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01/16木12:00〜13:00
SEOにかかわっていると「ドメインパワー」という言葉を耳にすることがあるだろう。
ドメインパワーとは、ドメインが検索エンジンから受けている評価を表す概念で、ドメインパワーが強いほど検索上位に表示される力が強くなる、と考える。
しかし「ドメインパワーとは何か」とあらためて問われると、よくわからないという方が多いのではないか。
にもかかわらず、SEOの現場では頻繁にドメインパワーの言葉が使われる。検索上位を獲得できないことを、安易にドメインパワーのせいにする傾向も見られる。
本記事では、ドメインパワーとは何か基本の知識を解説したうえで、
「SEOに取り組む者として、ドメインパワーをどう捉えるべきか」
という本質論に迫りたい。
SEO初心者の方はもちろん、中級以上の方も、あらためてドメインパワーと向き合うきっかけとしていただければ幸いだ。
目次
まずはドメインパワーとは何か、基礎知識から見ていこう。
冒頭でも触れたとおり、ドメインパワーとはドメインが検索エンジンからどんな評価をされているかを表す概念だ。
そもそもドメインとは、URLでいえば「○○.com」「○○.co.jp」の部分を指す。
ドメイン下に置かれる各ページのコンテンツの評価とは、また別に存在するのが、ドメインパワーである。
日本ではドメインパワーの表現がおなじみだが、英語圏では「ドメインオーソリティ(Domain Authority)」がよく使われる。
ただ、後述するがSEO会社のMozが提供する指標の名称も「ドメインオーソリティ」だ。
誰かがドメインオーソリティの用語を使っていたら、概念としてのドメインパワーを指すこともあれば、Mozの指標のこともあるので注意したい。
もう少し具体的にドメインパワーをイメージするために、実務での言葉の用例を紹介しよう。
たとえば、
「○○のサイトは、ドメインパワーが強いから、記事公開してすぐ1ページめにランクインした」
といった具合に使う。
同じクオリティのページなら、ドメインパワーが強いほうが、より高く検索エンジンに評価される。
あるいは、
「○○のドメインは取得したばかりだから、ドメインパワーが弱い」
と聞くこともあるかもしれない。
新しいドメインは、まだ評価が蓄積されていないので、検索上位に表示させるのは難しい。
「ドメインパワーは、どこで確認できるのか?」
が気になると思うが、Googleはその指標(および存在自体)を公開していない。
そのため、複数のSEO会社が独自の指標を開発して提供しており、サイト運営者はそれらの指標をもってドメインパワーを予測するのが一般的だ。
有名なのが、
の2つである(詳細は後ほど 3. ドメインパワーの調べ方 — 2つの有名指標 にて紹介する)。
ドメインパワーの評価に使われている基準は、指標の開発者によって異なるが、おもな基準として以下が挙げられる。
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では「これらを高めればドメインパワーが上がる→検索順位が上がる」のかといえば、事態はもう少し複雑だ。
Googleはドメインパワーの否定とも取れる発信をしている。詳しくは次章で見ていこう。
私たちは、SEOに取り組む者として、ドメインパワーをどう捉えるべきなのだろうか。
最初に結論を伝えよう。
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なぜ、このような結論になるのか、背景を以下に解説する。
まず、Googleのスポークスパーソンたちの発言を拾ってみると、ドメインパワーにこだわるユーザーをよく思っていない様子がうかがえる。
たとえばジョン・ミューラーが、2020年2月に以下のツイートをしている。
https://twitter.com/JohnMu/status/1231974976514908160
「ドメインオーソリティが高いサイトからの被リンクは、検索順位に重要ですか?」
という質問に対する返答だ。
We don’t use domain authority at all in our algorithms.
訳:私たちは、アルゴリズムにドメインオーソリティをまったく使っていない。
英語がわかる方なら、上記ツイートの一連のスレッドに目を通してほしい。ちょっとした荒れ場になっていて興味深い。
かいつまんで意訳で紹介すると、ジョン・ミューラーのツイートに反応して、
|
…といった具合に、ユーザーたちが騒ぎ出す。
※PageRankがわからない方は「ページランクとは?今でも意識するべき理由と調べ方を解説」を確認してほしい。
対してジョン・ミューラーは、まずPageRankについて以下のとおり述べている。
「たくさん、たくさんあるシグナルのうちの1つとしてPageRankを使っているが、元の論文からは変わっているし、他にもっと強力なシグナルをたくさん使っている」
出典:Twitter
現在のGoogleにとってPageRankの影響力は小さくなっていることがわかる。
さらには、こんな皮肉混じりの格言も飛び出した。
「近道を探そうとするのは人間の性だし、『高DAのリンクが必要だ』と考えたがるのは、人々にもっと学ぶ時間がないことを考えれば理解できる。SEOは簡単ではない」
出典:Twitter ※DA:ドメインオーソリティの略語
もうひとり、Googleのゲイリー・イリェーシュもまた、ドメインオーソリティを否定している。
https://twitter.com/methode/status/791619026652770304
we don’t really have “overall domain authority”.
