オウンドメディアを立ち上げたり、運営したりするとき、有益なヒントの宝庫が「事例」である。
先行事例を勉強することで、根源的なマインドセットから斬新な攻略法まで、幅広いアイデアを入手できる。
しかし、多くの人は、手当たり次第に事例を眺めて、時間を浪費している。
インターネット上には、玉石混淆の事例集があふれているので仕方ない面もあるのだが、よい結果を出したいのなら、質のよい情報を取捨選択しなければならない。
本記事では、“血となり肉となり、本当に役立つオウンドメディア事例”を、4つのカテゴリに分けて紹介する。
- 良質なコンテンツマーケティングのお手本
- BtoBのリードジェネレーションが秀逸
- BtoCのリレーションシップ構築が光る
- 採用ブランディングの成功者
ピンポイントで有益な情報を得て、その分、貴重な時間をオウンドメディアづくりに充当してほしい。
目次
1. オウンドメディアの事例を見るときの注意点
冒頭で、
「多くの人は、手当たり次第に事例を眺めて、時間を浪費している」
と述べたのだが、事例紹介に入る前に、事例を見るときの注意点を3つ、お伝えしたい。
- 成功メディアが今やっていることを真似すると失敗する
- ビジョンを持って事例を見ないとブレる
- 同業種だけ見ていても良質なヒントは得られない
1-1. 成功メディアが今やっていることを真似すると失敗する
1つめの注意点は「成功メディアが、今やっていることを真似すると、失敗する」である。
なぜなら、フェーズが違うからだ。
成功メディアのようになりたいと願うとき、私たちがやるべきことは、
「成功メディアが、成功する“前”にやったこと」
なのである。
会社にたとえると、わかりやすいかもしれない。
社員3人・30人・300人…の会社があるとしよう。あなたの会社が社員3人のとき、社員300人の成功企業が、今やっていることを真似しても、うまくいかない。
“社員300人の成功企業が、社員3人の頃にやっていたこと”に、有益なヒントがある。
それは何か?と探る視点で、事例を見てほしい。
1-2. ビジョンを持って事例を見ないとブレる
2つめの注意点は「ビジョンを持って事例を見ないとブレる」である。
自社のオウンドメディアをどうしていきたいか、ビジョンがない状態で数多くの事例に触れることは、ときに有害でもある。
「この事例はいいな、取り入れたい」
「最近はこういうパターンが成功するのか、これも取り入れよう」
という具合に、たまたま目の前に現れた事例情報に左右されてしまう。
これだと、当たるも当たらないも運次第の占いと一緒で、戦略の検証や再現ができない。
数多くの事例に触れる前に、ある程度のビジョンを固め、ビジョンに照らして必要な情報を脳が取捨できる状態を作っておこう。
※ビジョンの固め方は、「【オウンドメディアの作り方】成功に不可欠なポイントと実践の流れ」が参考になる。
1-3. 同業種だけ見ていても良質なヒントは得られない
3つめの注意点は「同業種だけ見ていても良質なヒントは得られない」である。
たとえば、
「SaaSのオウンドメディアを立ち上げたいから、SaaSの事例をチェックしよう」
……というのは、もったいない見方である。
なぜなら、新しいアイデアは、掛け合わせによって生まれるからだ。
まして、オウンドメディアの重要成功要因は、業種を問わず、再現性が高い。
たとえば、いまお読みいただいている「バズ部」の骨子を「美容サイト」に転用しても、成功の再現性は高い。
ただし、表面に見えるモノではなく、骨子をトレースすることが肝心だ。骨子を見極める視点で、事例をチェックしていこう。
2. オウンドメディア事例(1)良質なコンテンツマーケティングのお手本
ここからは、オウンドメディアの事例を見ていこう。
まずは、文句なしに「良質なコンテンツマーケティングのお手本」といえる、鉄板の2メディアを紹介する。
2-1. 北欧、暮らしの道具店
出典:北欧、暮らしの道具店
メディア名 |
北欧、暮らしの道具店 |
URL |
|
運営会社 |
株式会社クラシコム |
推定流入キーワード |
|
成功要因 |
|
『北欧、暮らしの道具店』は、オウンドメディア事例として、日本で最も取り上げられるサイトといっても過言ではない。
[北欧][食器][雑貨]などのキーワード流入が想定され、「ECサイトのメディア化」の成功事例として注目された。
