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11/27水19:00〜20:00
「成功するマーケティングのアイデアが欲しい!」
と日々素晴らしいアイデアやインスピレーションを求めているマーケターの方は多いのではないだろうか。
良いアイデアは、ゼロから生み出すものではない。過去の事例を知ることが一つの重要なポイントだ。
世界の素晴らしいアイデアをアレンジする方が圧倒的に効率がよいからである。
そこでニューヨーク大学シリーズ第2弾のこの記事では、講義の中で紹介された「新しいアイデアでマーケティングに成功した海外の事例」を紹介したい。
そのまま活用できるとは限らないが、着想のヒントになるはずだ。ぜひ参考にしてほしい。
目次
見込み客は、どんな時にあなたの商品・サービスを思い起こすのだろうか。
見込み客の行動の道筋を辿ってみよう。
もしかしたら、これまで気がつかなかったコンバージョンに至りやすい「場所」や「気分」があるかもしれない。
[出典]Casino di Venezia: roulette luggage belt
こちらはイタリアのヴェネツィア市が仕掛けたアイデアだ。
観光客をもっとカジノに引き込みたいという目的で、空港の手荷物受取場所をカジノのルーレットに変えてしまったのだ。
手荷物受取場所は、旅行が現実味を帯びてワクワクし始める場所であり、また自分の荷物が来るのを「待つ」というストレスを感じる時間でもある。観光客の心を一気に鷲掴みにするこの施策は、見込み客の一連の行動をよく観察することによって着想を得た事例だ。
このアイデアは、「これからヴェネツィアに行く」というまさにターゲット層に対して、荷物受け取り待ちという15分程度の空き時間のアテンションを集めることに成功し、カジノへの訪問を+60%も押し上げた。
イギリスの大手スーパーマーケットであるテスコ社が、オンラインスーパーの利用客を増やそうと仕掛けたユニークなマーケティング。
韓国ソウルの地下鉄の駅構内の壁一面に、バーチャル商品棚を設置した。
実際には商品棚のような巨大ポスターが貼られており、商品ごとに付いているQRコードをスキャンすることでその場でオンライン購入できるというものだ。
・電車の待ち時間に人々のアテンションを獲得できること
・帰宅時のお腹が空いている時間帯を狙えること
などで需要を伸ばし、オンラインスーパーの売り上げが130%増えた例だ。
特にブログやSNSなどを運営している企業は、どんな内容を発信していくべきか悩むことが多いだろう。
その場合は、まずは見込み客が関心のある話題・ニュースを常にチェックしよう。
SNSで拡散を狙うには、世間の話題をタイミングよく発信する方法が一つある。
さらにその際メタファーを使うとそのパワーは増す。
なぜなら、人間は常に「物事を理解したい」と考えているからだ。
「ああ、そういうことか」と理解した瞬間、人々のアテンションと共感を得ることができる。
世間の話題をタイムリーにメタファーを使って発信した例をいくつか紹介しよう。
アメリカで絶大な人気を誇るスーパーボウル(アメフト決勝戦)の試合中にオレオの宣伝チームがつぶやいた内容だ。
スーパーボウルの試合中に突然の停電が発生した際、待機していたオレオのSNSチームはすぐに対応し、
「停電? 大丈夫さ。暗闇でもダンクする(オレオをミルクに浸す)ことはできる」
と、バスケ用語とビスケット用語をかけた絶妙なツイートを披露した。
スーパーボウルでCMを流すには30秒で6億円ほどかかると言われる中、広告費ゼロで大きな話題をかっさらい、リツイート数は15,000近く、いいねの合計数は20,000件を上回った。
“Happy”の世界的ヒットでグラミー賞を受賞した歌手、ファレル・ウィリアムスがグラミー賞の舞台に立った際、ファーストフードメーカーARBY’sが「おい、@ファレル、私たちの帽子を返してくれないかい?#GRAMMY」とつぶやいた。
ブランドロゴがその時ファレルが被っていた帽子にそっくりだったため、それを茶化してつぶやいたものだ。メタファーで嫌味のないユーモアを表現している。
そのツイートは2億ソーシャルインプレッションという数字をたたき出し、合計83,000を超えるリツートや13万を超えるメンションなど社会現象となった。
その後このファレルが被った帽子をeBayで4.4万ドルで購入するなど、ARBY’sはその後のストーリーまで用意。その後もフォロワーを増やし続けた。
1987年に世界の株式を大暴落に陥れたブラックマンデーから立ち直るため、強さの象徴としてニューヨークのウォールストリートに設置されたのが巨大な雄牛の銅像「チャージング・ブル」だ。
そして2017年3月8日の国際女性デーの前日に、そのチャージング・ブルに相対する位置に「恐れを知らない少女(Fearless Girl)」像が突如立てられ、話題を呼んだ。
実はこの少女像を設置したのは、ダイバーシティ問題に力を入れる「ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ」という資産運用会社だ。
同社は、経営層に女性が多い企業の方がビジネスに良い影響を与えることを認識しており、企業の役員会女性比率を上げるなど「女性の活躍」を象徴するために少女像を設置した。
この像は当初1週間限定で建てたものだが、それが予想以上の反響を呼び、撤去しないことを求める声が集まり、結局残されることとなった。
その後3日間の同社の平均取引高は+384%と大幅に増え、ブランドイメージ戦略の効果を伝えるモデルケースとなった。
あなたの商品・サービスは消費者にとってイメージしやすいものだろうか?
