップしよう。
存在を明らかに認知している:「見たことがある」程度ではなく、会社名や商品名を検索窓に入力するほどの明確な認知がすでにある。
具体的な情報を求めている:一般的な情報ではなく、特定の製品やサービスに関する具体的な情報を求めている。
購入決定に近い:購入を検討している段階にあり、検索結果が購入決定に直接影響を与えることが多い。
ブランドロイヤルティ:すでに特定のブランドに対して好意を持っているユーザーも多い。リピーターになる可能性が高い。
即時性のある行動:「今すぐ客」は、検索結果を見た後、すぐに行動に移す傾向がある。これは、オンラインでの購入や商談希望などの行動を意味する。
指名検索のSEOに注力することは、直接的な売上増加につながる可能性がある。
2つめの理由は「『既存顧客』も多く含まれている」からである。
指名検索は、既存の顧客によるものも多い。
たとえば、今ご覧いただいているメディア「バズ部」の場合も、[バズ部]と検索して定期的に訪問してくださるユーザーが、毎月何千人も存在している。
このように、想像してみてほしい。
「既存顧客が検索したとき、1回の検索行動でたどり着けなかったり、同じ名称の別の商品・サービスへ迷い込んでしまったりしたら、どうだろうか?」
CX(顧客体験)の観点からみれば、非常に残念な出来事であることが、わかるだろう。
指名検索のSEOによって、既存顧客のアクセシビリティを高めておくことは、顧客対応の一環ともいえる。
3つめの理由は「競合他社が自社の指名検索を攻略している」からである。
SEOによって、競合他社の指名検索のシェアを狙うやり方は、珍しくない。
とくに、会社名・ブランド名・サービス名・商品名の「商標登録」をしていない会社は、注意しなければならない。
自社の権利を守る根拠がないからだ。他社が、自社の商品名でリスティング広告を出していたとしても、抗議する根拠に欠ける。(*1)
商品名でリスティング広告を打つほど露骨ではないにしても、巧みに競合の商品名で上位表示させ、シェアを奪おうと狙うサイトは数多くある。
自衛の意味で、指名検索のSEOを検討すべきである。
*1:補足として、商標登録していれば商標法で保護される。広告・その他における商標権の侵害は、認められない。たとえば、Googleの場合「商標(Google 広告ポリシー)」に、方針が明記されている。
4つめの理由は「小売業者やアフィリエイターが自社の指名検索を攻略している」からである。
小売業者もアフィリエイターもパートナーであり、自社の商品・サービスを積極的に売ってくれるのは、ありがたいことだ。だからこそ、ジレンマで悩んでいるという現場の声がある。
たとえば、ブランド公式のECサイト(直販)のほかに、掛け率50%で卸売を行っているとする。指名検索が、小売店のサイトに流れてしまうと、利益が半分になってしまう。
あるいは、潜在層にリーチを広げたいと思ってアフィリエイトを始めたとしよう。優秀なアフィリエイターと提携した結果、自社サイトよりもアフィリエイトサイトが上位表示され、獲得数は増えずに成果報酬だけ課金され続ける──、というケースもある。
上記のように利益が減る問題とはまた別に、ブランディングへの悪影響も、悩ましい問題である。
自社サイトでは、ブランドの世界観を緻密に表現してしても、小売店やアフィリエイターのサイトのクリエイティブまでコントロールするのは難しい。
5つめの理由は「第三者メディアに影響する」からである。
指名検索のSEOに取り組むことは、報道機関や各メディアに対して、自サイトを情報源としての第一選択肢にするために、重要である。
たとえば、有名メディアの記者が、あなたの会社の商品に興味を持ち、特集したいと思って指名検索したとしよう。
あなたの会社の商品名で検索したはずが、なぜか検索1位に表示されているのは競合他社のURLだ。まだ情報を深く知らない記者は、そのまま競合他社のサイトへ行ってしまう。
結果、有名メディアで取り上げられるのは、あなたの会社の商品ではなく、競合他社の商品かもしれない。
指名検索のSEOは、広報・PR分野の戦略としても、重要な意味を持つ。
6つめの理由は「SEO効果が早期に実感しやすい」からである。
基本的に、SEO効果の発出は、他施策と比較して遅延性がある(その代わり、安定的に長く続く)。
しかしながら、指名検索のSEOの場合、“やれば即、効果が出る” というケースも珍しくない。
なぜなら、そもそも他サイトが攻略しても、自社が専門性や独自性のアドバンテージを持っているキーワードだからだ。
必要最低限(他サイトと同程度)の手当てさえすれば、今月・今週の売上に直結することもある。
では、具体的に指名検索のSEOはどのように進めればよいのだろうか。5つのステップに分けて、解説していこう。
1つめのステップは「指名検索を狙うキーワードをリストアップする」だ。
まずは、自社ブランドや製品に関連する指名ワードをリストアップすることから始める。
たとえば、製品名・サービス名・企業名などが該当する。このリストは、SEO戦略の基盤となるため、まずは抜け漏れなく、すべて洗い出すことを重視しよう。
【指名検索キーワードのリストアップ】
これらのキーワードは、エクセルなどに書き出しておく。
2つめのステップは「指名ワードの優先順位づけをする」だ。
リストアップしたキーワードの中から、重要なワードを選び、優先順位を付けていく。
この際に考慮すべき点は、以下のとおりだ。
【優先順位の考慮事項】
各キーワードの潜在的な価値を評価し、ビジネス目標との整合性を確認しよう。
なお、キーワード選定の基本的な考え方は「キーワード選定|圧倒的集客を実現するコンテンツプランニングと絶対やるべき3つの事」にて解説しているので、目を通してほしい。