模倣する者が増え、“『北欧、暮らしの道具店』ふう” のECサイトが量産された時期があったほどだ。
しかし、先にも述べたとおり、私たちが参考にすべきことは、「彼ら彼女らが、成功していくときに何をしていたのか?」と「(目に見える表面ではなく)骨子」である。その視点で、詳しく見ていこう。
作り手のマインド
『北欧、暮らしの道具店』が成功する前、何を考えていたのか。代表の青木耕平氏がインタビューで興味深い話をしている。
――年商1億円を突破してまだまだ伸びそうな状況がみえていても、青木さんとしては幸せになれなかったと。
青木:正直、全然楽しくなかったですね。その時、なぜこんなにも事業が苦しいのだろうとあらためて考えると、通販というのは売上を急速に伸ばすためにマーケティングコストがかかるんですね。売上の20%を投じるのがセオリーだと言われていましたが、それでは利益が出せず話にならない。PLを分析すると、結局コスト高の大きな要因は「広告宣伝費」。売上の15%を占めていて、これを抑えれば収益が上がる。そこで広告について見直したんです。我々のサイト自身が集客力をつければ、広告料を払う側から広告料を取れる側に立てるのではないかと。そこで広告に費やしていたお金を、お客様を集めるためのコンテンツをつくることに力を注ごうと大きくシフトしたのです。
上記は2010年頃の話であり、コンテンツマーケティングの概念は、まだほとんど知られていない。
「コンテンツマーケティングをやろう!オウンドメディアをやろう!」というマインドではなく、
〈我々のサイト自身が集客力をつければ、広告料を払う側から広告料を取れる側に立てるのではないか?〉
という発想からスタートしていることは、私たちのマインドセットにも有益な視点だ。
「料金をいただけるほどのコンテンツを提供しているか?」
と自問自答することで、『北欧、暮らしの道具店』のマインドを真似しよう。
ロールモデルは『ほぼ日』
「お客様を集めるためのコンテンツをつくることに力を注ごう」とシフトし、具体的にどんなコンテンツを目指したのだろうか。
ロールモデルは『ほぼ日刊イトイ新聞』だったという。また別のインタビューだが、青木氏が『ほぼ日』について、示唆に富んだ話をしている。
人気の秘密について考えました。見ていると有名人がたくさん出ている。でも有名人の名前で検索してもその記事が上位に上がってくることはほとんどなく、SEOもあまり気にしていないようでした。なんて朴訥(ぼくとつ)とした運営なんだと。驚いたのは、数年前に『ほぼ日』が採用をかけるにあたって、売上を公開したのを目にした時。当時で約20億。別のメディアのインタビュー記事では1日140万PVほどのアクセスがあることも知りました。コンバージョン率が高いとは思えない立てつけの中で、SEOも気にしていないように見えるし、広告もやっていないように見える。集客経路も乏しいのになぜこんなに…と。
(中略)
出た結論としては、要は『ほぼ日』は、山の中の美味しい蕎麦屋なんです。「あそこの蕎麦屋うまいらしいよ」という口コミだけで行列ができる店。なぜそれが実現できているのか。答えはひとつしかなくて、「面白いから」人がやってくる。買う買わない関係なく、時間があるから立ち寄っているんです。更新回数も多く、あるカテゴリーのお客様に対して、常に信頼を裏切らない面白いコンテンツが用意されている。その信頼感が異常な集客につながっているんだと。
出典:valuepress
もしあなたが、すでにコンテンツマーケティングに本気で取り組んでいるのなら、上記の文章を読んで、心が震えたのではないだろうか。
本質を突いており、コンテンツマーケティングに携わる限り、大切にしたい概念である。
メディアのトンマナ
ユーザーからは、『北欧、暮らしの道具店』の世界観が好き、という声をよく聞く。
店長の佐藤友子氏(代表の青木氏の実妹)は、『暮らしの手帖』にインスパイアされているという。
『暮らしの手帖』の編集長だった花森安治氏の「実用文十訓」を紹介しよう。
▼ 実用文十訓
(1)やさしい言葉で書く。
(2)外来語を避ける。
(3)目に見えるように表現する。
(4)短く書く。
(5)余韻を残す。
(6)大事なことは繰り返す。
(7)頭でなく、心に訴える。
(8)説得しようとしない(理詰めで話をすすめない)。
(9)自己満足をしない。
(10)一人のために書く。
出典:クラシコム
ユーザーに寄り添ったコンテンツをライティングするうえで、身に沁みる項が並ぶ。
