マーケティングにおけるペルソナとは、商品開発やコンテンツマーケティングの際に設定する、象徴的な仮想ユーザーのことだ。
ペルソナ設定では、名前・年齢・性別・住所などの属性のみならず、パーソナリティやライフヒストリーなどの細部に至るまで詳細に描くことで、まるで実在するかのような人物像を作り出す。
ペルソナのメリットは、リアルな人物の立場になって思考したり感情移入したりすることによって深い顧客理解が可能になり、潜在ニーズをとらえやすくなることだ。
ペルソナの正しい活用によって潜在ニーズを捉えれば、極めて優れた差別化を実現できる。
しかしながら、現代の日本においてペルソナが正しく理解されているとは言いがたい。
多くの経営者、マーケター、Web担当者が、誤った理解のもとにペルソナを乱用し、ペルソナの恩恵を受けるどころか、むしろ害を被っている。
そんな現状を打破すべく、本記事ではペルソナの真髄を基礎から解説する。
この記事に書いてあることを吸収したうえでペルソナを活用するのなら、ペルソナはあなたのビジネスに大いに貢献することは間違いない。
ではさっそく「ペルソナ」の解説を始めよう。
目次
1. ペルソナとは
ごく簡単にいえば、マーケティングにおけるペルソナとは「製品開発などの際に設定する仮想ユーザー」のことだ。
▼ ペルソナの設定例
しかし「ペルソナって、わかったようでわからない」のが本音ではないだろうか。その理由は、ペルソナはマーケティングだけで使われる用語ではないことにある。
おのおのが「自分の知っている“ペルソナ”の意味」を、なんとなくマーケティングに当てはめて思考している。結果、悲しいほどのすれ違いが起きているのだ。
さまざまなペルソナの意味
マーケティングにおけるペルソナを詳しく解説する前に、すれ違いを避けるべく、各分野でのペルソナの意味を整理しておきたい。
ペルソナは、心理学・文学・美術・宗教など、さまざまな分野で使われる用語だ。やっかいなことに、それぞれ意味が大きく異なる。
▼ マーケティング以外のペルソナの意味
心理学におけるペルソナ | 社会に適応するために身に付けた表面的な人格(仮面) |
文学におけるペルソナ | 登場人物、語り手 |
美術におけるペルソナ | 人体像 |
宗教におけるペルソナ | キリスト教の三位一体論における位 |
マーケティングでペルソナを扱ううえでは、ほかの分野における意味はいったん忘れてほしい。
特に、心理学におけるペルソナの「仮面」のニュアンスは、マーケティングにおけるペルソナを理解するうえで弊害となる。
マーケティングにおけるペルソナとは、仮面とは真逆の意味を持つからだ。詳しくは次項で解説しよう。
マーケティングにおけるペルソナとは
マーケティングにおけるペルソナとは、実在するユーザーのデータから共通項を抽出して設定した象徴的な仮想ユーザーのことだ。
心理学における「表面的な人格、仮面」のニュアンスはない。仮面どころか、実在するユーザーのデータをもとに設定することに注目してほしい。
マーケティングにおけるペルソナでは、まずペルソナを設定する前に情報収集をする。実在するユーザーのデータを集めて、“ペルソナのもと”を作るのだ。
データが集まったら、そのデータの整理を経て、まるで実在するかのようなユーザー像(=ペルソナ)を作り上げていく。
名前、年齢、性別、住所、パーソナリティ、行動パターン、趣味嗜好、悩み、将来の夢に至るまで、詳細に描くのがポイントだ。
完成したペルソナは、ペルソナの立場になって思考したり感情移入したりするために活用する。
ペルソナを設定する目的
ペルソナは何のために設定するのかといえば、その究極の目的は「顧客理解」である。
企業視点ではなく、顧客視点のマーケティングを可能にするのがペルソナの特徴だ。
ユーザーの心の奥底にある、潜在ニーズ・インサイト・人には話さない本音などを、徹底的に深く理解するために、ペルソナを設定する。
なぜなら、ユーザーを“ひとりの生身の人間像であるペルソナ”として詳細に描写すると、ユーザーのオモテには見えていない深い部分の価値観や感情が、手に取るようにわかるからだ。
例えば「30歳・女性・会社員」という記号的な表記から、この人が何を求めているのか想像するのは難しい。しかし、以下のように描写したらどうだろうか。
● 詳細な描写の例
東京都中野区に住む30歳の女性。
ベンチャー企業に勤めて3年目。がむしゃらにがんばってきたけれど、最近は仕事をしたくない気持ちがあふれてきて困っている。
自分は怠け者なのでは?と責め続ける毎日で、体を引きずるようにして出社している。
意欲を失ったのにはきっかけがあり、それは社長からのパワハラがきっかけだった。
責任感がとても強いので「いま抜けたらみんなが困る…」という思いでがんばっているが、そろそろ心身の限界が近づいている。
スマホでGoogleを開いて、無意識のうちに「仕事したくない」と検索している。
この人に感情移入して思考すれば、どんな潜在ニーズを抱えていて、どんな価値を提供すればニーズに答えられるのか、深く想像できるはずだ。
これこそが、ペルソナを設定する意義である。
2. 失敗する人が理解していないペルソナの2つの本質
ペルソナを知って、ペルソナを設定してみたという人から多く聞かれるのが
「ペルソナを作ったけれど、イマイチ効果がわからなかった」
という声だ。
ペルソナの活用に失敗する人は、ペルソナの本質を理解できていない可能性が高い。
