AI検索の登場により、検索エンジンからの流入が、じわじわと落ち続けている——。この数年、多くのオウンドメディア運営者が直面している状況だ。
今回の事務所も同じだった。長年安定して問い合わせを生み続けてきたメディアが、アクセスは右肩下がりに減り続けていた。
そこへコアアップデートが重なったことで下落が加速し、月間アクセスは2023年3月の最盛期45万PV→2026年5月には25万PVへ減少、受電数は月60件程度まで落ち込む。
だが結論から言えば、この事務所は受電数を月200件前後まで戻している。
しかも、記事を大量に作り直したわけでも、新しい広告を出したわけでもない。すでにある記事の「読まれた後」と「読まれる前」を整備しただけだ。
今回はどのようにこの成果を実現したのか。プロジェクトの様子をお伝えする。
クライアント情報
全国対応で相談を受け付ける大手士業事務所。
(自社メディアを長期運用しており、Web経由の相談が売上の柱となっている事務所)
得られた成果
【1日あたりの受電数】 月60件→月200件前後 |
【主な実施内容】 ・カテゴリ別バナーの新規開発(約10ジャンル) |
お客様の課題
AIの登場で検索流入の減少が続き、CVが激減
この事務所のメディアは、長年にわたり安定して相談を生み続けてきた資産だった。
しかし、検索からの流入は年を追うごとに細っていく。順位が少しずつ下がり、流入が落ち、それに伴って受電数も落ち込んでいった。
さらにGoogleのコアアップデートが重なったことで下落は加速。
月間アクセスは2023年3月の最盛期45万PV→2026年5月には25万PVへと落ち込み、受電数は月60件程度に。多い月でも月100件に届かず、以前の水準からは大きく後退していた。
問題は、単純にアクセスが減ったことだけではない。
残っているアクセスさえも、問い合わせへの転換率は下がり続けている。そんな状態が続いていた。
600本の資産が、CVに寄与していなかった
流入が落ちたとき、多くの事務所が取る選択肢は限られている。記事を増やすか、既存記事の中身をリライトするか。この事務所もその2つは継続していた。
だが、この状況で記事を増やしても解決にはならない。すでに600本規模の記事があるため、数本足したところで全体数字に及ぼすインパクトはごくわずかだった。
そして既存記事のリライトも行なっていたのだが、そのリライトを行うとむしろ問い合わせ数は減少。どちらの施策も、効果的な打ち手になっていなかったのだ。
一方で、その600本が読者をどこに運んでいるかは、これまで検証の対象になっていなかった。
内部リンクはシステムで機械的に挿入されるだけ。バナーはサイト共通のものが1種類、全記事に同じように置かれている。
記事を書く体制も、SEOを見る体制もある。だが「読み終えた読者を相談まで運ぶ設計」だけが、誰の担当領域にもなっていなかった。
今回行ったアプローチ
私たちが行ったのは、大きく分けて2つ。「CVへの導線」の作り直しと、「記事への入り口と回遊」の整備である。
1. カテゴリ別バナーの開発 — 約10ジャンルすべてに専用の訴求を作る
まず着手したのが、記事内に設置するバナーの全面的な作り直しだ。
多くのメディアでは、サイト共通のバナーが1種類、どの記事にも同じように置かれている。この事務所も同様だった。
だが、考えてみてほしい。
Aという手続きについて調べている読者と、Bという手続きについて調べている読者では、抱えている不安も、知りたいことも、行動に踏み切る理由もまったく違う。それなのに、全員に同じ文言のバナーを見せていては、刺さるはずがない。
そこで私たちは、メディアの取り扱い領域を約10のカテゴリに分割し、カテゴリごとに専用のバナーを制作・実装した。
ここで重要なのは、バナーのコピーを「Web担当者の想像」で書かなかったことだ。
私たちは各領域を担当する専門家に直接ヒアリングを行い、
・その手続きで、相談者が実際につまずいているのはどこか
・相談前に、何を一番不安に感じているのか
・どんな一言があれば、電話をかけようと思えるのか