『北欧、暮らしの道具店』は、『ほぼ日』や『暮らしの手帖』のように、先人たちが創った上質な作品に数多く触れてきた素養が作り手のベースにある、という点にも着目したい。
だから、センスが抜群によいのだ。
インスパイアされた作品にリスペクトを持って、そのエッセンスを抽出し、自分たち流に取り入れている。このあり方こそ、私たちが学ぶべき事柄かもしれない。
オウンドメディアの持続性
「オウンドメディアを立ち上げたが、更新が続かない」という悩む企業は多い。
10年以上のコンテンツづくりの積み重ねで、今では圧倒的なストックを誇る『北欧、暮らしの道具店』は、どんなスタンスで取り組んできたのか。
青木氏は、以下のとおり語っている。
インターネット上のコンテンツというのは、映画や小説と違って、コンテンツがコンテンツとして独立して評価されるものではないと思うんですね。読者が共有している文脈感を裏切られなければニーズは満たせる。要はコミュニケーションのためのコンテンツで、自分たちの実力に見合わないクオリティを求めて疲弊するよりは、自分たちが継続できるレベルのものを頻度高く提供しようと。家族や友人との会話も、毎日たわいもないことを言い合うのが楽しいじゃないですか。それと同じで、コンテンツを通じて世間を驚かすのではなく、コンテンツを通じてお客様と絶え間なく接点を作り、心地いいと思ってもらおうと。お客様と共感できて、読んでいて疲れたり不安になったりしないコンテンツを、お客様が読みたい時に読みたいだけ用意しようと。
オウンドメディアは、継続してこそ資産価値が高まっていく。「長く続けること」を見据えて、自分たちの運営スタンスを、考えてみてほしい。
『北欧、暮らしの道具店』は、オウンドメディア立ち上げから、20年以上経た2022年8月5日、運営会社クラシコムが東証グロース市場に上場を果たした。
2-2. サイボウズ式
出典:サイボウズ式
メディア名 |
サイボウズ式 |
URL |
|
運営会社 |
サイボウズ株式会社 |
推定流入キーワード |
|
成功要因 |
|
サイボウズは、東京に本社を置くソフトウェア開発会社だが、「ソフトウェア会社のオウンドメディア」
と想像して浮かぶモノと『サイボウズ式』は、まったく異なる。
『サイボウズ式』の洗練度は、企業のオウンドメディアというより、たとえば『新R25』のようなメディアと肩を並べる。
メディアとしての価値観の一貫性
新聞・雑誌といったメディアは、それぞれの主義主張があり、その“メディアらしさ”が色濃く出ている。
『サイボウズ式』も同じように、根底に流れる価値観に一貫性があり、“サイボウズらしさ”があふれている。
一貫した価値観でつむぎ出されるコンテンツは、強い共感を呼びやすい。
たとえば、「特集・連載一覧」をクリックすると、以下のカテゴリタイトルが並ぶ。
● ひとりじゃ、そりゃしんどいわ
● テレワークを、家族のために。
● 20代、人事と向き合う。
● 多様性、なんで避けてしまうんだろう?
● 仕事ってもっと楽に考えてよかったんだ
● そのがんばりは、何のため?
● どうする?在宅勤務
● これからのマネジャーについて、話そう。
『サイボウズ式』には、ソフトウェア会社にありそうな、
「ツール導入で業務効率化するノウハウ10選!」
といった記事は見当たらない。
代わりに、ユーザー自身が持つ価値観や悩みと共鳴し、純粋に読みたいと思うトピックが取り上げられている。
クレジット表記ありのハイクオリティな作り込み
各コンテンツのレベルの高さにも、注目したい。自社企画のインタビューや、オリジナルマンガなど、時間をかけて作り込まれた記事ばかりだ。
各記事の最後には、
「文:○○/編集:○○/撮影:○○」
「企画/構成:○○、イラスト:○○」
といった具合に、クレジット表記がされている。
多くの企業オウンドメディアが、素材サイトからダウンロードした写真を使い、初心者ライターがあり合わせの素材で文章をまとめる時代に、異様なハイクオリティが異彩を放つ。
マーケティング部と切り離した社内体制
なぜ、『サイボウズ式』は、このようなハイクオリティなメディアづくりに成功したのか。
そのヒントは、経営陣による組織マネジメントにありそうだ。
『サイボウズ式』の藤村能光編集長は、インタビューで以下のとおり話している。
――Webマーケティングでは目標から逆算して施策計画を立てるというのが基本だと思いますが、そういうことはしないのですか?