訳:私たちは「ドメイン全体のオーソリティ」は本当に持っていない。
ただし、Googleの発信で注意しないといけないのは、「(Moz社が提供する指標名という意味もある)ドメインオーソリティ」を持っていないと言い切ることで、若干、けむに巻いている感があることだ。
ユーザーとしては「(概念としての)ドメインオーソリティ」のGoogleのアルゴリズムを教えてほしいのが、Googleはそれについて有無を含めて情報を公開するつもりがない。
わかるのは、ドメインパワーを(被リンクなどのテクニックで)上げようとする質問には、いつも否定的な反応をしている、ということだ。
ドメインパワー的な指標をGoogleが持っているにせよ、それを狙いにいくのは本質からずれているし、実際に狙いにいって検索上位を獲得できるような簡単なものでもない、ということだろう。
では「実際のGoogle検索結果の挙動」はどうなっているか。多くの人が、体感的にドメインパワーの影響力を感じたことがあるだろう。
たとえば、
「運営しているサイトの人気が出て、ユーザーからの評価が高まるとともに、新しくアップした記事が検索上位に入りやすくなった」
という体験だ。
私たち自身も日々そういった体験をしているが、とくに顕著に実感した事例があるので紹介しよう。
あるクライアントで経験した事例だが、ブランドサイトのドメイン下で公開していた記事を、会社のコーポレートサイトのドメイン下に移動した。
すると、コンテンツはまったく同じであるにもかかわらず、各ページの検索順位が大幅に上昇したのだ。
変えたのはドメインだけだから、
「ブランドサイトよりコーポレートサイトのドメインのほうが評価が高かった」
という説明以外、成り立たない。
ここで注意したいのは、これはTLDやSLDの話ではないということだ(「○○.co.jp」のドメイン下に移動したから順位が上がったのではない)。
▼ 補足:TLD・SLDとは?
ひと昔前、「co.jp」「ne.jp」「or.jp」などのドメインが強いとよくいわれていたが、TLD・SLDの影響は、少なくとも私たちバズ部では確認できていない。
逆に、私たちは「○○.com」のドメインを「○○.ne.jp」に移動した結果、何も起きなかった(順位変動がほぼ見られなかった)という事例も経験している。
実際のところ、Google内でドメインパワーがどう測定されているのかについて、事例同士の共通項を見いだせていない。
ドメイン変更を実際にやってみないと、なんともいえない現状がある。やってみて予想と異なる結果となることも多い。
前述の成功例(ブランドサイト→コーポレートサイトへのドメイン変更)を見て、安易に真似するのは推奨できないので、この点は注意をお伝えしたい。
「SEOに取り組む者としてドメインパワーをどう捉えるべきか」の問いの総括としては、検索順位にドメインパワーの影響力は見られるが、ドメインパワーを直接的に上げる策は存在しない、といえる。
これが、Googleが「アルゴリズムにドメインオーソリティは使っていない」と頑なに言い続ける真意でなかろうか。
“ユーザーに高品質なコンテンツを届ける”という本質をスキップして、ドメインオーソリティを上げるための策を乞うユーザーを、Googleは嫌がっているのだ。
高品質なコンテンツを長期的に多く生み出し続けてきたドメインは、新しいコンテンツも高品質な可能性が高いから、Googleは上位に押し上げようとする。
そのアルゴリズムだけ抽出して、ショートカットしようとしても、無駄な努力に終わることが多い。素直に高品質なコンテンツづくりに励むのが、ドメインパワーを高める近道である。
前述のとおり、Googleの内部で使われているドメインパワーは、その存在も基準も明かされていない。
そこで、ドメインパワーを推し量る代替としてよく利用されるのが、以下の2つの指標である。
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ドメインパワーの向上が目的化するのは本質から外れるが、上記指標は自社の現状把握や、競合他社との比較には活用できる。それぞれ見ていこう。
出典:Moz
Mozは2004年に設立されたSEO会社で、本社はシアトルにある米国企業だ。
『ドメインオーソリティ(Domain Authority:DA)』をはじめとするSEOツールを提供している。
ドメインオーソリティはMozのWebサイトから無料で確認できる(無料は1日3レポートまで)。
MozのWebサイトから[Free Domain SEO Analysis Tool]へアクセスすると、以下のページが表示される。
調べたいドメインを入力したら[Analyze domain]をクリックすると、ドメインの分析結果が表示される。
たとえば以下は厚生労働省のドメイン(mhlw.go.jp)を検索した結果だ。【Domain Authority:91】という数字が確認できる。
ドメインオーソリティは、100点満点のスコアとなっている。
「いくつならよい」とは一概にいえないので、過去の自サイトやベンチマークしている競合サイトとの数字を「比較」する使い方が推奨される。
その前提のうえで、あくまで参考までに目安を提示すると、以下のとおりである。
▼ 目安(あくまで参考)
40以下 | 悪い |
40〜50 | 平均 |
50〜60 | 良い |
60以上 | 優秀 |
出典:Ahrefs
Ahrefsは2010年に設立されたSEO会社で、拠点はシンガポールにある。Mozよりも新しい会社だが、被リンクに特化したSEOツールで急成長を遂げた。
Ahrefsは『ドメインレーティング(Domain Rating:DR)』を提供している。
有料プランに申し込んで利用するほかに、[Website “Authority” Checker]にアクセスすると、以下のページが表示され、無料で確認できる。
先ほどのドメインオーソリティと同じく、厚生労働省のドメイン(mhlw.go.jp)を調べてみると、以下のとおり【ドメインレーティング:92】と表示された。
ドメインオーソリティ(DA)とドメインレーティング(DR)の違いを一言でいえば、DAのほうが複雑だ。
