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YMYL(Your Money or Your Life)とは、ユーザーのお金(財産や経済状況)または生命(健康や安全)に影響を与える可能性のある情報を指す。
人の人生や幸福にとって、非常に重要な情報、あるいは誤った場合にリスクが高い情報は、取り扱いに注意が必要だ。最悪なケースでは、誰かの命を奪う危険がある。
よってGoogleは、YMYLと分類した情報については、とくに厳しい品質評価基準を設けている。
言い換えると、YMYLに適切に対応することは、SEO戦略として不可欠である。
この記事では、今あらためて知っておきたいYMYLの基本から取り上げる。
加えて、どのような条件でYMYL判定されるのか、どう対策していけばよいのか、最新情報も多く盛り込んでいるので、実務の参考にしてほしい。
目次
まずはYMYLとは何か、基本事項から確認していこう。Googleの公式情報をベースに、以下を解説していく。
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YMYLとは、「Your Money or Your Life」の頭文字を取った造語だ。
「Your」は直訳すると「あなたの」という意味だが、英語のニュアンスとしては広く、“一般的な読者やユーザー、つまり情報を求めている人々” を指している。
これを踏まえて訳せば、“YMYL”とは「ユーザーのお金(Money)や命(Life)に関わる情報」という意味になる。
「YMYL」は、Google社が発信する公式情報の頻出用語である。たとえば「検索品質評価ガイドライン」(*1)では、以下のとおり記載されている。
【2.3 ユア・マネー・オア・ユア・ライフ(YMYL)トピックス】
WWW上のページには、多種多様なトピックスが存在している。
人々の健康、経済的安定、安全、または社会の福祉や幸福に重大な影響を及ぼす可能性があるため、危害を及ぼすリスクの高いトピックもある。
私たちは、これらのトピックを「Your Money or Your Life=YMYL」と呼んでいる。
2.3 Your Money or Your Life(YMYL) Topics Pages on the World Wide Web are about a vast variety of topics. Some topics have a high risk of harm because content about these topics could significantly impact the health. financial stability. or safety of people. or the welfare or well- being of society. We call these topics “Your Money or Your Life” or YMYL. |
出典:Google「検索品質評価ガイドライン」2022年12月15日版
※日本語訳は編集部(以下同)
*1:検索品質評価ガイドラインとは、Google のアルゴリズムが適切な検索結果を表示しているかチェックする“検索品質評価者”向け資料で、品質評価の判断基準が詳説されている。
さらに、YMYLの対象となるトピックについて、以下のとおり定義づけされている。
YMYLのトピックは、以下の1つ以上に重大な影響を与えたり、損害を与えたりする可能性があるものをいう。
出典:Google「検索品質評価ガイドライン」2022年12月15日版
上記のとおり、そのコンテンツに直接触れた人だけでなく、波及して間接的に影響を受ける人々も含まれていることに留意しよう。
YMYLのトピックは、以下の理由により、人々の健康、経済的安定や安全、社会、福祉に直接的かつ重大な影響を与える可能性があるものをいう。
出典:Google「検索品質評価ガイドライン」2022年12月15日版
犯罪や暴力など明らかな危険は当然ながら、医療関連の情報、金銭的な損失リスクのある情報、身の安全にかかわる情報、法律にかかわる情報など、YMYLがカバーする領域は広い。
YMYLのトピックかどうかを判断するには、次のような危害が生じるリスクがあるかどうかを検討する。
出典:Google「検索品質評価ガイドライン」2022年12月15日版
ここまでの話をもとに、主要な対象分野をまとめると、以下のとおりとなる。
【YMYLの主要な対象分野】
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※ 具体例は、後ほど解説しているので、続きを読み進めてほしい。
Googleが「YMYL」という言葉を使い、特定のトピックを定義してカテゴライズしているのはなぜか。
その答えは、Googleは、YMYLを扱うサイトやページに、特別な措置を行うからである。
特別な措置とは、Googleの検索結果ページへの掲載ハードルを厳しくすることである。端的にいえば、YMYLのトピックは、SEOの難易度が上がる。
Googleは、以下のとおり述べている。
重要:明確なYMYLトピックに関するページには、非常に高いページ品質評価基準が適用される。これは、そのようなトピックに関する低品質のページは、人々の健康、経済的安定、安全性、または社会の福祉やウェルビーイングに悪影響を与える可能性があるためである。