藤村:していません。理由は、私たちの部署の変遷にあります。
サイボウズ式編集部がある現在の「コーポレートブランディング部」は、「マーケティングコミュニケーション部」という部署からわかれて立ち上がりました。マーケティングコミュニケーション部では、クラウドサービスのお試し数を伸ばすことを目的に、製品のプロモーションをしていました。認知を得た後のお客様に対してサービスの試用をしてもらうことが目的であれば、逆算で施策を立てることも有益だと思います。
しかし、サイボウズとして情報システム部門などの顕在層へ向けた製品プロモーションだけではなく、企業以外のコミュニティを含めた新しいお客様とのつながりが必要ということで、コーポレートブランディング部が新設されました。製品の試用を促すマーケター以外に、広報としてのコミュニケーションを担当する仕事ができたわけです。
こうした社内体制の変化もあり、「やるべきこと」と「やらないこと」を決めてメディアを続けることができたので、徐々に多くの読者へ支持されるようになったんだと思います。
その結果として、成果が出たというのが正直なところです。
『サイボウズ式』を運営しているチーム(コーポレートブランディング部)は、マーケティングと切り離されており、顧客獲得など売上の責任を負っていない点に注目したい。
自社のオウンドメディアで担当者をアサインする際に、参考になる。
現状、オウンドメディアがうまくいっていないなら、社内体制に問題があるのかもしれない、と考えてみよう。
3. オウンドメディア事例(2)BtoBのリードジェネレーションが秀逸
先にご紹介した2つの事例は、
「オウンドメディアの理想型」
ともいうべき、ピカピカの模範事例といえる。
ここからは、もう少しビジネス収益化に近い事例も、見ていこう。
まずはBtoBのリードジェネレーションが秀逸な事例である。
出典:LISKUL
メディア名 |
LISKUL |
URL |
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運営会社 |
SO Technologies株式会社 |
推定流入キーワード |
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成功要因 |
|
Webマーケティングの「より実践的なコンテンツ」
LISKULは以下の理念を掲げ、2014年から現在まで、理念に基づいて行動し続けてきたオウンドメディアである。
LISKULは、中小・ベンチャー企業で働くWebマーケターに「より実践的なコンテンツ」を提供して支援する、Webマーケティングメディアです。
世のWebマーケティングに携わる人たちの、課題や悩みに寄り添ったメディアであり続けることを誓います。
出典:LISKUL
実際、LISKULに掲載されるコンテンツの濃度・深さは際立っており、多くのマーケターの実務現場で役立ってきた。
明確なCTAとマネタイズ
一方、LISKULは、明確なCTA(Call To Action:行動喚起)をページ内に設置していることが特徴的である。
▼ オーバーレイでコンバージョンリンクを設定している例
オウンドメディア運営者のなかには、
「広告やマネタイズはしてはいけない。Googleの評価が下がる」
と誤解している人がいる。
しかし、Googleの公式文書である検索品質評価ガイドラインには、
「広告はUXに貢献することがある」
と書いてある。以下は引用だ。
Ads may contribute to a good user experience. Advertisements/Monetization (Ads) is content and/or links that are displayed for the purpose of monetizing (making money from) the page. The presence or absence of Ads is not by itself a reason for a High or Low quality rating. Without advertising and monetization, some webpages could not exist because it costs money to maintain a website and create high quality content.
