ゼロクリック時代に何を指標にすべきか|海外レポート【バズ部社長AI活用コラム】

Social Media Marketing World 2026のレポート、第2弾です。前回はコンバージョン最適化の専門家タリア・ウルフ氏の講演を取り上げました。「なぜ顧客は買うのか」を飛ばして、ボタンの色やフォームばかりいじってしまう、という話です(やればやるほど成果が遠ざかる「コンバージョン最適化」の罠)。

今回はその続きとして、同じ落とし穴を別の角度から突いた講演を紹介します。ランド・フィッシュキン氏の講演です。

フィッシュキン氏は、オーディエンス分析ツールSparkToroの創業者。その前はSEOツールのMozを立ち上げ、20年近くこの業界の最前線に立ってきた人物です。講演のタイトルは「Zero Click Marketing and the Future of Discovery」——ゼロクリックの時代に、人はどう物事を見つけ、選ぶのか。

彼は長年、「借り物の土地に家を建てるな」と言い続けてきました。SNSの上にどれだけ資産を積んでも、ルールが変われば消える。だから自社サイトに人を集めろ、と。ところが近年は、その彼自身が「あの主張は、もう間違っていた」と公言するようになっています。

ここからは一部講演の内容をお見せしながら、彼がふだん公開している研究や主張を手がかりに、私自身が考えていることも改めて言葉にしておきたいと思います。


「自社サイトに人を集める」という前提が崩れている

これまでのセオリーはシンプルでした。検索やSNSで注目を集め、自社サイトに誘導し、メールアドレスを獲得して、見込み客を育てる。この30年、ほとんどの会社がこの流れに沿って動いてきました。

ところが今、人はアプリの中で完結します。Instagram、TikTok、Reddit、YouTube、そしてChatGPT。その中で調べ、その中で答えを得て、わざわざ別のサイトには移動しない。

SparkToroとDatosが公開している調査の数字は明快です。Googleで検索した人のうち、何かをクリックするのは4割ほど。残りの約6割は、何もクリックせずに終わる「ゼロクリック検索」です(2024年。氏は現在は3分の2近くに達していると見ています)。1,000回検索されても、外部サイトに渡るのは360クリック。流入は、構造的に細り続けているのです。


あなたの「ホームページ」はもう自社サイトのトップページではない

フィッシュキン氏が繰り返し説いているのは、こういうことです。SparkToroで検索すれば、「料金」「評判」「代替」といったサジェストが並ぶ。ChatGPTに「あれは使う価値があるか」と尋ねれば、要約された評価が返ってくる。

This is your homepage now...

These are your homepage, too:

そこに並ぶものこそが、いまの実質的なホームページだ、というのが彼の考えです。検索結果、AIの回答、SNSのプロフィール——それが、人が最初に出会う「あなた」になっている。

つまりブランドの第一印象は、自分が一切コントロールできない場所で、先に作られている。まずここを認めるところから始める必要があると。


「順位」を追う発想そのものが古い

日本では今、「AI検索で上位に出すには」という相談が増えています。見出しをこう書き換える、構造化データをこう入れる、特定のツールを導入する——。

ただ、フィッシュキン氏のデータが突きつけているのは、その手前の前提のほうです。「上位に出れば流入が増え、流入が増えれば成果が出る」。この考えそのものが、もう現実と噛み合っていない。流入は減り続け、しかも後で触れるように、どこから来たのかすら追えなくなっています。

順位という分かりやすい指標を一生懸命に磨いても、その先がもう繋がっていない。


「効果測定」もすでに成立していない

私たちはこの四半世紀、「デジタルは正確に測れる」を最大の武器にして予算を取ってきました。どのチャネルが何件のコンバージョンを生んだか、経営層に数字で説明できた。

ところが今は、Cookie規制、トラッキングのブロック、リファラーを隠すアプリ(TikTokやメッセージアプリ)の広がりで、「測れはするが、アトリビューション(=どの施策の成果かを割り当てること)ができない」状態になっています。

フィッシュキン氏が公開しているダークソーシャルの実験が象徴的です。SparkToroへの流入の76%が、分析ツール上は「Direct(直接アクセス)」と記録される。けれど、トップページに来る人は29%しかいない。長いURLをわざわざ手で打つ人などいません。実際はSNSやメッセージ経由なのに、ツールには「Direct」としか映らないのです。

さらに広告プラットフォームは、放っておいても起きたはずの売上に、自分の手柄のラベルを貼る。Airbnbが広告費をほぼゼロにしても、流入の95%が残った——という同社CEOの発言は有名です。私たちが見ている「成果の内訳」は、もうかなり怪しい、ということです。


