SNSのつかみ(フック)を書かせたら右に出る者はいない、と評されるマーケターがいます。それがShannon McKinstrie(シャノン・マッキンストリー)氏です。バージニア工科大学でマーケティングを学び、卒業後はアトランタのCNN本社へ。その後マーケティングの道に進み、2015年に自身のソーシャルメディアエージェンシーを立ち上げました。いまは中小ビジネスのオーナー向けに、SNSで成果を出す戦略を教えています。フックの巧みさから「hook fairy(フックの妖精)」と呼ばれる人物です。
こんにちは、バズ部の石井です。今回はSocial Media Marketing World 2026のレポート第4弾です。
AIが何でも書ける時代になり、「役に立つ情報」の価値は急速に下がっています。だからこそ、人の心を動かす最初の一文が、これまで以上に効きます。McKinstrie氏の講演は、その一文を再現可能な型に落とし込んだものでした。
結論、AIが何でも書ける時代だからこそ、人を動かすフックの「型」が武器になります。McKinstrie氏はそれを「RISE」と名づけていました。今回はこの型を、具体例とともに紹介します。
ここからは講演の内容を一部お見せしながら、私自身が考えていることも改めて言葉にしておきたいと思います。
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なぜ今、最初の一文が勝敗を分けるのか
McKinstrie氏は、いまを「つながりの時代(connection era)」と呼びます。その背景にあるのが、AIの存在です。
彼女ははっきりこう言います。役に立つ情報は、いまやAIが一瞬で返してくれる。だから「役立つ」だけのコンテンツは価値を失いつつある。AIに作れないものがある。それは、書き手が実際に生きて感じた瞬間と、その人がいったいどんな人かという手ざわり感だ、と。磨き上げられた完璧な文章より、少し粗くて人間味のある言葉のほうが、いま人の心を掴む。
つまり読み手が「これは自分の話だ!」と感じる最初の一文がなければ、その先は読まれません。こうした「つながり」を求める心理は、シェアの動機を示すデータにも表れています。
68% of people say they share on social media to communicate & express who they are and what they care about
68%の人が『自分が何者で、何を大切にしているか』を伝え、表現するためにSNSでシェアすると答えている(講演より)
フックは飾りではなく、読まれるか無視されるかの分岐点です。 そしてMcKinstrie氏いわく、そこには誰でも使える型がある。それがRISEです。
人を動かすフックの型「RISE」
RISEは、Recognizable(見覚え)・Identity(誰のため)・Specific(具体)・Effect(効果)の頭文字です。4つすべてを詰め込む必要はありません。一つ足すだけで反応が変わる、とMcKinstrie氏は言います。順に見ていきます。

講演資料より
R|Recognizable:見覚えがあるか
見た瞬間に「知ってる」と思わせる、馴染みのあるブランド・場所・場面を入れる。人は知らないものの前では立ち止まりません。逆に、見覚えのある景色には自然と目が留まります。
講演では、ある地方の観光地へのドライブを映した投稿や、誰もが知る激安スーパーのカートを写して「1週間分の夕食を25ドル以内で」と見せた投稿が挙げられていました。特別なことは何も言っていません。ただ、相手の生活圏にある固有名詞や風景を差し込んだだけです。
日本に置き換えるなら、「近所のあのスーパー」「例の乗り換え駅」のように、読み手が実際に生活の中で触れているものを一つ入れる。それだけで、ぐっと自分ごとになります。
I|Identity:誰のためかが明確か
これが、いま最も効く要素だとMcKinstrie氏は強調していました。自分がどんな人間かを名乗るか、あるいは読み手のアイデンティティを名指しする。「みんなへ」ではなく「あなたへ」と言い切ることです。
講演では、「ADHDのあなたへ」と冒頭で名指しした投稿や、「本当はズボラなのに、きちんとした人を演じている人へ」といった投稿が紹介されました。読み手は「それ、私のことだ」と感じた瞬間に足を止めます。
彼女が挙げた印象的な事例があります。読みの指導をする専門家の女性が、伸び悩んでいた。そこで「先生が教えてくれない、小学1年生の読みの話」というように、「誰に向けているか」を一言足しただけで、フォロワーは1万2千人から8万5千人へ、収入は8倍になったといいます。

講演資料より
やったことは、たった一言の追加です。ですが本質は、「誰に向けた発信なのか」を決め切ったことにあります。ここは後半でもう一度触れます。
S|Specific:具体的か
曖昧な言葉を、具体的なディテールに置き換える。人は抽象論を信じませんが、生々しい細部は信じます。
講演で紹介されたのは、「節約しようとした矢先に、コンサート、誕生日が5件、Airbnbのビーチ旅行が一気に重なる」といった投稿や、「大手法律事務所の弁護士が、月収の使い道を明かす」といった投稿でした。「忙しい」「稼いでいる」ではなく、具体的な場面と数字で語る。だから信じられるのです。
ちなみにMcKinstrie氏は、「具体例が浮かばないなら、AIに『うちの読者が共感する場面は?』と聞けばいい」とも言っていました。AIは、フックのネタ出しには頼れる相棒になります。AIを避けるのではなく、人間にしか決められない部分と、AIに任せられる部分を分けるのが、これからのやり方です。
E|Effect:見たあと何が変わるか
最後は、読み手のペイオフです。これを読めば・見れば何が手に入るのか。その約束を最初に示して、続きを見る理由を作る。
講演では、「ストレス対策のためのモクテル6種」と冒頭で得られるものを提示した投稿や、歯科医が「私に二度と会わずに済む方法を教えます」と切り出した投稿が挙げられていました。後者は「虫歯になりません」と言うより、はるかに続きが気になります。得られる結果を、少しユーモアを添えて言い切る。それだけで離脱が止まります。
RISEの正体は、「誰に何を」の設計である
ここで一度、立ち止まって考えたいことがあります。RISEは一見、小手先のフック術のように見えます。ですが4つを貫いているのは、「誰に向けて、何を約束するのか」という一点です。
見覚え(R)は相手の生活を知らなければ選べません。アイデンティティ(I)は相手が何者かを決めなければ名指しできません。具体(S)も効果(E)も、「この人に、これを届ける」と定まっていて初めて書けるものです。つまりRISEとは、フックの技術である前に、顧客と訴求軸の設計図なのです。
これは、私たちがバズ部でずっとお伝えしてきたことです。RISEは「書き方の型」として即使えます。
「記事を増やしても以前ほど伸びない」「次に何をやるべきか分からない」。もしそう感じているなら、足りないのは新しいテクニックではないのかもしれません。まず「誰に向けているか」に立ち返り、そこをとことん突き詰める。RISEは、その立ち返りを助ける実践的なチェックリストになります。
さいごに
RISEを学んで私が最も納得したのは、これがAIとの向き合い方そのものだという点でした。
AIはフックのネタ出しから下書きまで手伝ってくれます。ですがAIには、「それが本当に刺さるのか」を判断できません。今のところ、AIは候補出しやドラフト作成に使うのがベストです。最後のクオリティを高める部分は、事業の経験と顧客理解の深い人間にしかできない仕事です。McKinstrie氏の言う「AIに作れないもの」とは、突き詰めればこの一点に行き着きます。
AIには作れない「部分」を作り込む。それが現在、AIを使いながら最大の成果を得る方法です。
バズ部で取り組んでいるAI対策がここ最近、非常に大きな成果をあげています。よろしければAI対策90日プログラムもご覧ください。
今回参照した情報源
- Social Media Marketing World 2026(主催:Social Media Examiner)
- シャノン・マッキンストリー氏 公式サイト