(訳)広告は、よいユーザーエクスペリエンスに貢献することがあります。
広告・マネタイズ(Ads)とは、ページをマネタイズする(収益を得る)目的で表示されるコンテンツやリンクのことです。
広告の有無は、それだけで「高品質」「低品質」の評価をする理由にはなりません。
広告やマネタイズがなければ、一部のWebページは存続できなくなるでしょう。Webサイトを維持し、質の高いコンテンツを作成するためには、コストがかかるためです。
出典:検索品質評価ガイドライン
重要なのは「ユーザーにとって役立つかどうか?」であるし、Googleがいうように適切な広告やマネタイズは、オウンドメディアの維持にも不可欠である。
記事広告サービス「RentaLISKUL」
前述の『北欧、暮らしの道具店』が立ち上がる前、
〈サイト自身が集客力をつければ、広告料を払う側から広告料を取れる側に立てるのではないか?〉
という着想があったことを紹介した。
LISKULは実際にそれをやってのけたオウンドメディアであり、「RentaLISKUL」という記事広告サービスを展開している。
BtoB企業が、自社サービスに関する商品案内やホワイトペーパーなどの資料を、LISKUL内に掲載できるサービスだ。
興味があれば、詳細は「RentaLISKUL」に掲載されているので、覗いてみてほしい。
3-2. マクロミル
出典:集計のキホン
メディア名 |
集計のキホン |
URL |
|
運営会社 |
株式会社マクロミル |
推定流入キーワード |
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成功要因 |
|
リサーチ会社のマクロミルは、「QuickCross」という無料集計ソフトを提供している。
『集計のキホン』は、その名のとおり集計の基礎コラムと、QuickCrossの紹介を行っているオウンドメディアである。
基本のキを専門家が正しく教えるコンテンツ
ネット上に、初心者向け情報は、あふれている。
しかし、
「真の専門家が、超がつくほどの初心者に向けて、難しいことを簡単に、かつ正確に解説してくれるコンテンツ」
はめったにない。
それが行われているのが、『集計のキホン』だ。
出典:集計のキホン
実務で必要な集計の基礎知識が、無駄な装飾やカジュアルさなしに、淡々と解説されている。
この情報が、ダイレクトに役立つユーザーの姿が想像できる、良いコンテンツである。
無料集計ソフトの使い方がコンテンツの中にある
『集計のキホン』は、「QuickCross」の既存ユーザーに使い方を教える役割も担っているので、コンテンツの中に、「QuickCross」の使い方も出てくる。
「便利です!ダウンロードはこちら!」
といわれるよりも、よほどダウンロードしたくなる。
ダウンロード後のベネフィット(自分が得られる得)が、明確にイメージできるからだ。
もし、自社のオウンドメディアでコンバージョン低迷に悩んでいるとしたら、『集計のキホン』の構造をトレースできないか、検討してみてほしい。
4. オウンドメディア事例(3)BtoCのリレーションシップ構築が光る
続いて、BtoCのオウンドメディア事例を見ていこう。
4-1. THE BAKE MAGAZINE
メディア名 |
THE BAKE MAGAZINE |
URL |
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運営会社 |
株式会社BAKE |
推定流入キーワード |
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成功要因 |
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運営会社のBAKEは、「お菓子にもっと新しい価値を」をミッションとする菓子メーカーである。
チーズタルト「BAKE CHEESE TART」が大ヒットし、“お菓子のスタートアップ”としても注目されている企業だ。
代表の山田純平氏は、2013年に原宿のアパートで1人で創業したあと、ITスタートアップの考え方で洋菓子ビジネスにイノベーションを起こし、現在の従業員数は1,195名(2022年3月末)である(参考:BAKE)。
一貫した世界観によるブランディング
そんなBAKEのオウンドメディアが『THE BAKE MAGAZINE』だが、ブランドのマネジメントが徹底している。
とくに「世界観」を大切に扱うのは、近年(2020年代〜)に成長したD2Cブランドたちと同じ特徴といえる。
オウンドメディアといっても、「素人の手作り感」は一切排除され、写真からロゴの扱い、フォントの選定まで、クリエイターのプロの仕事を感じさせる。
「BAKEの世界観が好き」というユーザーを、裏切らない。
「ストーリー」を語り自らを深く開示する
『THE BAKE MAGAZINE』のコンテンツのキーワードは「ストーリー」である。
BAKEは、自らのブランド、商品、かかわる人間、背景にある思いを、オウンドメディアでストーリーとして語ることが、これ以上ない高い付加価値となることを知っている。
たとえば、
「なぜ『やまえ栗』は極上なのか?村の誇りをかけた、復活への挑戦 」
では、期間限定商品に使用した『やまえ栗』の生産者のストーリーが、インタビューをもとに語られている。
『やまえ栗』という字面だけでなく、その裏側にあるストーリー(苦労や、工夫・手間、人の思い)を知ることで、私たちは感動し、ぜひ食べてみたいと思う。
D2Cブランドを運営している方や、ものづくりに携わっている方、商品・サービスを作っている方には、ぜひ参考にしてほしい事例である。
4-2. ソレドコ
出典:ソレドコ
メディア名 |
ソレドコ |
URL |
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運営会社 |
楽天株式会社 |
推定流入キーワード |
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成功要因 |
|
『ソレドコ』は楽天のオウンドメディアだが、コンセプト設定やその狙いどころが、玄人さを感じさせるので紹介したい。
「沼」のコンセプト
オウンドメディアが量産されるようになり、似たようなサイトが増えている。オウンドメディアにも差別化が必要な時代といえるだろう。
そんななかにあって、ソレドコは「沼」というユニークなコンセプトを掲げている。
何かにハマるって面白い!何かにハマってる人も面白い!