そこで、今から2つの本質をお伝えするが、これはペルソナマーケティングで成果を出すために最も重要なポイントである。
もしスムーズに理解できなければ何度でも読み返し、肚落ちするまで十分に咀嚼してから、続きを読み進めてほしい。
(1)ペルソナとは実在するユーザーのデータの要約である
まずあなたに吸収してほしいのは、
「ペルソナとは実在するユーザーのデータの要約である」
という考え方だ。
現場でよく見られるペルソナの間違った利用法として、以下が挙げられる。
▼ ペルソナの間違った利用法
- 実在のユーザーがよくわからないから、代わりにペルソナを設定する
- データを元にペルソナを作るのが理想ではあるけれど、データがないので想像でペルソナを設定する
しかし、潜在ニーズの抽出を目的とするペルソナマーケティングにおいては、これらをペルソナとは呼ばない。
ペルソナとはデータを人のカタチに変換したもの
ペルソナとは、本当に実在するユーザーたちのデータを根拠として、そのデータを象徴的な仮想ユーザーという人物像に変換したものだ。
例えば、数字の羅列である数値データがあったとしよう。眺めていても何も発見できないが、グラフに加工すると途端に「そのデータが持つ意味」を理解しやすくなる。
同じように、ユーザーのデータを人間のカタチに加工したものがペルソナだ。
つまり、正しくペルソナを設定したならば、“ペルソナとはユーザーデータそのものである”ともいえるのである。
妄想の偽ペルソナは失敗する
ペルソナとは実在するユーザーのデータの要約であることが理解できれば、ペルソナにおいてよく聞かれる以下の質問の答えもわかるだろう。
Q.「ペルソナって、妄想ではないの?」
もちろん、正しく設定したペルソナは妄想ではない。実在するユーザーのデータから共通項を抽出して設定するのが本物のペルソナだからだ。
正しいプロセスを踏まず、妄想で設定したペルソナ(偽のペルソナ)なら、活用しても失敗に終わるのは目に見えている。
※ペルソナ設定の正しい手順は本記事の後半で解説するので、このまま読み進めてほしい。
(2)ペルソナとはユーザーのストーリーに基づく詳細な描写である
2つめの本質を紹介しよう。
ペルソナはデータの要約であると同時に、ユーザーのストーリーに基づく詳細な描写である。
私たちは、数字の羅列である数値データに感情移入することはできないが、相手が生身の人間となれば話は別だ。
目の前にいる人が、何に悩んでいてどんな望みを持っているのか──、相手の立場になって考えるうちに、相手の気持ちがありありとわかるようになる。
この状況を意図的に作り出すために作るのが、ペルソナなのだ。
ストーリーは正しい描写を導く
ここで重要なポイントがひとつある。ペルソナの詳細を正しく描写するうえで欠かせないのが「ストーリー」である。
ペルソナにおいて重要な考え方を紹介しよう。
Good story has the right details.
つまり、ペルソナの詳細を描くうえでは「ストーリー」に目を向ける必要がある。
どんな生い立ちで、どんな背景があり、出来事同士にはどんなつながりがあって、その人はどんなシチュエーションにいるのか、ユーザー像を「ストーリー」として捉えていくことが、ペルソナ設定には欠かせない。
ストーリーに基づく詳細な描写によって、あなたの想像力を最大化し、深い洞察や新しいひらめきの源泉を作るのが、ペルソナの本質だ。
逆にいえば、ストーリーに基づく詳細な描写まで行き着いていない中途半端なペルソナでは、潜在ニーズを捉えられず失敗の原因となる。
3. ペルソナとターゲットの違いとは
ここまでお読みいただき、あなたの頭の中には
「ペルソナとターゲットは何が違うのか?」
という疑問が浮かんでいるかもしれない。
ペルソナは、ターゲットとはまた別の概念だ。
ターゲットとは
ターゲットとは、ターゲティングというマーケティング手法において設定されるものだ。
ターゲティングとは、どのセグメント(ユーザー層)に買ってもらいたいか(=ターゲット)を絞って、そのターゲットにマーケティング資源を集中させる手法である。
つまり、ターゲットとは「顧客になってほしい特定のセグメント層」と言い換えることができる。
よく「ターゲットは絞れば絞るほど良い」といわれるが、その理由はターゲットを絞るほど資源を集中させられるからである。
ペルソナはターゲットよりもリアルな人物像
一方、ペルソナは前述の通り「商品やサービスの象徴的な仮想ユーザー」だ。
ペルソナを設定する目的は、ユーザーを深く理解することによって、ユーザーの潜在ニーズ・インサイト・本音を捉えることにある。
▼ ターゲットとペルソナの違い
意味 | 設定する目的 | |
---|---|---|
ターゲット | 顧客になってほしい特定のセグメント層 | マーケティング資源を集中させるため |
ペルソナ | 商品やサービスの象徴的な仮想ユーザー | ユーザーを深く理解して潜在ニーズを捉えるため |
どちらもユーザーを表す言葉ではあるが、そもそも設定する目的が大きく異なる。
ターゲットよりもペルソナのほうが、リアルな人物像となる点も、両者の違いだ。
ターゲットとペルソナは共存する
「ターゲットとペルソナのどちらを設定すれば良いのか?」
といえば、ターゲットとペルソナは共存する。
具体的には、以下の手順で両方を設定する。
ターゲティングによって、あるセグメント層をターゲットに設定して狙いを定める