3つめのステップは「1つの指名ワードに対して1つのURLを決める」だ。
指名検索においては、このステップが最も悩ましいという企業が多い。半面、これを “意図的にマネジメントする” ことが、非常に有益である。
指名検索でヒットし得るURLのバリエーションとして、以下が挙げられる。
「その指名ワードを検索するユーザーが、何を知りたいのか?」について、よくよく熟考したうえで、どのURLに招待するか決める必要がある。
よくある失敗例は、購入検討の詳細情報を求めて商品名を検索したユーザーが、商品写真・スペック・カートボタンが表示されているだけの、ほとんど中身のないページにたどり着いてしまうことだ。
各指名ワードに対して、専用のランディングページやコンテンツを作成しよう。このページは、そのワードに関連する情報を集約し、ユーザーに価値を提供するものであるべきだ。
なお、特定のURLを優先したい意図を持っていても、意図しないURLが検索上位に表示されてしまうケースがある。
このようなケースの解決方法は、PLP(優先ランディングページ)戦略を採用することが効果的だ。
PLPとは、特定の検索キーワードに対して、自サイト内のページの中で、優先的に上位表示させたいページを指す。
「PLP(優先ランディングページ)とは?SEO上の意味と実践法・注意点」にて解説しているので、参考にしてほしい。
4つめのステップは「通常のSEO対策と同様にコンテンツを作る」だ。
コンテンツの作り方自体は、指名検索でも、ほかのコンテンツでも、原則は変わらない。以下はSEOの基本要素を表した図である。
指名検索であっても、キーワードリサーチの結果をもとに、そのキーワードで検索するユーザーが、十分に満足する良質なコンテンツを制作することが、核となる。
SEOの基本については「【2023年最新】SEO対策とは?初心者が自分でできる基本対策をわかりやすく解説」にて解説しているので、確認しておこう。
5つめのステップは「指名ワードをアンカーテキストにした内部リンクを強化する」だ。
とくに重要な指名ワードに関しては、サイト内で積極的に内部リンクを構築するようにしよう。サイト内で、指名ワードをアンカーテキストとして使用し、関連するページとのつながりを強化する。
アンカーテキストは、ユーザーが自然にクリックしたくなるような文脈で組み込むとよい。
詳しくは、「内部リンクとは?SEOでの重要性と効果が出る張り方のコツ」を確認のうえ、取り組みを進めてほしい。
最後に、指名検索のSEOを成功させるコツを3つ、お伝えする。
1つめは「指名検索するユーザーが知りたいことを伝える」である。
たとえば、あなたの会社が提供している“サービス名”で検索する人は、本当は何が知りたいのだろうか。おそらく、“良いことも悪いことも含めた、真実” を知りたいのではないだろうか。
指名検索以外のキーワードなら、客観的な視点で、プラス面もマイナス面も、バランスの取れたコンテンツを作れる人は多い。しかし、“自分のこと” となると、難しい。
マイナス面を隠し、プラス面だけを並べたようなコンテンツを作りがちである。
しかしながら、あえてマイナス面や注意点にも触れることは、あなたが誠実であることをユーザーに伝える、すばらしい方法である。
このような親切で正直な伝達は、ユーザーの心に響き、いつかまた機会がめぐってきたときに、顧客化してくれるだろう。
2つめは「どこよりも詳しく新しい情報を常に掲載する」である。
「公式サイトにいけば、大抵の情報は手に入る」このような認知を顧客に持ってもらうことは、非常に有効だ。
困ったことがあるたびに、知りたいことがあるたびに、指名検索をして、何度でも公式サイトへ戻ってきてくれるだろう。
しかし、ひとたび、
「公式サイトの情報は、スカスカだ」という経験をしてしまった顧客は、公式サイトを信頼しなくなり、他サイトで情報収集することになる。
やがて競合他社のサイトにリーチして、そのまま奪われてしまうかもしれない。
当たり前のようでいて、意外とできていない会社が大半だ。だからこそ、取り組む価値がある。
3つめは「サイト内およびGoogleのレビューを充実させる」である。
指名検索するユーザーの多くは、「ほかのユーザーの評価」を知りたいと思っている。
このポイントを満たすために、サイト内およびGoogleの口コミを充実させることが、役立つ。
サイト内のレビューは構造化すること、Googleの検索結果に、レートとして表示される。
具体的なやり方は、「レビュー(Review)の構造化データ(Google 検索セントラル)」にて、解説されている。
Googleの口コミは、Googleマップに連動しており、検索結果ページの右側に表示される(パソコン画面の場合)。
Googleの口コミは、「Google ビジネス プロフィール」からマネジメント可能だ。
参考:Google ユーザーにクチコミを投稿してもらう(Google ビジネスプロフィール ヘルプ)
「MEOとは?自分で行うMEO対策でGoogleマップの集客UPする方法」にて、登録方法を詳説しているので、あわせて参考にしてほしい。
本記事では「指名検索のSEO」をテーマに解説した。要点をまとめておこう。
指名検索のSEOに取り組むべき理由は、以下のとおりだ。
指名検索特有のSEO対策 実践 5ステップとして、以下を解説した。
指名検索のSEOを成功させるコツは、以下のとおりだ。
指名検索のSEOは、難易度も高くなく、利益につながりやすい特性がある。今までまったくケアしてこなかった方も、この機会に取り組みを始めてほしい。