記事を増やしても伸びないときHubSpotがやったこと。流入8割減からAI経由リード1,850%増へ|海外レポート【バズ部社長AI活用コラム】

記事を増やしているのに、売上につながらない。
そんな感覚を持っているマーケ責任者は多いはずです。

こんにちは、バズ部の石井です。

世界的にコンテンツマーケティングの手本とされてきたHubSpot。知っている方も多いかと思います。一時期「あのHubspotでさえも流入が8割減っている」と騒がれていましたが、それが今、AI対策に舵を切ったのちAI経由の有効リードは1年で1,850%増えたと同社は発表しています。

一体何が起きたのか、英語のデータを色々見てきたのでできるだけわかりやすく解説します。数字はすべてHubSpot自身の発表と外部ツールの推計にもとづくものです。


HubSpotに何が起きたのか?

HubSpotは10年以上にわたりB2Bブログの世界標準でした。数十万のキーワードで上位を取り、毎月数百万の訪問を集めていた会社です。

その流れが変わったのは2024年末です。Googleのアルゴリズム変更のあと、外部ツールSemrushの推計では、オーガニック流入は2024年11月の約1,350万から12月には約860万まで急減しました。その後さらに減少し、最終的には「HubSpotのブログ流入が約8割減った」とする外部推計が広く拡散しました。HubSpot自身も後に、この「8割減」という数字について公式に説明しています。減少を示すグラフはLinkedInやXで拡散し、「あのHubSpotでさえ」という文脈で語られました。

HubSpotのオーガニック流入推移HubSpotのオーガニック流入推移(Semrush推計)。2024年末から急落している
Semrushのデータ。Search Engine Land「HubSpot’s SEO collapse: What went wrong and why?」より

ここまでは日本でも報じられた話です。ただ、その後にHubSpotの中で何が起きたかはあまり知られていません。


減った流入の一部は「わざと」だった?

HubSpotでグロース戦略を率いるAja Frostが2026年9月に公開した振り返りによると、流入減少の一部は意図的なものでした。

同社は「セールスの設計」や「コンテンツマーケティングのテンプレート」のような事業に直結するキーワードだけでなく、「不在時の自動返信メッセージの例文」や「オフィスでのエイプリルフールのいたずら」のような事業に関連性の薄いキーワードでも上位を取っていました。こうした関連性の薄いテーマは流入をたくさん生みますが顧客にはなりません。そこで数年前からこれらの関連性の薄いテーマに関しては、更新を止めていたのです。

さらに、AI検索にいずれ取って代わられる教育型の記事から、YouTubeやポッドキャスト、ニュースレターといった独自性の高いコンテンツへ人員を移していました。そうしたコンテンツは、コンバージョンまでは遅い。しかし真似されにくく、ブランドへの信頼を深く作る。そう判断していたわけです。

つまりHubSpotは、流入が落ちる前から「流入はあるが事業への関連性が低い記事」の更新優先度を下げる判断を始めていました。PV減少のグラフだけを見ると失敗に見えますが、内側では別の絵を描いていたことになります。


AI流入の実験チームをつくった

とはいえ流入減に楽観的だったわけではありません。HubSpotは新たな施策として、AIに詳しいSEO担当2名を通常業務から外して実験専門チームを作り、毎日打合せをして毎週ひとつ実験を投入する体制を敷きました。

最初の実験は失敗でした。当時流行していたllms.txt、つまりAIに向けてサイト構造を伝えるテキストファイルです。HubSpotはファイルの中に「合言葉」を仕込み、AIがそれを知っているかとサーバーのログを両方で確かめました。結果はゼロ。AIは合言葉を知らず、ログにも訪問はなかった。検索エンジンのクローラーに直接送っても同じでした。

ここでHubSpotが得た教訓は「世の中で言われていることを盲信せず、自分でテストせよ」です。AI対策には情報の雑音が多く、他社が効いたと言う施策でも自社データで確かめてからでなければ広げてはいけない。実際、後にAhrefsが公開した分析では、調査対象となったllms.txtファイルの97%にはAIボットから一度もリクエストがありませんでした。

97% of llms.txt Files Never Get Read13.7万ドメインを調査したところ、llms.txtの97%は1か月間で1件もアクセスがなかった
Ahrefs「We Analyzed 137K Sites: 97% of llms.txt Files Never Get Read」より


どんな施策が効果を出したのか?