を徹底的に洗い出した。
現場の専門家しか知らない「相談者のリアルな詰まりどころ」を言語化し、それをそのまま訴求コピーに落とし込んでいく。
その結果、バナーは「お気軽にご相談ください」という当たり障りのないものから、そのカテゴリの読者にとって「自分のことだ」と感じられるメッセージへと変わった。
【バナーのコピー例】 |
同じアクセス数でも、CVRはまったく別のものになる。ここが今回の成果の中核だ。
2. 約600記事のタイトルと内部リンクの整備
もう一つが、既存記事の資産価値を取り戻す作業だ。
■ 約600記事のタイトルを作り直す
公開当時のまま放置されていた記事タイトルを、約600本すべて作り直して更新した。
検索結果に並んだときにクリックされるか、そして読者が求めている内容と一致しているか。この2点を基準に、1本ずつ書き換えていく。
まず、流入を集めている記事とそうでない記事を並べ、どんなタイトルが読まれているのかの傾向をつかむ。次に、その記事にたどり着く読者が何を知りたくて検索しているのかを一本ずつ想定する。最後に、それをクリックしたくなる言葉に落とし込む。
たとえば、手続きの方法を調べている読者に対して「◯◯とは」という定義から始まるタイトルでは、求めている情報が中にあると伝わらない。「◯◯の手続きの流れと必要書類」であれば、読者は自分の疑問がここで解決すると判断できる。地味な作業だが、600本という規模で行えば、メディア全体の流入構造は確実に変わる。
■ 内部リンクに「クリックしたくなる一言」を足す
内部リンクについても手を入れた。
この事務所のメディアでは、内部リンクが機械的に挿入されている状態だった。関連記事へのリンクは貼られているが、そこには「なぜこの記事を読むべきなのか」という文脈が一切なかった。
そこで私たちは、すべての内部リンクの前にワンクッションとなる誘導文を追加した。
「◯◯について△△な情報を詳しく知りたい方は、以下の記事もご参考ください」
たったこれだけの一文だ。
だが、リンクがただ置かれているのと、「あなたが今抱えている疑問は、この先で解決できる」と明示されているのとでは、クリック率がまったく違う。
回遊が増えれば、読者がバナーに触れる機会も増える。1で作り直した訴求が、より多くの読者に届く状態になるということだ。
この2つの施策は、それぞれ単体でも効果があるが、組み合わせることで効果が乗算になる。
得られた成果
最後に改めて、このプロジェクトで得られた成果をお伝えする。
【1日あたりの受電数】 月60件→月200件前後 |
コアアップデート以降落ち込んでいた受電数を、約2〜3倍の水準まで回復させることができた。
1日あたり5件の増加は、月間で約150件、年間では1800件規模の相談増に相当する。
そして重要なのは、この回復が「新規記事の量産」ではなく、既存資産の作り直しによって実現しているという点だ。
新しく記事を作れば、成果が出るまでには時間がかかる。だが、すでに順位を持ち、すでに読まれている600本の記事の導線を整えることは、今日直せば、今月の数字に返ってくる施策なのだ。
おわりに:アクセスが戻らなくても、問い合わせ数は戻せる
検索流入が落ちていくとき、多くの事務所が向かう先は2つに絞られる。順位の回復を待つか、記事をさらに増やすか。どちらも「アクセスを取り戻す」という同じ発想の上にある。
だが、検索環境そのものが変わり続けている以上、かつての流入がそのまま戻ってくる前提で動くのは危うい。
私たちが今回のプロジェクトで確認できたのは、アクセスが戻らなくても、問い合わせの数は戻せるという事実だ。
すでに数十本・数百本の記事資産を持ちながら、問い合わせが伸び悩んでいるメディアであれば、記事を1本増やすより先にやるべきことがある。
まずは、今ある記事が読者をどこに運んでいるのかを、一度見直すことをお勧めする。
※詳しい取り組み内容を知りたい方は、面談で担当がお話させていただきます。
ご興味のある方は、こちらよりお気軽にお問い合わせください。
https://lucy.ne.jp/bazubu/contact