食品や消費材などはどんなものかイメージしやすいものが多いが、例えば、弁護士や税理士などのプロフェッショナルサービス、不動産購入、セキュリティー関連などは一見してわかりにくいものと言える。商品やサービス内容がわかりにくいと必然的に購入のハードルが高くなる。
その場合は、見込み客がどんなことに対して疑問・悩みを持っているのか、その疑問に対して最も分かりやすく教えるにはどうすべきか考えてみよう。
ここで、サービスを新しい視点で説明することで成果を出した事例を紹介しよう。
こちらはITセキュリティサービスのVircom社が出したeBookの事例。
内容が「スパムから身を守る方法」ではなく、「なぜスパマーはスパムをするのか」というスパマー視点で書かれたものだった。
Vircom社はこのeBookを書き上げるために実際にスパマーに接触し、
・どうやってスパマーはお金を稼いでいるのか
・どうやってスパマーはメールアドレスを獲得しているのか
などといった顧客が常に疑問に思っていたことに明快に答え、顧客に自ら対策してもらうヒントを与えた。
なぜセキュリティー対策をしなければならないのか、本質的な内容を顧客に理解してもらうことで購買につながった例だ。
eBookはすぐに2,200回ダウンロードされ、10万ドルの売上につながった。
※現在は配信していない。
これはバーチャルエージェントの会社であるIntelliResponse社が、自分たちのビジネスについてインフォグラフィックスにまとめたものだ。
バーチャルエージェントとは、チャットボットのようなAI技術を使ってビジネスの拡大をサポートする会社。新しい分野でもあるので難しく見えてしまっていたサービス内容をより多くの人々に理解してもらいたいと考え、インフォグラフィックスで表現した。
これをSlideshare(Linked-Inが運営するスライド共有プラットフォーム)で共有したところ、以下のような成果が上がった。
・2年で+400%のサイトトラフィック増
・1年で+100%のリードジェネレーション
・主要キーワードでグーグル検索でトップ10入り
・+1,000%のソーシャルメディアフォロワー獲得
最後に、特にマーケターにぜひ知っておいてほしいマーケティングリーダー的な企業を紹介しよう。アメリカでマーケティングを語る時によく出てくる代表的な企業だ。
前回のニューヨーク大学シリーズ第1回目で紹介した内容と一部重複するが、改めて紹介させてほしい。
1987年にエナジードリンクのメーカーとして市場に現れたレッドブルは、その商品を前面に出さないコンテンツ戦略が成功している企業だ。
ユーザー層であるアクティブ・スポーツ好きな若者をターゲットに、それにかかわる情報を発信し続けることで、ローヤルカスタマーを抱える徹底したブランディング戦略で成功している事例として、世界中で取り上げられている。
レッドブルのメディアサイトを見ればわかるが、記事、動画、LP、イベントなどのコンテンツにはレッドブルの宣伝がほとんどない。
コンテンツでフォーカスされているのは商品ではなく、アスリートの姿だったり、時には他社のスポーツ商品だったりする。
自分たちの商品PRするのではなく、あくまでターゲット層が本当にほしい情報を発信することで、信頼を獲得しアクティブ・スポーツ分野で大きな影響力を持っているのだ。
(2019年1月現在、Facebookフォロワー数約4,900万人、Youtubeチャンネル登録者数約812万人)
ユーザー中心のコンテンツはどう作っていけばいいか悩んでいる方はぜひ参考にしてほしい。
ターゲットである質の高いビジネスマン・ビジネスウーマンを取り込むため、メディアサイトやSNSでコンテンツを発信し、見込み客を育てることに成功したアメリカンエキスプレス。