その“ターゲット像”を明らかにするためにペルソナを設定する
つまりペルソナとは、“ターゲット像をリアルな人物像として描いたもの”と言い換えることもできる。
例えば、コンテンツSEOを例に取るなら、「どのキーワードで検索エンジンの上位表示を狙うか(=どのKWで検索するセグメント層を狙うか)」がターゲット設定であり、「そのKWで検索するユーザー像を詳細に描くこと」がペルソナ設定といえる。
▼ コンテンツSEOでの例
ターゲット設定 | どのKWで検索するセグメント層を狙うか |
ペルソナ設定 | そのKWで検索するユーザーは具体的にどんな人物か |
このように、ターゲットとペルソナはどちらか一方だけを設定するものではなく、両方とも設定する必要がある。
4. ペルソナによって達成できる3つの成果
実際にペルソナをマーケティングに取り入れたら、どんなメリットがあるのだろうか。
一言でいえば、企業の純利益が高まる。ペルソナは商品・サービスの価値を高めると同時に、チームの生産性や意思決定の精度にも好影響を与えるからだ。
「なぜ、ペルソナにそんな力があるのか?」といえば、ペルソナは具体的な3つの成果をもたらすためである。
それぞれ詳しく見ていこう。
(1)ユーザーの心に刺さる商品コンセプトやコンテンツを生み出せる
ペルソナがもたらす1つめの成果は「ユーザーの心に刺さる商品コンセプトやコンテンツを生み出せる」ことだ。
あなたがどんな業務にあたっているにせよ、
「ユーザーの心をグッ!とつかむためには、どうすればいいのか?」
という点は、日頃から最も頭を悩まされる命題のひとつだろう。
これを解決できるのが、ペルソナである。なぜならペルソナを使うと、あらゆる物事をペルソナ視点すなわちユーザー視点で思考できるからだ。
いわば、「ユーザーのマインドを、そのまま拝借して思考する」ようなものだ。ユーザーの気持ちがよくわかるから、ユーザーの心に刺さる商品コンセプトや、広告クリエイティブ、コンテンツを、やすやすと生み出せるようになる。
結果、あなたが手がける商品やサービスの価値は向上する。数値的な効果に言い換えれば、利益率が向上するということだ。
さらに、広告やコンテンツの反応率は飛躍的に良くなり、広告販促費の費用対効果が改善していくのはいうまでもない。
(2)ユーザーが感動するほど行き届いたサービスを提供できる
ペルソナがもたらす2つめの成果は「ユーザーが感動するほど行き届いたサービスを提供できる」ことである。
その理由は、ペルソナを通して顧客を深く理解すると、商品の使い勝手や実用性を高める・かゆいところに手が届く顧客対応を実現する、といったことが容易になるからだ。
それも、「Good!(いいね!)」というレベルではなく、「Wonderful!(驚くほど素晴らしい!)」というレベルまで引き上げることができる。
あなたが「ユーザーから“神対応”と絶賛されて、SNSで全国に拡散される」ほど質の高いサービスを提供したいのなら、ペルソナを使うのがおすすめだ。
というのは、ユーザーが感動するレベルまでサービスの質を向上させるためには、“普通の”顧客理解では足りない。“深く正しく徹底した”顧客理解が不可欠だ。
もしペルソナを使わなければ、深く正しく徹底した顧客理解は、ごく一部のセンスのある人・特異な才能のある人の特権だろう。
しかしペルソナを使えば、センスや才能は関係ない。どんな人にも、深く正しく徹底した顧客理解を提供してくれるのが、ペルソナという手法なのだ。
顧客理解に苦手意識のある人でも、ユーザーを感動させることが可能になる。
(3)チームの意思疎通が最高に良くなる
ペルソナがもたらす3つめの成果は「チームの意思疎通が最高に良くなる」ことだ。
ここで着目したいのは「ユーザー」「顧客」「お客様」といった言葉の曖昧さである。
顧客視点の重要性を理解しているチームであったとしても、
「どんな人を顧客と認識しているか」
は、メンバーによってバラバラだ。
バラバラの理解のままに「顧客第一主義」を貫いても、向いている方向性が異なってしまう。
ペルソナは「ユーザー」「顧客」「お客様」といった曖昧な概念に、絶対的にブレない1つの定義を与えてくれる。
チーム一丸となり「ペルソナ」に向けてリソースを集中させれば、生産性が高まることはいうまでもない。
同時に、ペルソナを根拠とした精度の高い意思決定ができるため、不毛な議論の空中戦に陥ることもなくなる。
ペルソナをチームの共通言語とすることで、部署(ときには社内外)を超えたチームワークが実現し、あらゆる業務が合理化されるのだ。
5. ペルソナが本領発揮する4つの分野
ここまでお読みいただき、次に知りたいのは
「では、実際にペルソナはどんなシーンで使うのか?」
という点ではないだろうか。
ペルソナは、実にさまざまなシーンで活用できる。特に、ペルソナの設定が大きな成果を挙げやすい4つの分野を紹介しよう。
(1)商品やサービスの開発・改良
1つめの分野は「商品やサービスの開発・改良」だ。
商品やサービスの開発・改良においては、どんなコンセプトで、どんな機能を搭載し、どのようなUIにするか……といった仕様を決定していく必要がある。その過程において、役立つのがペルソナだ。
例えば、新たな名刺管理サービスを開発するとしよう。どんな機能を搭載すべきだろうか。
ただ漠然と考えていても答えは出ないが、ペルソナがあれば簡単である。
ペルソナは、大量の名刺の保管場所に困っているのか?
