AIが何でも作れる時代に、唯一マネできないコンテンツ|海外レポート【バズ部社長AI活用コラム】

アメリカに「事例コンテンツ」に特化した会社をつくった人物がいます。それがジョエル・クレツキ氏。彼はコピーライターとして幅広く活動しながら、Case Study Buddyという会社を立ち上げ、350社・2,000本以上の事例を手がけました。

こんにちは、バズ部の石井です。今回はSocial Media Marketing World 2026のレポート第3弾です。

私は昔から事例を重要視しています。その理由は、事例がとくに投資対効果が高いコンテンツだからです。どれだけ深堀りしているのか興味を持って講演を見ましたが、納得する点がいくつかあったのでぜひ紹介させてください。

結論、AI時代のマーケティングでいちばん効くのは「事例コンテンツ」だと確信しています。

ここからは講演の内容を一部お見せしながら、私自身が考えていることも改めて言葉にしておきたいと思います。

▼過去の関連記事
・コンバージョン最適化のタリア・ウルフ氏(やればやるほど成果が遠ざかる「回し車」の罠)・ゼロクリックのランド
・フィッシュキン氏(クリックが消える時代に、何を指標にすべきか


AIが量産する時代に、唯一「捏造できない」コンテンツ

AIが普及して文章は一瞬で作成できるようになった。そのなかで唯一、ほぼ捏造できないコンテンツがある。それが顧客の物語、つまり事例だとクレツキ氏は言います。

機能や価格やスペックの比較は、もうAIに聞けば一瞬で表になります。この領域で差をつけるのは難しい。AIが普及するほど均質化していくからです。

一方で「あの会社に頼んで自分の何が変わったか」という一人ひとりの体験は、AIには作れません。

講演で彼が引用していた言葉があります。「マーケティングの未来は、情報のやり取りではなく信頼の移転だ」。私たちの仕事はもう「知ってもらう」ことではなく「信じてもらう」ことに変わった。そしてそれを最も担えるのが事例だ、と彼は言います。

たしかにこれはAI時代の本質に直結する話だと思います。AIが「この分野でおすすめの会社はどの会社なのか」を判断するとき、事例があるかないかは非常に重要な根拠になります。事例を持っている会社が、選ばれるようになる。

実際にデータも裏づけています。コンテンツマーケティングの年次調査(Content Marketing Institute)では、最も成果を生んだコンテンツの種類として、事例・カスタマーストーリーが動画と並んで最上位に挙がっています。地味に見えて、実は最も効くと現場が答えているわけです。

事例コンテンツの重要性


なぜ大半の会社は、事例を活かせないのか

これほど効く事例ですが、多くの会社では本腰を入れて作成していません。例えば、事例ページはあるけど、内容が薄い。あるいはそもそも事例が数件しかない。理由はシンプルです。多くの会社が事例を「片手間の場当たり」で扱い、仕組みにしていないからです。

講演の冒頭、クレツキ氏は会場の参加者を立たせてこう問いかけました。「今年1本も事例を出していない人は座ってください」「3本未満の人は」「依頼するとYesよりNoが多い人は」「承認の途中で没になった経験がある人は」。次々と座っていきます。業種も会社の規模も関係ありません。同じ痛みをほぼ全員が抱えていたのです。

上位1%の会社とそれ以外を分けるのはたった一つ。事例を「あらかじめ用意した仕組みの成果物」として扱うか「誰かが喜んでくれた時の場当たり的な対応」で終わらせるか、です。仕組みがなければ、いざ良い話が出てきても動けない。だから事例は承認の途中で没になり、溜まらず、ページは置物のままになります。彼の言葉でいちばん刺さったのはこれでした。“A process in your head is not a process.”頭の中にあるプロセスは、プロセスではない

これは日本の会社にもそのまま当てはまります。特に、商談では強いのにWebサイトだと「なんとなく良さそう」で止まってしまう会社です。営業の現場では「なぜうちが選ばれるか」をきちんと語れているのに、それを事例という形でWeb上に証拠として残せていない。いちばん強い証拠である「事例」、多くの売上を上げてくれる「事例」を、仕組みがないために取りこぼしているのです。


何を証明するかを、先に決める

事例は「とりあえず満足してくれたお客様の声を集めること」ではありません。ここを勘違いしている人が多い。「誰に・何を信じてもらうか」を先に決めて、そこから逆算して作るものです。

クレツキ氏は事例を作る前に3つを決めろと言います。動かしたいKPIは何か。誰に届けるのか。その人は何を聞けば動くのか。

おもしろいのは「事例=課題・解決・結果の型しかない」という思い込みを彼がはっきり否定したことです。語り方は10種類あると言います。この型はクレツキ氏が公開資料でも明かしているものです。知っておくだけで事例の見せ方が変わるので、10種類すべて紹介します。

What stories should you tell?