大きな成果が出た施策のひとつが、業種と用途を掛け合わせた「業種別・用途別ページ」でした。(私たちはこれを特化ページと呼んでいます)

AIの回答は「文脈」への依存度が高い。ならば「製造業向けのCRM」「士業向けのCMS」のように、誰のどんな状況に向けたページかを明確にすれば引用されやすいはずだ。この仮説のもと、自社のお客様事例を土台にして141本のページを作りました。

最初はなかなか上手くいきませんでしたが、担当者は修正のログを残しながら品質を上げていきました。公開直後の引用率は16%で足踏みします。しかし数週間後、AIのクロールが増え、そのあとに引用が増え、最後にAI可視性が上がりました。最終的に141本のうち92%が引用され、AI検索での可視性は49%向上したと同社は報告しています。

ここで重要なのは、今までとは明らかに「違う方向への施策」を実施したということです。

どんな顧客に何を伝えるべきなのか


AIが情報を間違って認識するわけ

もうひとつ、地味ですが本質的な発見がありました。

担当者が気づいたのは、AIがHubSpotの価格を間違えて答えていることでした。営業の商談記録を調べると、かなりの頻度でそれは起きていました。原因はすぐに分かりました。HubSpot側は、価格ページがJavaScriptで描画されていることが原因だと判断しました。GooglebotはJavaScriptをクロールできる一方、同社が確認したAIボットは価格情報を十分に取得できず、古い第三者サイトの情報を参照していたというのです。

HubSpotは価格ページを作り直す代わりに、各製品の価格をより丁寧に説明するブログ記事を連投しました。あまり面白みのない記事です。しかし約2か月で6製品中5製品の価格回答が正確になりました。唯一改善しなかった製品は、第三者サイトに残る古い価格を一つずつ直して回ることで解消しています。

この経験からHubSpotは「人にもAIにも向けたコンテンツ、人だけに向けたコンテンツ、AIだけに向けたコンテンツがある」という指針にたどり着きました。


この話は日本の会社にも当てはまるのか?

HubSpotがやったことを一言でいえば、「誰のために作るか」を改めて明確に決めたということです。
流入は取れるが事業との関連性が低い記事の優先度を下げた。(全部ではないが、一部)
誰向けかが曖昧なページではなく、業種と状況を特定したページを作った。
そしてAIが自社を間違って語っている箇所を先に直した。

AI対策に舵を切ったとも言えるし、流入よりもCV獲得に重点をシフトしたとも言える。


なぜ141本も作って「薄いページ」にならなかったのか?

ここでひとつ疑問が残ります。業種と用途の組み合わせで141本も作れば、普通は中身のないページが量産されます。「製造業向けCRMとは」という記事を業種名だけ差し替えて並べたサイトは、日本にもたくさんあります。ではなぜHubSpotのページは引用されたのか。

実際のページを開くと答えが見えます。例えば製造業向けCRMのページは、「世界各地の拠点で業務プロセスがばらばら」「繁忙期に問い合わせがサポートを圧迫する」といった製造業に特有の課題を左列に置き、それに対する解決策と実際の結果を表で並べています。その下には同じ業種のお客様が1社、実名と数字付きで登場します。つまりページの骨格はキーワード調査からではなく、「この業種のお客様は何に困っていて、自社はそれをどう解決したか」という、すでに社内にあった知識からできています。

製造業が抱えるよくある課題HubSpot「Full CRM for Manufacturing」の表を日本語訳したもの

これは、営業が商談で毎回話していることと同じです。「御社のような会社はだいたいここでつまずいていて、同じ業界の○○社はこうやって解決しました」。商談では自然に出てくるこの話が、Webサイトにはほとんど書かれていない。HubSpotがやったのは、その商談の中身を業種ごとにページへ移し替える作業だったといえます。ページが薄くならなかったのは文章が上手だったからではなく、書く前に「誰が何に困っていてなぜ自社が選ばれたか」が整理されていたからです。

検索されそうなテーマから書き始めるのではなく、自社が選ばれる顧客グループを先に分け、そのグループごとに営業が語っている価値をページにする。需要から(マーケットから)考えるのではなく、強みから(プロダクトから)考える。これはどちらも重要だし、どちらが先ということはない。ただ、この取り組みを少しわかりやすく説明すると、プロダクトの周辺から、強みから設計が始まっている。


さいごに

私たちがこの数年でやっていることも、実は今回ご紹介したHubSpotの施策とよく似ています。お客様ごとにAIが自社をどう語っているかを確かめ、顧客グループを絞り、そのグループに向けた強みを言語化し詳細ページを作り、AIでの表示順位を改善する。流入の総量ではなく、選ばれて問い合わせが来るかどうかを成果の基準にしています。個別のお客様の結果は事例ページで、施策の初期データであることと計測できた問い合わせだけを数えていることを添えてご紹介しています。

HubSpotの話の教訓は、流入が落ちたときに「流入を戻す」のではなく「流入はあえて戻さない」と決められたことです。多くの会社は減った数字を見ると、不安が先立ち冷静にジャッジできなくなる。正解がまだ無いからです。

しかし必ず時代の兆候はあります。その兆候を捉えて、新しい方針を打ち出す必要がある。でも、あまり先をいきすぎてもダメですね。先をいきすぎても成果がでない。じゃ、どうすればいいか。そんな判断を一緒にする相手が必要だと感じたら、ぜひ弊社へご相談ください。一緒に御社のやるべき施策を考えましょう。


出典

カテゴリー AI検索(LLMO)

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