名刺をもっと営業に役立てたいのか?
素早く名刺の情報を検索したいのか?
このように、ペルソナのニーズを起点として思考できるからだ。
機能だけでなく、Webサイトやアプリのデザインはどうするか?文字のサイズは?料金は?など、あらゆるプランニングを、ペルソナと一緒に進めていくことができる。
実際、ペルソナは1990年代のMicrosoftやAmazonが、製品やサービスの開発に取り入れたことから世界中に広まっていった経緯がある。
MicrosoftやAmazonの素晴らしい製品やサービスの誕生は、ペルソナなしには実現し得なかっただろう。
(2)広告宣伝・販促クリエイティブの制作
2つめの分野は「広告宣伝・販促クリエイティブの制作」だ。
ペルソナは、「ユーザーに何かを伝えたい」というマーケティングコミュニケーションの分野と相性が良い。
なぜなら、前述の通り“ユーザーの心に刺さる”コミュニケーションを設計するうえで、ペルソナは非常に役立つからだ。
実際に、成功している企業は、クリエイティブ制作の際に必ずペルソナを設定している。
ペルソナをもとに「何をどんな順序でどんな風に伝えれば心に届くか」を綿密に設計すれば、驚異的な反応率を叩き出すクリエイティブの制作も可能だ。
ペルソナの活用によって反応率の大幅な上昇が見込める制作物の例として、以下がある。
▼ ペルソナが役立つ制作物の例
Web広告(リスティング広告、ディスプレイ広告、動画広告、他)
ランディングページ(LP)
メルマガ
郵送DM、折込チラシ
パンフレット、各種ツール
テレビCM、インフォマーシャル、ラジオCM
店頭POP
ところで、“クリエイティブ制作”というと、こんなことを言う人がいる。
「私はデザインセンスがないから、デザイナーからデザイン案があがってきても、何をフィードバックすればいいかわからない」
大きな勘違いをしていることがおわかりだろうか。フィードバックに担当者のデザインセンスはまったく必要ない。
制作物に対するあらゆるフィードバックは、「ユーザーから見てどうか」という視点で行われるべきで、それをロジカルに実現できるのがペルソナの利点である。
(3)オウンドメディアの運営(コンテンツマーケティング)
3つめの分野は「オウンドメディアの運営(コンテンツマーケティング)」だ。
オウンドメディアの運営につまずいている企業にこそ、ペルソナが必要といえる。2020年代は企業のオウンドメディアブームが再燃しているが、競争が激しくなっているのも事実だ。
あなたも、
「自社サイトにアップした記事を、検索上位に上げるためにはどうすれば良いのか?」
と悪戦苦闘しているところかもしれない。
例えば、ライバル企業が検索上位を独占しているキーワードで1位表示を狙いたいとき、どうすれば良いのか。
答えは究極にはひとつしかなく、「ユーザーが本当に求めている“圧倒的に高品質なコンテンツ”を作ること」である。
では、ユーザーが本当に求めているコンテンツを探り当てるためにはどうすれば良いのか?といえば、そこで役立つのがペルソナなのだ。
コンテンツを制作するごとにペルソナを設定すれば、ライバル企業が気付いていないユーザーの本音や隠された潜在ニーズを、あなただけが発見することになる。
その発見をもとに、ユーザーが本当に求めているコンテンツを制作したならば、そのページは検索エンジンから高評価を得て、上位表示されるようになるのだ。
手前味噌で恐縮だが、実際に今あなたにお読みいただいている「バズ部」は、数々のビッグワードでGoogle1位を獲得し続けている。
カラクリを明かせば、「ペルソナなくしてバズ部の成功はない」といっても過言ではないほど、ペルソナを重視しているのがバズ部である。
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(4)ブランディング
4つめの分野は「ブランディング」だ。
ブランディングでは、ユーザーとのあらゆるタッチポイント(顧客接点)において、ユーザーの信頼や愛着の獲得を目指していくことになる。
ブランディングを成功させるためには、一方通行の情報の刷り込みでは何の役にも立たない。「ブランドとの接触を通して、ユーザーに良い体験をしてもらう」ことが不可欠だ。
ユーザーの行動や感情を深く理解し、各タッチポイントでブランドが最高のUX(ユーザー体験)を提供するために、ペルソナはなくてはならない存在である。