  1. 乗り換え:競合から自社に乗り換えた顧客の話
  2. 拡張:上位プランや追加サービスに広げて成果が出た話
  3. 新しい使い方:想定外の使われ方を見せる話
  4. 意思決定チーム:複数の決裁者それぞれの不安に答える話
  5. 手順公開:マネできる進め方をレシピのように見せる話
  6. 懐疑からの納得:厳しく比較検討されたうえで選ばれた話
  7. 導入の道のり:立ち上げの大変さと乗り越え方を見せる話
  8. 立て直し:悪化していた数字を反転させた話
  9. 一点突破:特定の機能や一部分だけにしぼった話
  10. 人物像:「うちを選ぶのはこういう人だ」を見せる話

同じ顧客の話でも、誰に何を信じてもらいたいかで選ぶ型は変わります。比較検討で勝ち切れないなら「懐疑からの納得」。競合から客を奪いたいなら「乗り換え」。新しい市場を開きたいなら「新しい使い方」。

これは前回までレポートの「絞る」「言語化する」の延長です。絞ったたった一人に向けて、なぜ選ばれるのかを自社の言葉ではなく「顧客の口」で証明する。その証明を、どの型で見せるかを先に決めるのです。


数字ではなく「物語」を証明にする

事例というと、つい「成果の数字」を集めようとします。クレツキ氏はそこに釘を刺しました。数字は読んでもらうきっかけにはなる。でも人を動かすのはその数字の先にある変化のほうだ、と。

彼が挙げた例が忘れられません。給与計算を自動化するソフトの事例で、いちばん効いた一言は受付担当者のこれでした。「以前は金曜のたびに社内を歩き回って小切手を手渡ししていました。それが今は自動で終わるんです」。「効率が90%改善しました」と言うよりずっと響く。読んだ人が「その大変さ、分かる」と自分を重ねられるからです。

そして彼が「ここだけはAIに任せない」と言い切った工程があります。顧客へのインタビューです。

事例づくりの多くはAIが助けてくれる。記録も下書きも切り出しも。けれど相手の本音を引き出す対話だけは人にしかできない、と彼は言います。「それ、もう少し聞かせてください」「何がそんなに大変だったんですか」。こうして相手を回答者から語り手に変える作業は、リンクを送って録画してもらうだけでは生まれません。

AIが何でも作れる時代に、唯一AIに外注できないのが、対話で本音を引き出す対話なのです。


模倣されない資産の正体

事例で証明する。マーケティングの成果が停滞しているなら、そこに状況を打開するヒントがあるかもしれません。

「記事を増やしても伸びない」「次の打ち手が分からない」。もしそう感じているなら、足りないのは新しいテクニックではありません。誰に・何で・なぜ選ばれるのかを顧客自身の物語で証明し、それを生み続ける仕組みを持つことです。機能の比較も、きれいな数字も、AIが一瞬で並べてくれる時代になりました。だからこそ唯一マネできないのは、あなたの顧客一人ひとりの実体験なのです。

本稿で触れた「絞る・言語化する・事例で証明する」を、90日で実装するプログラムも提供しています。よろしければAI対策90日プログラムもご覧ください。

今回参照した情報源

カテゴリー AI検索(LLMO)

記事をシェアする

  • B!

AI対策90日プログラム
先行導入企業で売上が前年比8倍ペース・問い合わせ数5.8倍

(AI対策/LLMO 全18施策の一覧)

 

「AI検索への対応は必要だと思っているが、何からすべきか決め切れていない。」

バズ部では、AI検索への対応をスピーディに完了させたい企業向けに、AI対策90日プログラムを提供しています。

具体的には、次の施策を並行して進めます。

  • ・勝つべきニッチ領域の特定
  • ・独自の強みの言語化とサイト反映
  • ・事例コンテンツの量産体制構築
  • ・AIクローラー対応の技術施策

詳細は以下をご覧ください。