なぜ「もっとコンテンツを作る」ほど成果から遠ざかるのか|海外レポート【バズ部社長AI活用コラム】

ある講演で聞いたこの言葉が、ずっと頭に残っています。

「あなたの史上最高のコンテンツは、まだ作っていないコンテンツではありません。すでにあるのに活かしきれていない一つのコンテンツです」。

こんにちは、バズ部の石井です。今回はSocial Media Marketing World 2026のレポート第5弾です。

登壇したのはBrian Piper(ブライアン・パイパー)氏。AI統合とコンテンツマーケティングのコンサルタントで、『Epic Content Marketing for Higher Education』の著者でもあります。講演のタイトルは「AI Content Optimization」——データを使ってコンテンツの成果を最大化する、という内容でした。

「AIで量産できるのだから、もっと作らなければ」。誰もがそう考えるいまの時代に、彼の答えは真逆でした。

結論、コンテンツの成果を分けるのは「作る量」ではありません。すでにある資産のうち、何を残し、何を捨てるかを決める判断力です。そして「もっと作る」は、その判断から逃げるための、いちばん楽な方法なのです。

ここからは講演の内容を一部お見せしながら、私自身が考えていることも改めて言葉にしておきたいと思います。

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なぜ「もっと作る」ほど、成果が遠のくのか

Brian氏は講演の冒頭、一人のスカイダイバーの映像を見せました。速度計や高度計のデータは細かく追っていたのに、パラシュートの自動開放装置が反応する速度に近づいていることだけは見ていなかった。結果、彼は2つのパラシュートを絡ませ、木に突っ込みます。一部のデータしか見ていないと、いちばん大事な見落としが起きる。そういう掴みでした。

そのうえで示されたのが、少し怖くなる数字です。マーケターの9割がすでにコンテンツ制作にAIを使い、ネット上のコンテンツの半分はAIが生成したもの。そして多くのサイトで、オーガニックの流入は減り始めています。

The Content Treadmil

(▶︎ 講演資料:The Content Treadmill/「AI活用90%」「AI生成コンテンツの急増」「流入減少」を示したスライド)

この状況で、私たちは反射的にこう考えます。「競合がこれだけ量を出すなら、うちはもっと出さなければ」。Brian氏はこれをだと言い切りました。もっと出しても、読者も影響力も成果も増えない。「More(多さ)」は「Better(良さ)」ではないのです。

では、なぜ私たちはそれでも「もっと作る」に走ってしまうのか。答えははっきりしています。作るのは、捨てるより楽だからです。記事を1本増やすのは、手を動かせば終わります。一方で「どの記事が効いていて、どれが無駄で、何に絞るべきか」を見極めて決めるのは、しんどく、そして怖い。だから私たちは判断を先送りにして「量」に逃げる。手は動くのでやっている感はある。けれど成果に直結する判断はいつまでも下されないままです。作れば作るほど、いちばん大事な判断から遠ざかっていく。ここがこの講演の核心でした。


では、何を「捨てる」のか

判断とは、つまり「捨てる」ことです。Brian氏が挙げたコンテンツ最適化の4つの動き——作り替える、別の層へ出し直す、あらゆるチャネルへ届ける、そして畳む——のうち、彼がいちばん時間を割いたのが最後の「Retire 畳む」でした。

Fou R's of content optimization講演資料より

ある企業のサイトには1万ページがあり、監査するとそのうち1,500ページは1年間まったく閲覧もされず、検索にも表示されていなかった。その古い記事を更新対象から外して公開を止める(削除・非公開化・統合する)ことで管理の手間が減り、AIが古い情報を拾って会社の像をぼやけさせるリスクも消えた。

(この「畳む」という発想は、日本ではまだ抵抗が強いですよね。作ったものを消すことは、誰にとっても勇気がいります。でもこれからは避けて通れないと考えています。)

バズ部の言葉でいえば、情報収集フェーズの記事は今後サイトに流入しにくくなる前提で、購買に近いコンテンツへ力を移すということです。新しく作る前に、いま持っている資産を棚卸しし、勝てない領域は手放す。地味ですが、これが最初の一歩であり、多くの会社が飛ばしてしまう一歩でもあります。


その「捨てる・絞る」判断を、AIに丸投げしていないか

「捨てる」「絞る」と言えば、次に出てくるのは「では、基準は?」という問いです。ここでBrian氏が示したのが、データの使い方でした。長年「データを見なさい」と言ってきた彼は、今は言い方を変えたそうです。「AIにデータを見させなさい」。検索データを渡して「すでに順位のある領域から、優先すべき候補を出して」と頼む。何時間もダッシュボードをにらむ作業は、AIに肩代わりさせるわけです。

ただし、肝心なのはここです。AIに任せるのは「材料を並べる」ところまで。何を残し、何を捨て、誰に絞るか——その判断まで手放してはいけません。AIは材料を揃えてくれますが、勝ち筋を決めるのは人間の仕事です。

そして絞る判断の解像度を決めるのが、「誰に、何で選ばれるか」の言語化です。Brian氏はペルソナをAIで「対話できる相手」に変え、商品ページを見せて反応を試していました。これはバズ部でいう、ターゲットの状況を言語化する作業そのものです。とくに商談では強いのにWebだと「なんとなく良さそう」で止まってしまう会社ほど、ここが抜け落ちています。営業では自然に伝わっている「なぜうちなのか」を、ページの言葉に翻訳できているか。この解像度が甘いままでは、AIに何をさせても、どれだけ量を作っても、成果には届きません。


結局これは、覚悟の問題

Brian氏は講演をこう締めくくりました。「AIの導入は、テクノロジープロジェクトではない。チェンジマネジメント(変革)のプロジェクトだ」。

私もまったく同じ考えです。ここまで見てきたことは、突き詰めると一つに集約されます。効かない記事を畳む、勝てない領域を手放す、量ではなく一点に絞る——どれも「決めて、捨てる」という同じ行為です。そしてこれは、道具の問題ではなく、覚悟の問題です。捨てる決断は組織の中でいつも痛みを伴う。だから多くの会社が、痛みのない「量産」へ逃げ込む。裏を返せば、逃げずに決めきれる会社にこそ、勝ち筋が残っています。

「記事を増やしても伸びない」「次の打ち手が分からない」。もしそう感じているなら、足りないのは新しいテクニックでも、新しいツールでもありません。誰に・何で・なぜ選ばれるかを決め、勝てない領域は思い切って手放す。その判断です。バズ部が施策の実行より前に、顧客グループの絞り込みと強みの言語化から入るのは、ここが成果のすべての起点だからです。

本稿で触れた「増やすより、絞って残す」という判断を、90日で実装するプログラムも提供しています。よろしければAI対策90日プログラムもご覧ください。

今回参照した情報源

カテゴリー AI検索(LLMO)

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