ソレドコでは、沼にはまるかのように、何かに夢中になっている人たちの、沼を集めました。
その道に詳しい沼人たちの語りは、あなたの「沼探し」に繋がるかもしれません。
出典:ソレドコ
この説明文を読んだだけで、
「なんだかおもしろそうなメディアだな」
と感じた人もいるだろう。
TV番組『マツコの知らない世界』のWebサイト版、といったイメージだろうか。
ちなみに、上記説明文の下に、
〈ソレドコは、楽天市場と株式会社はてな編集部がお届けしています〉
の一文もある。
いい意味で、そこはかとなく漂う玄人感は、はてな編集部が入っているからかもしれない。
ニッチな検索ニーズを取りに行く
「沼」のコンセプトの有効性は、ただ読者にとっておもしろそう、というだけではない。
マニアックでニッチな検索ニーズを取りにいく、ロングテールSEOとの相性が抜群である。
たとえば、
「調味料マニアおすすめの「めんつゆ」17選。万能なめんつゆでそうめん・そば・うどんをもっとおいしく」
の記事であれば、17品のマニアックなめんつゆ商品と、その周辺ワードのキーワードからトラフィックを獲得できる。
このように、読者にとって有益で、かつSEO戦略としても戦いやすいメディアコンセプトを、クリエイティブに開発することは、これからのオウンドメディアの勝敗を分けることになるだろう。
※ロングテールSEOについては「ロングテールSEOとは?2022年現在のメリット・デメリットと重要点」も参考にしていただければと思う。
5. オウンドメディア事例(4)採用ブランディングの成功者
最後に紹介するのは、採用向けのオウンドメディア事例だ。
5-1. メルカン
出典:mercan
メディア名 |
mercan(メルカン) |
URL |
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運営会社 |
株式会社メルカリ |
推定流入キーワード |
|
成功要因 |
|
メルカリは、 提供するサービスはもちろん、人事面でも多くのイノベーションを起こしてきたことが知られている。
現在のメルカリは、
〈今、メルカリグループはスタートアップから「世界に通用する企業」へと変化する挑戦の真っ只中にいます〉
といい、多様なバックグラウンドを持つメンバーの採用を進めていることがうかがえる。
そのための手段として、メルカリはオウンドメディアを見いだした。
参考:メルカリ
表示言語UIが切り替え可能
メルカンは、表示言語UIが切り替えられるようになっている。
出典:mercan
日本語以外の言語でも、日本語と同じようにメッセージを伝えられることは、オウンドメディアならではの強みといえる。
メルカリの中がよくわかる日記のようなコンテンツ
メルカンは、インタビューなど企画モノの骨太記事も多い一方で、最もボリュームがあるのは「メルカリな日々」である。
社内で起きた日々のできごとを気軽なテイストで綴る、日記のようなコンテンツだ。
読み手にとっては、他者の日常ブログを読んでいるときのような、おもしろさがある。
▼ 例:メルコイン1周年をお祝いした日の投稿
出典:mercan
メルカンの愛読者が増えれば、将来的な求職者・転職者(潜在層)にも、リーチすることになる。
メルカリは、メルカンを媒介として、潜在層と、ゆるやかに長くつながり続けているのだ。
短期的な採用だけでなく、中長期的な視点で見たとき、それは強力な人材獲得力としてはたらくだろう。
自社でも「採用サイト」ではなく、「採用オウンドメディア」を運営したいと検討中であれば、メルカリのやり方が参考になるはずだ。
6. まとめ
本記事では、以下のオウンドメディア事例を紹介した。
● 北欧、暮らしの道具店
● サイボウズ式
● LISKUL
● 集計のキホン
● THE BAKE MAGAZINE
● ソレドコ
● メルカン
ただ漠然と事例を眺めても、「ふーん」で終わってしまうが、本記事をお読みいただいた方は、“実務に持ち帰れるモノ”を見つけていただいたことと思う。
さらに事例研究を深めたい方は、続けて「コンテンツマーケティング成功事例集」に進んでほしい。
上記は、私たちバズ部が関わったオウンドメディアの事例なので、リアルな数値や成果についても、確認できる。
SEOをより深く理解したい方へ。バズ部のノウハウを全て詰め込みました。