加えて、ブランディングの一連の流れには、ここまでに紹介した商品・サービスの開発、広告販促クリエイティブ、コンテンツマーケティングの側面まで、幅広く含まれる。
ブランディング業務の実行においては「ペルソナを使いこなせるか・否か」によって、大きく成果が変わることも珍しくない。
もしあなたが、ブランディングの効果を上げたいのであれば、ペルソナは欠かせない概念といえる。
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6. ペルソナ設定の手順
さて、ここからはいよいよ実践だ。ペルソナ設定の具体的な手順を解説しよう。
事前の注意点として、ペルソナの用途によっては、これから紹介する手順ほど手間をかけないほうが良いこともあるだろう。
そんなときには簡略化しても構わないが、簡略化するにせよ「本来のペルソナ設定手順」を理解していることが大切だ。
まずはStep1〜Step5までを通しで読み進めてほしい。
ステップ1:データを収集する
1つめのステップは「データを収集する」だ。
「うちの顧客層は、こういう人なはず」という思い込みや、「こんな人に買ってもらえたら理想だな」という都合の良い解釈でペルソナを設定すると、大失敗につながる。
そこで、まずはペルソナの根拠として利用できるデータの収集が欠かせない。
▼ 収集するデータの例
- 過去のユーザー調査
- 顧客データ
- お客様アンケート、お客様の声
- コンタクトセンターの問い合わせ履歴
- 営業報告書
- 取引先のプロフィール集
- Q&Aサイトの投稿(Yahoo!知恵袋、教えてgooなど)
- SNSの投稿(Twitter、Instagram、Facebookなど)
- その他
“データが必要”と聞くと即座に、
「うちは小さな会社なので、お金をかけてリサーチなどできない」
と拒否反応を見せる人は多いが、もったいない。
リサーチ会社に依頼して収集したデータだけがデータではない。
例えば、あなたが小さな企業の経営者なら、取引先の担当者たちのプロフィールを一人ずつまとめれば、立派なデータになる。
あるいは、インターネット上には無料で収集できるユーザーデータが転がっている。例えば、TwitterなどのSNSやYahoo!知恵袋などのQ&Aサイトは、ユーザーの生の声を収集するためにうってつけだ。
重要なのは、どんなに小さくて素朴で手作り感あふれるデータでも良いから、「実在するユーザーのデータ」を集めることである。
実在するユーザーのデータをもとにペルソナを作るからこそ、信頼できるペルソナが完成するためだ。
ステップ2:データから共通項を抽出する
2つめのステップは「データから共通項を抽出する」だ。
ユーザーのデータが収集できたら、それらのデータから共通項を抽出する。
ここで押さえたいポイントは、
「ペルソナ設定において重要なのは、平均値を取ることではなく、代表性があること」である。
代表性とは、「ユーザー全体(母集団)に共通する典型的な特徴を兼ね備えているかどうか」と言い換えることができる。
そこで必要なのが、データから共通項を抽出するプロセスだ。共通項を抽出するコツを、身近な例で練習してみよう。
▼ データから共通項を抽出するレッスン
(1)まず、「あなたの友だちグループ」を思い浮かべてほしい。現在でも、過去の学生時代でも構わない。彼ら彼女らの共通項は何だろうか。例えば「みんな明るくてお酒が好きで、ノリがいいけど仲間思いで、いつも新作のゲームにハマっていて……」など、あなたの友だちグループをくくる共通項が見つかるだろう。
(2)次に、あなたの取引先の会社をひとつ、思い浮かべてほしい。仮にA社としよう。A社で働く社員たちにも共通項があるはずだ。例えば「みんなロジカルで頭が切れるのに、どこか体育会系の雰囲気もあって礼儀正しくタフ」といった具合に。これを兼ね備えている社員を見ると、「いかにもA社っぽい」と感じるだろう。
これと同じ作業を「ユーザーたちというグループ」に対して行っていく。具体的には、以下の視点を持って共通項を探ると良いだろう。
▼ 共通項を探るポイント
- 人格的・性格的に共通する特性はあるか?
- 何が好きか?趣味は?
- 興味や関心を持っていることは?
- どんな行動習慣があるか?
- 不安に感じていること・心配していること・悩んでいることは?
- どんな目標や願望を持っているか?