Important:For pages about clear YMYL topics, we have very high Page Quality rating standards because low quality pages on such topics could potentially negatively impact a person’s health, financial stability, or safety, or the welfare or well-being of society. |
出典:Google「検索品質評価ガイドライン」2022年12月15日版
YMYLで、Googleの検索結果ページ上位掲載が許されるのは、極めて高品質なコンテンツと評価されたページのみである。
サイト運営者が意図せずとも、GoogleにYMYLと判断されれば、途端にSEO難易度が上がってしまう。
ここでは、もう少し具体的に、YMYLと見なされる例を見ていこう。Googleが提示している以下の表をもとに、解説を進める。
出典:Google「検索品質評価ガイドライン」2022年12月15日版
「明らかにYMYLである」「YMYLの可能性がある」「YMYLではない」の3つの例示が、以下6つのトピックタイプに対して、なされている。
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まず、情報コンテンツの場合は、
「不正確な情報によって、重大な損失が生じる可能性はあるか?」
が判断基準となる。
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補足として、「YMYLの可能性がある」の原文”May be YMYL Topic”を加味すると、
「天気予報が必ずしもYMYLトピックであるわけではないが、特定の状況下ではそうなる可能性がある」
というニュアンスが含まれている。
「天気予報は、絶対にYMYLではない」と思いがちだが、間違いだ。
「YMYL=医療と金融」のように単純化して認識していると、このような微細なニュアンスがYMYLに含まれることに気づけず、SEO上の失策につながりかねない。
ユーザーの行動に対するアドバイスは、
「不適切なアドバイスから、大きな危害が生じる可能性はあるか?」
と考える。
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続いて、個人的な意見を表すコンテンツについて見ていこう。
「個人的な意見を述べるだけなら、YMYLに該当しない」というのは間違いだ。
「その意見が、他の人々や社会に、どのような影響を与える可能性があるか?」
に基づいて、YMYLを判断する。
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現在の出来事に関するニュースは、
「そのトピックが、人々や社会に大きな影響を与える可能性があるか?」
を評価する。
社会への影響については、選挙や社会に利益をもたらす公共機関への信頼などの問題も、考慮する必要がある。
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ソーシャルメディア上のコンテンツの場合、大きな危害を引き起こす可能性に加えて、
「広くシェアされた場合、社会に損害を与える可能性があるか?」
についても考慮する。
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*2:タイドポッドチャレンジは米国で流行した、洗濯用洗剤のTideを食べるチャレンジ。
最後に、オンライン取引や製品レビューに関するコンテンツだ。
「その対象とする製品によって、重大な危害を域起こす可能性があるか?」
を考慮する。
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「これはYMYLか?」と判断に迷ったときには、次の2つの質問を考えるようにアドバイスされている。
If you are have trouble deciding whether a topic is YMYL, consider the following questions: |
出典:Google「検索品質評価ガイドライン」2022年12月15日版
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サイト運営者であれば、
「自サイトがYMYL関連のアルゴリズムに適合して、検索上位に表示されなくなったら、どうしよう」
という不安を覚えるかもしれない。
以下では、YMYLによる悪影響を回避するための具体的な最新対策を解説する。
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1つめの対策は「不用意なYMYLトピックへの言及を避ける」である。
自サイトのコンテンツが、意図せずにYMYLのトピックに足を踏み入れていないか、見直してほしい。
ここまでお読みいただくと、単に「病名のキーワードが含まれていたらYMYL」とか、「投資アドバイスをしたらYMYL」といった単純な判定はできないことが、おわかりいただけたと思う。