被リンク分析に強みのあるAhrefsのDRは、シンプルに「被リンクの量と質」によって数値を算出している。ドメイン年齢やトラフィックは考慮していない。
▼ Ahrefsより引用:
ドメインレーティング(DR)スコアの計算方法
ドメインレーティング(DR)は、Webサイトが持つ外部被リンクの量と品質を調査します。
この指標を算出する方法についてシンプルに表すと、次の通りです。
ドメインレーティングではスパムリンク、トラフィック、ドメイン年齢などその他の変数は考慮されません。
出典:Ahrefs
一方、ドメインパワー分析の老舗ともいえるMozのDAは、数十の要素を総合的に評価して、算出されている。
▼ Mozより引用:
Domain Authority is based on data from our Link Explorer web index and uses dozens of factors in its calculations. The actual Domain Authority calculation itself uses a machine learning model to predictively find a “best fit” algorithm that most closely correlates our link data with rankings across thousands of actual search results that we use as standards to scale against.
訳:ドメインオーソリティは、Link Explorer web index からのデータに基づいており、算出には数十の要素が使用されています。ドメインオーソリティの計算には機械学習モデルを使用しており、(Link Explorer web index の)リンクデータと、基準としている何千もの実際の検索結果の順位を、できる限り近づけて相関させるために、最適なアルゴリズムを予測的に発見します。
出典:Moz
以上から、
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という具合に使い分けるとよいだろう。
最後に、SEOでドメインパワーを扱ううえで注意したいポイントを2つ、お伝えする。
DAやDRをはじめとするSEO会社が提供している指標は、かならずしもGoogleの実際の順位変動と連動しない。その理由は、SEO会社の指標は、あくまでも予測だからだ。
先ほどMozのDA(ドメインオーソリティ)は数十の要素が使われていると紹介したが、Googleのアルゴリズムには、少なくとも数百以上の要素があると考えられている。
Googleは桁違いに複雑な仕組みによって運営されており、しかもリアルタイムに学習し続け、アップデートを繰り返し、変化し続けている。
肌感覚的には、2010年代の半ばまで、SEO会社の指標はGoogleのアルゴリズムをかなり近くまで追跡していた。しかし現在は、Googleの複雑な進化によって、Googleのアルゴリズムの推測は極めて難しくなっている。
※MozのWebサイトでも、以下のとおり明記されている。
This score can then be used when comparing websites or tracking the “ranking strength” of a website over time. Domain Authority is not a Google ranking factor and has no effect on the SERPs.
訳:このスコアは、Webサイトを比較したり、Webサイトの“ランキングの強さ”を長期的にトラッキングしたりする際に使用されます。ドメインオーソリティは、Googleのランキング要因ではなく、検索結果ページに影響を与えるものではありません。
出典:Moz
SEO会社が提供する指標は、Mozが言うように、Webサイト同士の比較や、自サイトのドメインパワーの推移を時系列で追うために使うのが正解だ。
ここまでお読みくださった方なら、ご理解いただいているかと思うが、ドメインパワーにこだわるのはよい結果を生まない。
ドメインパワーを誤解して、ドメインパワーの向上に取り憑かれた担当者は、しばしば誤った行動をしてしまう。
高品質なコンテンツを作ることよりも被リンクを増やすことに集中したり、リンクビルディングでドメインパワーの高いサイトばかり優先したりする。
ドメインパワーにこだわることの最も大きな弊害は、このような手法でドメインパワーを上げたところで、SEO成果にはつながらないことだ。
繰り返しになるが、必要なのはコンテンツパワーである。コンテンツパワーを高めた結果として、ドメインパワーが高まる、という順序でなければ、検索順位は上がらない。
ショートカットを探さず、コンテンツづくりに正面から取り組もう。それが一番の近道だ。
本記事では「ドメインパワー」をテーマに解説した。簡単に要点をまとめておこう。
▼ ドメインパワーとは
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SEOに取り組む者として「ドメインパワー」をどう捉えるべきかといえば、以下のポイントを押さえてほしい。
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ドメインパワーの調べ方として2つの有名指標を紹介した。
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SEOでドメインパワーを扱ううえでの注意点は以下のとおりだ。
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ドメインパワーを手っ取り早く上げる魔法のノウハウは存在しないので、引き続き愚直にコンテンツづくりに励んでいこう。
なお、高品質なコンテンツをすでに作っていて、次は被リンクを増やしていきたいフェーズにいる方には、「SEO 外部対策」の記事がお役に立てるはずだ。ぜひ続けてチェックしてほしい。
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