共通項を抽出するうえでデータが足りなければ、ステップ1に戻って追加でデータを収集し、データを補強しながら進めよう。
ステップ3:ペルソナの骨格を作る
3つめのステップは「ペルソナの骨格を作る」だ。
ステップ2で抽出した共通項をもとに、ペルソナの骨格を作っていく。ペルソナの骨格となる要素は、基本的に次の4つだ。
▼ ペルソナの骨格となる要素
- 行動属性(趣味は?休日の過ごし方は?消費傾向は?など)
- パーソナリティ(性格は?価値観は?など)
- 現在抱えている課題
- 将来目指している姿
ステップ2で整理した共通項を、上記の骨格に当てはめて言語化していこう。
もちろん、これ以外にも抽出された共通項があれば、自由に付け加えて構わない。
ステップ4:ペルソナを肉付けする
4つめのステップは「ペルソナを肉付けする」だ。
ペルソナを有効に機能させるためには、「まるで実在する人物のように」ペルソナを仕上げることが重要だ。名前をつけ、写真やイラストなどのビジュアルを持たせることで、より実在の人物らしくなる。
▼ ペルソナシートの例
さらに、必要に応じてこのペルソナのライフヒストリーやストーリーを描いていく。
どんなストーリーを描くべきかは、ペルソナの用途によって異なる。
例えば、商品開発でペルソナを使う場合には、その商品をペルソナが購入するうえで重要なストーリーを描くべきだし、コンテンツマーケティングでペルソナを使うときには、そのコンテンツやテーマに関わるストーリーを描くべきである。
参考までに、以下はバズ部が「コンテンツマーケティングとは?|広告費ゼロで10倍の売上を達成した手法」の記事を作った時に想定したペルソナのストーリーだ。
● ペルソナのストーリーの例
商品力に自信があるし、今のやり方でうまくいってる会社に勤めていて、うまくいっている。
しかし、今のままのやり方で3年後はどうだろうと考えると、「まずいよなぁ」と思っている。そう思う根幹は、現在のマーケティングに対する強い違和感。CMや交通広告、リスティングなどの広告手法を現在やっているが、実 際に、表面的な小手先のテクニックに終始していて、さらに広告費も湯水のように出て行く。まぁ、確かに今は売り上げに なっているが、潜在客をいらいらさせてしまったりネガティブな反応も多々ある状態。
そういう現状を見て、「こんなんが本当にマーケティングなの?もっと潜在客からも感謝されて、しかも今まで以上に売り上げにつながるマーケティングがあるんじゃないか?」と毎日強く思っている。毎日、色々な情報を見て、参考にして、自分が試してみたことは、(テストなので規模の小さい成果だが)非常に高いものが出ている。
例えば、メルマガやDMに、自分が思うユーザーから感謝されるコンテンツを入れてみたりなど、コンテンツマーケ ティングに自分なりに取り組んでみたことがある。売上という結果にはさほど繋がらなかったが、今までに ない反応が返ってきた。
だから、自分の考えが正しいという認識が強烈にある。これを、会社でもチームを作って、もっともっと深めていきたいし、その確信もある。でも、時間的な問題やリソースの問題もあるから、上司や会社に提案して、それが採用されるほどの結果には、自分だけでは持っていけない現状がある。
そのため、これを会社でやろうとするための材料となる情報や実績を探している。「インバウンドマー ケティング」や「SEO」などの情報収集をしている中で、やっぱりコンテンツ・イズ・キングという確信はもっと強くなっている。
だが、これを行うには、全社的な理解と協力体制、仕組みがなければ成果が出ない。さらに、自分自身も、本質的な意味では、まだまだコンテンツというものを分かっていない。今、コンテンツの本質も、テクニックも、成果に繋げるための道筋も、全て探している。そうやって、本物の会社を探している中で、今、たまたま「コンテンツマーケティング」というキーワードで調べて、バズ部に行き着いた。
ステップ5:ペルソナを検証する
5つめのステップは「ペルソナを検証する」だ。
間違いのないペルソナを設定できているか、チェックしよう。
ペルソナを検証するうえで最も効果的なのは、ユーザーをよく知る人に、作成したペルソナがユーザーの共通項をとらえた適切な人物像となっているか、評価してもらう方法だ。
例えば、ユーザーと直接接しているコンタクトセンターのオペレーターや接客スタッフ、営業パーソンたちは、ペルソナの検証を依頼するのにふさわしい人たちである。
あるいは、もし可能であれば、実際のユーザー自身にペルソナを評価してもらうのも良いだろう。
ここで重要なのは、ペルソナが作り手の独りよがりなものになっていないか、客観的な視点でチェックすることである。
ペルソナが、象徴的な仮想ユーザーとなっているか検証し、OKだったらペルソナの完成だ。
7. 【ケース別】完成したペルソナの使い方
完成したペルソナは、実務の現場で活用してこそ生きてくるが、実際にどのように活用したら良いのだろうか。
ここでは、以下の3つのケースに分けて、ペルソナの使い方を解説する。
新商品・新サービス開発での使い方
広告宣伝・販促クリエイティブの制作での使い方
ブランディングでの使い方
(1)商品やサービスの開発・改良での使い方
商品やサービスの開発・改良でペルソナを使う際には、あらゆる意志決定にペルソナを参加させていくことが重要だ。
・チームの共通言語としてペルソナを定着させる
まずはチームの共通言語としてペルソナを定着させるところから始めよう。
もし、社内にペルソナという概念に対する理解が乏しいようであれば、まずはペルソナとは何なのかから浸透させる必要がある。
コアチーム以外のメンバーもペルソナの知識を持っていないと、ペルソナの有効活用は難しい。
「ペルソナとは何なのか」