とくに、オウンドメディアのキーワード選定の過程で、本来、専門家や有資格者が語るべきトピックを採用し、記事執筆しているケースは非常に多い。
【専門家や有資格者が語るべきトピックの例】
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もちろん、自社(あるいはコンテンツ作成者)が、専門家であれば問題ない。
しかし、そうでない場合、YMYL領域に踏み込んでも、SEO難易度が上がるだけでメリットがない。
専門性を発揮できる分野のトピックを採用し、それ以外は思い切って切り捨てることも必要である。
2つめの対策は「作成者を明示し記事上部からプロフィールへリンクする」である。
適切な資格や専門性を持っており、そのうえでYMYLのトピックを扱う場合は、YMYLのトピックを扱うにふさわしい作成者であることを、明示しよう。
具体的には、記事の上部に作成者の氏名と保有資格を記載し、Googleにもわかるように「author(作成者)」として構造化データ(*3)でマークアップする。
*3:構造化データとは、検索エンジンに、「その文字列が何を意味するのか?」についての情報を与える仕組みである。詳しくは「構造化データとは?実装するとできることや3つの実装方法を解説」を参照してほしい。
Google公式の「作成者のマークアップのベスト プラクティス」も参考にしよう。
さらに、作成者ごとの詳細なプロフィールページを準備する。
記事コンテンツの作成者名から、プロフィールページにリンクを設置して、読者や検索エンジンが確認できるようにしておこう。
プロフィールページには、以下を掲載するとよい。
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YMYLコンテンツの場合、「誰が書いた記事か?」は非常に重要なため、記事上部の目立つ位置に作成者を明示しよう。
具体例を挙げると、米国でSEO的にも大きな成功を収めているYMYL系サイトとして、
「Healthline: Medical information and health advice you can trust.(ヘルスライン:信頼性の高い医療情報と健康アドバイス)」
がある。
Healthlineでは、記事タイトルの直下と、記事の末尾の2度、作成者および医学的レビューを行った専門家の氏名が明記されている。
⇒ Healthlineの記事の例:「Yoga for Cold & Flu: 7 Stretches to Find Relief」
このような構成を参考にするとよいだろう。
3つめの対策は「ページの目的をタイトルで明記する」である。
Googleの「検索品質評価ガイドライン」では、ページの評価をする際に、
「ページが、そのページの目的を、どの程度達成しているかを評価する」
という考え方が繰り返し、説明されている。
目的に対して、良い・悪いを評価するので、目的設定次第で評価は変わるということだ。もっといえば、Googleがそのページの目的を何と認識するか?が重要である。
何が目的か、Googleに明示するために、タイトルをうまく活用してほしい。
たとえば、投資系のキーワードで「損切り」という言葉がある。
以下のように、タイトルのつけ方によって、目的の想定が変わることがわかるだろう。
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目的が「アドバイスではなく、単なる用語の意味説明」とわかれば、YMYL基準の要求度も下がる。
よく「○○を解説」というタイトルを見かけるが、“解説”の部分を具体的に換言することが、SEO対策につながる。
4つめの対策は「専門家に寄稿してもらう」である。
メディア戦略上、YMYLコンテンツが必要だが、手がけるに値する専門性がない場合は、専門家に寄稿してもらおう。
Googleは、サイト運営者とコンテンツ作成者をそれぞれ評価する。よって、コンテンツ作成者が専門家であれば、そのページは評価される可能性が高い。
先ほど詳細プロフィールページの作成について解説したが、寄稿者の場合も、専用のプロフィールページを準備して、詳しく資格や経歴を掲載するとよいだろう。
Googleが、その寄稿者の信頼性を評価することにつながるからだ。
なお、寄稿(外部の専門家が原稿を執筆する)ではなく、監修(ライターなどが執筆した原稿を外部の専門家がチェックする)の場合、注意点がある。
日本のサイトでは、作成者が明示されておらず監修者だけ記載されているケースが多く見られる。
しかし、このような「作成者不明・監修者あり」のケースがどう評価されるのか、はっきりしない。
Googleの「検索品質評価ガイドライン」では、“サイト責任者”と“コンテンツ作成者”を確認するように、レクチャーされている。
YMYLコンテンツを評価するうえでは、
「サイト運営者およびコンテンツ作成者が信頼できることが重要であり、さらに専門家のレビュー(監修)もあると、なおよい」
というスタンスで捉えたほうがよいだろう。
前述の「Healthline」でも、医学的レビューをした医師の氏名と、その記事を執筆した作成者の氏名が、どちらも明記されている。
5つめの対策は「やむなくYMYLを扱う場合は公的機関の引用で構成する」である。
YMYLがメインコンテンツではないものの、記事の文脈上、「YMYLに関連するトピックに触れないと、読者に対して不親切」といったケースがあるかもしれない。