最重要のKPIは「受注数」

フィッシュキン氏の主張はシンプルです。流入とアトリビューション(=どの施策の成果かを割り当てること)を手放し、「影響力」に軸を移せ、と。

自社サイトに来る1人の裏には、自分の見えない場所でブランドを知る1,000人がいる。流入が落ちても売上は伸びることがある(彼自身、流入を大きく落としながら過去最高益を出した企業を記事で取り上げています)。流入と売上は、もう同じものではないのです。

では、流入の代わりに何を見るのか。最重要のKPIは、あくまで受注(CVと売上)です。そのうえで、そこに先行して動く指標を追います。指名検索数(自社名・商品名での検索)、各SNSのインプレッションとエンゲージメント、フォロワーや動画の視聴者数、メール登録者数——こうした数字が伸びたあと、数週間遅れて問い合わせや受注が動く。その連動を時系列で並べ、相関で効果を判断するわけです。

フィッシュキン氏は、追うべき指標を「オーディエンス→リーチ→関心→売上」の段階で整理しています。

段階検索SNSコンテンツ(YouTube等)自社サイト
オーディエンス(母数)キーワード検索数フォロワー数視聴者数リピート訪問者
リーチ検索での表示回数インプレッション再生数・視聴時間商品ページ閲覧
関心指名検索数エンゲージメントコメント・シェア・保存メール登録

最終的な成果指標は、全チャネル共通で「コンバージョン数とCVR(受注・売上)」。流入は、よくて二次的な指標にすぎません。

そのうえでやるべきことは一つ。自分の顧客がどこで情報に触れているかを突き止め、その場所で「選ばれる存在」になることです。


私たちが14年以上やってきたこと

講演を聞きながら、自分たちが14年やってきたことの答え合わせをしているような感覚がありました。

ここまで見てきたとおり、いま起きているのは「数字で見えないことのほうが多い」という状況です。むしろ、一番効いていること——どこかで名前を知られ、誰かに薦められ、覚えられていること——ほど、ダッシュボードには出てきません。だから多くの会社は、見える数字(順位や流入)ばかりを最適化し、肝心の「見えない部分」を後回しにしてしまう。

バズ部が向き合ってきたのは、その見えない部分です。施策の前に、「誰に、何で、なぜ選ばれるのか」を決めるところから入る。数字に出にくく、地味で、AIにもテクニックにも外注できない。それでも、最終的に受注を動かすのはこちらです。「記事を増やしても伸びない」「次の打ち手が分からない」と感じるなら、足りないのは新しいテクニックではなく、この設計です。やり切る会社が少ないからこそ、そこに勝ち筋がある。


さいごに

検索の順位も、流入の数字も、追いかけるほど安心できる指標です。けれど、その設計はもう現実と合っていない。次の打ち手は、新しいテクニックの先ではなく、「誰に選ばれるか」を決め直すところにあります。

本稿で触れた「誰に・何で・なぜ選ばれるか」を設計し、90日で実装するプログラムも提供しています。よろしければAI対策90日プログラムもご覧ください。

今回参照した情報源

  • Social Media Marketing World 2026(主催:Social Media Examiner) https://www.socialmediamarketingworld.com/
  • ランド・フィッシュキン氏/SparkToro(ゼロクリック検索の調査、ダークソーシャル実験、「Who sends traffic on the web」「Traffic Is Down; Revenue Is… Up?」などの公開記事) https://sparktoro.com/
  • 書籍『Lost and Founder』ランド・フィッシュキン著

そこに並ぶものこそが、いまの実質的なホームページだ、というのが彼の考えです。検索結果、AIの回答、SNSのプロフィール——それが、人が最初に出会う「あなた」になっている。

カテゴリー AI検索(LLMO)

記事をシェアする

  • B!

AI対策90日プログラム
先行導入企業で売上が前年比8倍ペース・問い合わせ数5.8倍

(AI対策/LLMO 全18施策の一覧)

 

「AI検索への対応は必要だと思っているが、何からすべきか決め切れていない。」

バズ部では、AI検索への対応をスピーディに完了させたい企業向けに、AI対策90日プログラムを提供しています。

具体的には、次の施策を並行して進めます。

  • ・勝つべきニッチ領域の特定
  • ・独自の強みの言語化とサイト反映
  • ・事例コンテンツの量産体制構築
  • ・AIクローラー対応の技術施策

詳細は以下をご覧ください。