「なぜペルソナを使うのか」
「ペルソナはどうやって使うのか」
を啓蒙する必要がある。
具体的には、チームメンバー全員に、本記事を読んでもらうと良いだろう。そのうえで完成したペルソナを共有していく。
マーケティング部のみならず、その新商品・新サービスに関わるすべてのメンバーにペルソナを紹介しよう。
・ペルソナをミーティングに参加させる
チームメンバー全員がペルソナについて知ることができたら、それからは常にペルソナをミーティングに参加させていく。
具体的には、ミーティングのテーブルにペルソナが座っているかのように、何をディスカッションするにも、「ペルソナの意見」を取り出していくのだ。
例えば、新サービスを開発するうえで、どんな機能を搭載すべきか決めるミーティングだったとしよう。
チームメンバー全員は、こう思考する。
「ペルソナの●●さんは、どんな機能が欲しいだろうか」
設定したペルソナの情報には、ニーズや行動属性などが含まれているため、チームメンバーはペルソナの期待・反応・行動などを細かく想像し、必要な機能を明確にできる。
これが「ペルソナの意見を取り出す」プロセスだ。
何を決めるにもペルソナの意見をもとに思考を重ね、商品やサービスの開発を進めよう。
(2)広告宣伝・販促クリエイティブの制作での使い方
次に広告宣伝・販促クリエイティブの制作での使い方を紹介しよう。
・オリエンテーションでペルソナを丁寧に共有する
あなたが依頼主として広告などの制作物を作る際は、最初にオリエンテーション(以下オリエン)を実施するはずだ。
オリエンは、広告代理店、制作会社、あるいは社内の制作チームへ、制作物の目的・ターゲット・予算などを伝えるキックオフの場といえる。
ここでペルソナを丁寧に共有することで、アウトプットに圧倒的な差が出る。ぜひ試してほしい。
重要なのは、コピーライター、デザイナー、映像クリエイター、カメラマン──、すべてのスタッフが「同じペルソナ」を共有できるようにすることだ。
「誰に伝えたいのか」さえ明確になれば、各分野のプロたちが自分の持ち場で最大限のパフォーマンスを発揮できるようになる。
結果、イキイキとした、ユーザーと心の通う制作物が生まれやすくなるのだ。
・ペルソナ視点でフィードバックする
制作物が校了するまでには、何度か出し戻しがあり、原稿を校正することになるだろう。ここでも、ペルソナを使う。
間違っても、あなた自身のなんとなくの感覚やセンスでクリエイターにフィードバックしてはいけない。
「ペルソナだったら、この部分は、●●のほうが良いはず」といった具合に、ペルソナ視点で校正することが大切だ。
ペルソナはオリエンで共有しているため、ペルソナを介して修正の意図を伝えれば、クリエイターたちもすぐに納得できる。
余談になるが、クリエイター視点から見ると、クライアントの意図がよくわからない修正指示に繰り返し対応させられることほど、士気の下がることはない。これが結局、アウトプットの質を下げてしまう。
制作の現場には、どんどんペルソナを持ち込んで、円滑かつ的確なコミュニケーションを実現していこう。それが、反応率の高い制作物を作る近道だ。
(3)ブランディングでの使い方
最後に、ブランディングでの使い方を紹介する。
・ペルソナによって顧客像を明確にする
ブランディングを成功させるうえでは、顧客を生身の人間として捉え、その背景にある価値観や大切にしていること、考え方や好みを深く理解することが欠かせない。
そのため、まずはブランド構築の第一歩として、ペルソナを描く必要がある。
ブランディングにおいて描くペルソナは「ブランドに愛着を持ち、根強いファンになってくれる代表的な人物像」と言い換えることができる。
詳しくは「ブランディングとは?押さえておくべき基本と利益率を倍増する実践法」にて解説している。ブランディングの過程でペルソナを作る場合には、まず一読してほしい。
・ペルソナを使ってカスタマージャーニーを設計する
ブランディングにおいては、あらゆるタッチポイント(顧客接点)において、そのブランドらしさを感じさせるUX(ユーザー体験)を届けることが必要になる。
そこで役立つのが、ユーザーがブランドを認知して購入しロイヤル顧客になっていくまでのプロセスを、ロングタームで設計するカスタマージャーニーの手法だ。
具体的には、ペルソナの視点に立ってタッチポイントを洗い出し、各タッチポイントにおいて、最高のユーザー体験は何かを考察して、実行していく。
ペルソナを使えば、「ペルソナはどんなことで感動するのか」という逆算思考によって、最高のユーザー体験を導き出せる。これが強いブランドづくりには欠かせない。
これらのプロセスについて詳細は「カスタマージャーニーとは?本当に機能する作り方を独自テンプレートで解説」にて解説しているので、あわせて参考にしてほしい。
8. ペルソナマーケティングを成功させる2つのコツ
ペルソナマーケティングを成功させるためには、2つのコツがある。
ペルソナはアップデートする
1つめのコツは「ペルソナはアップデートする」ことだ。
ユーザーのデータを収集し、データの整理を経てペルソナが完成すると、「これでユーザー調査が終わった」と思いがちである。
しかし、ペルソナマーケティングを成功させるカギは、ペルソナの完成をユーザー調査の始まりと捉えるところにある。
いったんペルソナが完成してからも、新しく正しいユーザー調査結果が出れば、ペルソナに反映してアップデートしていこう。
年単位で長期利用するペルソナの場合でも、半年に1回はアップデートが必要だ。
常に最新のユーザーデータに基づいたペルソナを利用することが、正しい意思決定をサポートする。
ペルソナから引き出した情報をもとに行動する
2つめのコツは「ペルソナから引き出した情報をもとに行動する」ことだ。