そのようなときに注意したいのは、無資格で専門知識を持たない人物が、勝手に書かないことである。
ではどうするのかといえば、公的機関(go.jpドメインなど)に掲載されている情報の引用を利用して、記事を構成しよう。
[○○ site:go.jp](○○に検索したい語句を挿入)と検索すると、政府ドメインに限定した情報を検索ができる。
引用する際には、blockquoteタグ(引用タグ)を正しく使用して、自分が書いたのではなく引用であることを明確にする。
そのうえで、出典表記と発リンクをして、参考文献の信頼性が高いことをGoogleに伝えよう。
WordPressを利用している場合は、[引用]機能を使うと、自動的にblockquoteタグや引用元を示すciteタグが挿入される。
6つめの対策は「定期的に更新して情報鮮度を保つ」である。
情報鮮度はコンテンツの価値に直結するが、とりわけYMYLコンテンツは、その傾向が強い。
法律、税制、医療などの情報は時間の経過とともに変化するため、定期的な更新は必須である。
具体的には、扱うトピックごとに適切な更新頻度(例:毎週、月1回、3ヶ月ごと、年1回など)を決め、定期的にアップデートを繰り返していこう。
更新頻度に関しては「【2022年】SEO成果を最大化する更新頻度とは?検索順位を高める方法」にて解説しているので、参考にしてほしい。
YMYLコンテンツであれば、ひっそりと内容を書き換えるのではなく、透明性を持って更新履歴を公開しよう。
お手本として、Healthlineの記事「10 Impressive Health Benefits of Apples」の末尾に配置された、「History」のセクションを見てほしい。
“Dec 17, 2018” の初出から現在のバージョンに至るまで、いつ・誰が記事をアップデートしたか、公開されている。
7つめの対策は「YMYLと非YMYLのコンテンツを別のドメインに分ける」である。
Googleのジョン・ミューラーは、2021年9月のオフィスアワーで、YMYLと非YMYLの両方を扱うサイトは、どう対応すべきかについて、アドバイスしている。
主要なポイントを以下にまとめた。
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YMYLは、Googleが最も配慮している分野のひとつだ。今後もさまざまなアップデートが実施され、検索順位の変動など環境変化にさらされる可能性が高い。
YMYLコンテンツ・非YMYLコンテンツの両者を含有するサイトは、別ドメインで運営したほうが、Googleの評価におけるリスクを、最小限に抑えられるといえるだろう。
出典:English Google SEO office-hours from April 9, 2021
最後に、提言がある。
なぜYMYLがこれほど重視され、厳しい制約によって締め付けられているのか。その意味を、あらためて考えてほしいと思う。
若手SEO担当者の中には、2016年に日本中を震撼させた「WELQ騒動」を知らない層も増えた。
「WELQ騒動って何?」という方へ、現在もリンクが生きている当時の記事を、以下にリストアップした。まず目を通して、学んでほしい。同じ愚行を、二度と繰り返さないために。
【WELQ騒動の関連記事】
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YMYLの規制強化の背景について無知なまま、「YMYLを攻略したい」と考える者が増えていることを、危惧している。
YMYLは、攻略すべきものではない。YMYLコンテンツを手がけるにふさわしい資格や専門性を持たない場合、手を引くべきである。
YMYL分野のトピックは、人の興味を引きやすい。訪問者の収益化も、たやすいことが多い。
その理由は、
「病気を治したい」
「お金が必要だ」
といった、YMYLのトピックに絡むニーズは切実だからだ。
ときに生死に関わり、藁をも掴む思いで検索しているユーザーがたくさんいる。苦しみの中で、合理的な判断能力を、失っている人もいる。
そこに手を出せば稼ぎやすいことを、多くの人が知っている。それをやらないのは倫理観であり、モラルであり、良心である。
私たちバズ部は、SEOテクニックを無料公開しているが、人々を幸せにするために使ってほしいと願ってやまない。
本記事では「YMYL」をテーマに解説した。要点を以下にまとめる。
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YMYLとみなされる具体例として、以下を紹介した。
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YMYLによる悪影響を避けるSEO対策として、次の7つがある。
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サイト運営者としては、YMYLに対する軽率な考えや行動の危険性をあらためて噛みしめ、本当の意味でユーザーのためになるコンテンツづくりを進めていこう。
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本書は弊社やクライアント様がコンテンツマーケティングに取り組み
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