Facebookは約790万フォロワー、Twitterは約88万、Instagramでは約32万のフォロワーを抱え、ビジネスに関する最先端の情報を発信している。
影響力のある思想家や起業家の話が聞けるだけでなく、対話に参加し質問し繋がることができる、まさに「フォーラム」としての役割を担っている。
一見、自社製品とは全く関係のないコンテンツを発信しているように思えるが、見込み客が興味関心を持つコンテンツを純粋に発信することで、徐々に信頼を勝ち取り長期的な関係性を築き上げているのだ。今や、「ビジネスマンがウォッチすべきメディア」という立ち位置になっている。
メディアサイトでもSNSでも、ターゲット層に向けたコンテンツにしっかり統一されているので、ぜひ参考にしてほしい。
スポーツ選手を起用したスタイリッシュな動画や広告など、スポーツ好きな人々の心をインスパイアするようなコンテンツを発信しているナイキ。
企業メッセージである”Just do it.”をしっかりと自分たちで体現していることが、アメリカのマーケティング界で注目されている。
体現している例で最も秀逸なのが、”Just do it.” 30周年キャンペーンの広告だ。
“Believe in something.
Even if it means sacrificing everything. Just Do it.”
「信念を持とう。たとえそれが全てを犠牲にしたとしても。Just do it.」
広告に起用したのがアメフト選手のコリン・キャパニック。
彼は、黒人に対する警察の暴力がアメリカで立て続けに起こったことに抗議し、NFL(ナショナル・フットボール・リーグ)の試合で国歌の斉唱時に起立することを拒否した選手。この様子は全米に放映され、反対派と擁護派の大きな論争を生み、彼は以降どのチームとも契約できない状況が続いていた。
そんな選手を起用し”Just do it.”と表現したナイキは、当初多くの批判を呼び、キャンペーン発表の翌日には株価が4%近くも下落したり、不買運動が起こったりしたほどだった。
しかし、徐々にナイキのその大きな決断を支持する声が増え、特にターゲット層である若者からの人気が上がった。
ナイキはシンプルなメッセージを一貫して持ち、リスクを負ってでも自身が”Just do it.”を体現したことが、多くの人々の心を揺さぶり感動を与えたのだ。それがナイキというブランディングにつながっている。
特に日本では、政治的な意見を企業が発信するのはリスクが大きいとされあまり見られない。しかし、当たり障りのないことを発信するだけでは誰も動かすことはできない。
自分たちが世の中をどうしたいか、変わらないポリシーを持ち、時にはリスクを負ってでも体現する。このような強い想いが企業には必要なのではないだろうか。
ユニークな海外のマーケティング事例を紹介してきたが、いかがだっただろうか?
様々な分野の事例だが、共通して言えるのはどれも「顧客の考えや行動をもう一歩深く理解する」ということではないだろうか。
あなたのビジネスのターゲット層がどんな生活を送っているのか、どんなことに困っているのかを今一度考えてみよう。そこからどんなマーケティング戦略を練っていくべきなのか、この記事がアイデアのヒントになったら嬉しく思う。ぜひ参考にしてほしい。
ニューヨーク大学のデジタルマーケティング講座で学んだ内容について、全5回に分けて配信していく予定だ。
ぜひ次回も楽しみに待っていてほしい。
第1回目:ニューヨーク大学講義から学んだ強いコンテンツマーケティングの要点
第2回目:10の海外マーケティング事例から見えた新しいアイデアを探そう(当記事)
第3回目:コンテンツマーケティング責任者必見|チームで共有「戦略の文書化」
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