というのは、形式上はペルソナというツールを利用しながらも、ペルソナから引き出した情報を信用しない人がいる。
ペルソナを軽視し、結局のところ自分で好き勝手に考えた案を採用したり、企業にとって都合の良い落としどころに流れたりといった具合だ。
ペルソナを利用する以上は、ペルソナによって得られた情報を重用するという態度が必要だ。口先だけの顧客視点はいらない。
ペルソナから引き出した情報を活用し、実際の行動に落とし込んで初めて、ペルソナの成果が出る。
これこそが、顧客視点のペルソナマーケティングの実践だ。
9. ペルソナを扱ううえでの注意点
ペルソナを扱ううえでは、注意してほしい点が3つある。
間違ったペルソナ設定は百害あって一利なし
1つめの注意点は「間違ったペルソナ設定は百害あって一利なし」だ。
間違ったペルソナ設定とはすなわち、作り手の「妄想」や「都合の良い解釈」によるペルソナといえる。
よくある失敗の例が、「マーケティングコミュニケーションを動かしたい方向性がすでに決まっていて、その方向性とつじつまを合わせるように都合の良いペルソナを設定してしまう」ことだ。
これは、自作自演の自己満足にほかならない。間違ったペルソナ設定は、百害あって一利なしと肝に銘じよう。
ペルソナは作るだけでは不十分
2つめの注意点は「ペルソナは作るだけでは不十分」だ。
ペルソナを作るだけでは無意味とまでは言わない。なぜなら、ペルソナを正しく設定するのであれば、その設定プロセス自体が顧客理解の一助となるからである。
しかしながら、ペルソナを作るだけでは“不十分”であることは確かだ。
「4. ペルソナによって達成できる3つの成果」で紹介したような恩恵を十分に受け取るためには、ペルソナを作った後にペルソナを使わなければならない。
例えば、オウンドメディアを立ち上げるとき、多くのWeb担当者が企画書に「ペルソナ」の項目を作り、ペルソナを書き込む。
しかし、その企画書の承認が出るや否や、ペルソナの存在など忘れてしまう。せっかく最初にペルソナを設定したのに、ペルソナ不在でサイト設計やデザインが進んでいく。
ここで思い出してほしいのは、ペルソナとは、私たちの想像力を刺激し、思考力を最大化させるために活用すべきツールである、ということだ。
ペルソナを活用する労力を惜しめば、成果を挙げることはできない。
大いに想像し、大いに思考しよう。ペルソナがあれば、それが可能になる。
ペルソナはあくまでも仮説である
3つめの注意点は「ペルソナはあくまでも仮説である」だ。
ここまでペルソナの有用性を再三論じてきた。しかしその一方で、ペルソナに依存し過ぎる危険性を認識しておきたい。
どんなに正しいペルソナを設定したとしても、そのペルソナを永久に唯一無二の正解として君臨させることは望ましくない。
なぜなら、ペルソナはあくまでも仮説だからだ。
ペルソナを扱ううえでは、「ペルソナはあくまでも仮説である」ことを忘れない謙虚さと慎重さが欠かせない。
実在のユーザーと見比べたとき、ペルソナに間違いがあったならば、即座に認めてペルソナを修正すべきであるし、場合によってはそのペルソナを廃止して、新たなペルソナを設定する必要がある。
この注意深ささえ失わなければ、ペルソナはあなたの良きパートナーとして、ビジネスを大きく成長させてくれるはずだ。
10. ペルソナで「圧倒的ユーザー主義」を貫こう
ペルソナをあなたが活用することで何が実現できるのかといえば、それは「圧倒的ユーザー主義」だ。
マーケティングのあらゆるシーンから、企業都合の視点を排除し、ペルソナを通した顧客視点を徹底していく。
ユーザー主義、顧客主義を掲げる企業が大多数になっている現在、競うべきは「そのレベル」である。
他を圧倒的に凌駕したユーザー主義を貫きたいのなら、今すぐペルソナの設定に取りかかろう。
ペルソナは、私たちの思考力と想像力の限界を取り払い、誰も気付き得なかった視点を提供してくれる。
さあ、ペルソナによる圧倒的ユーザー主義を始めよう。
11. まとめ
マーケティングにおけるペルソナとは、商品開発やコンテンツマーケティングの際に設定する、象徴的な仮想ユーザーのことだ。
リアルな人物像であるペルソナの立場になって思考したり、感情移入したりすることによって、深い顧客理解が可能になり、潜在ニーズを捉えやすくなる。
まず押さえておきたいペルソナの本質は以下の2つだ。
ペルソナとは実在するユーザーのデータの要約である
ペルソナとはユーザーのストーリーに基づく詳細な描写である
ペルソナによって以下の3つの成果を達成できる。
ユーザーの心に刺さる商品コンセプトやコンテンツを生み出せる
ユーザーが感動するほど行き届いたサービスを提供できる
チームの意思疎通が最高に良くなる
ペルソナが本領発揮する4つの分野は以下の通りだ。
商品やサービスの開発・改良
広告宣伝・販促クリエイティブの制作
オウンドメディアの運営(コンテンツマーケティング)
ブランディング
ペルソナ設定の手順は以下の通りだ。
ステップ1:データを収集する
ステップ2:データから共通項を抽出する
ステップ3:ペルソナの骨格を作る
ステップ4:ペルソナを肉付けする
ステップ5:ペルソナを検証する
ペルソナマーケティングを成功させる2つのコツは、ペルソナを利用して想像し思考すること、およびペルソナから引き出した情報を重用すると決めることだ。
ペルソナを扱ううえでの注意点は3つある。
間違ったペルソナ設定は百害あって一利なし
ペルソナは作るだけでは不十分
ペルソナはあくまでも仮説である
ここまでお読みいただいたあなたなら、ペルソナで「圧倒的ユーザー主義」を実現することだろう。
ペルソナを活用して、より良いコンテンツ・商品・サービスを世の中に届けていただければ本望である。