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コンテンツの有効性とユーザーの幸せには72%の相関性がある
これは世界最大級の総合広告代理店であるハバスグループが世界中の39万5,000人、30のマーケット、21の業界、2,000以上のブランドを対象に毎年行っているブランドに関する調査「Meaningful Brands」から導いたデータだ。
この調査結果から示唆されるのは、コンテンツの重要性だ。
今や誇大広告や小手先の販売テクニックではモノは売れないことを多くのマーケターが認識しているだろう。消費者にとって本当に有益かどうか、幸福を実現できるかどうかが求められる現代では、コンテンツが重要な役割を担っている。
つまり、コンテンツを使ったマーケティングアプローチであるコンテンツマーケティングは、今やるべきマーケティング手法として注力すべきなのだ。
この記事では、なぜコンテンツマーケティングに注力すべきなのか、その理由をお話ししていく。今のマーケティング課題の打開策を探している方、コンテンツマーケティングについて理解を深めたい方はぜひ参考にしてほしい。
目次
コンテンツマーケティングはアメリカでは2000年代から、日本では2010年頃から本格的に注目されるようになってきたマーケティング手法だ。いまいちどんなマーケティング手法かわからない人に向けて、簡単に解説しよう。
その定義は、Content Marketing Institute(CMI)の表現がわかりやすいので紹介したい。
コンテンツマーケティングは、価値、関連性、一貫性のあるコンテンツを作成して配信することに重点を置いた戦略的マーケティングアプローチ。明確に定義されたユーザーを引きつけて維持し、最終的には収益性の高い顧客行動を促進する手法。
Content marketing is the strategic marketing approach of creating and distributing valuable, relevant and consistent content to attract and acquire a clearly defined audience — with the objective of driving profitable customer action.
つまり、従来の広告のように製品サービスを売り込むのではなく、ターゲットを引きつける価値ある情報などをコンテンツとして提供することで信頼を獲得し、最終的に売上につなげるというものだ。
従来手法の広告とコンテンツマーケティングの違い
トラディショナル広告:make people want things (それを欲しいと人々に思わせる)
コンテンツマーケティング:make things people want (人々が求めるそれをつくる)
例えば、私たちバズ部もそうだ。Webマーケティングに携わる人々に有益な記事やeBookなどのコンテンツを配信することで、見た方から「ぜひ一緒にやりたい」と問い合わせをいただき、コンサルティングサービスなどの契約につなげている。多額の広告費を使ってサービスを売り込むことはしていない。
これからのマーケティングにおいて多くの著名マーケターが「コンテンツ」に重きを置き始めており、コンテンツ作りというのは「できればやりたい」ではなく、必須になってくる。
ここでは、多くの著名マーケターがいかにコンテンツを重視しているかを発言内容とともに紹介しよう。
“Content marketing is all the marketing that’s left.” – Seth Godin
「今や、マーケティングにはコンテンツマーケティングしか残っていない。」
セス・ゴーディン(マーケティング関連のベストセラー作家、起業家)
“Content is king.” – Bill Gates
「コンテンツは王様だ。」
ビル・ゲイツ
“Brands need to take the phrase ‘acting like a publisher’ literally.” – Dietrich Mateschitz, CEO of RedBull
「ブランドは “出版社のように行動する” という言葉を文字通り受け取ろう。」
ディートリヒ・マテシッツ(レッドブル社CEO)
“Content Marketing provides 4x the ROI of our traditional marketing spend.” – Julie Fleischer
「コンテンツマーケティングは、従来のマーケティング費用に比べ4倍のROIをもたらす。」
ジュリー・フライシャー(元Kraft Foods社のコンテンツディレクター)
“Content is the atomic particle of all marketing.” – Rebecca Lieb
「コンテンツは、すべてのマーケティングの原子だ。」
レベッカ・リーブ(マーケティング関連の著作家、戦略家)
“Content marketing is a commitment, not a campaign.” – Jon Buscall
「コンテンツマーケティングはコミットすることで、キャンペーンではない。」
ジョン・ブスコール(元Moondog Marketing社CEO)
これは多くのマーケターも感じていることだと思うが、多くの消費者は明らかに広告に対して嫌気がさしている。
この結果をより顕著に表すのが、広告ブロックアプリの人気ぶりだ。
実は日本のiOSストアで2017−2019の間有料広告で年間1位の購入数だったのは280blockerという広告ブロックアプリだ。娯楽なども含めて膨大に存在する有料アプリの中で最もユーザーのニーズが多かったということになる。
また、HubSpot Researchによると、91%の人が、2、3年前と比べて、広告がより邪魔になると考えており、79%がリターゲットされた広告によって追跡されていると考えている。
これらの結果から、消費者がどれほど広告を嫌っているかは想像に難くないはずだ。
海外著名マーケターの言葉からもわかる通り、海外ではコンテンツマーケティングへの期待と注目が集まっている。
例えば世界最大のコンテンツマーケティングイベントを主催する団体、コンテンツ・マーケティング・インスティチュート社らが2020年に行った調査によると、大企業の28%および中小企業の28%が「過去12ヶ月の間に有料広告の予算をコンテンツマーケティングにシフトさせた」と回答している。
また、2015年にSmart Insights社が行った調査によると、「マーケティングのトレンドとして一番重要なものは?」という質問に対してコンテンツマーケティングが1位という結果になった。話題のSNSマーケティングやMAなどを差し置いて、さらに2位のビッグデータと2倍近い圧倒的な差をつけている。
Digital Marketing Trends 2015(Smart Insights)
日本ではコンテンツマーケティングはSEO的な側面が強く認知されてしまっているが、海外ではSEOではなく「マーケティング施策」として非常に注目度が高い。
「AIによる広告配信の最適化」が進んでいくことによって、広告運用で他社と差を生み出すのが以前よりも難しくなっている。
例えば、10年ほど前なら広告運用担当者の技量によって、競合がCPA3万円台で配信している中で自社は10分の1のCPA3000円台でCVを獲得するといったことが可能だった。
しかし、現代の広告運用は人間よりもずっと賢いAIが自動で広告配信の最適化を行っていく。
もちろん、仕様の設計や戦略などで今でも運用担当者によって広告配信の効率は多少左右されるだろうが、以前と比べれば担当者の技量による差というのは確実に小さくなっている。
そして、この差というのはAIの出現によってさらに加速度的に小さくなっていく。
実はこの傾向は数年前から言及されており、2019年に調査会社Forresterが公開した広告業界に関するレポートの中で機械学習と自動化のテクノロジーによって、2030年までに広告代理店の仕事の80%が変革すると予想されていた。
現在は2022年になっており、その傾向はさらに強くなっていると言えるだろう。
配信の自動化で広告運用効率で競合と差がつかなくなってきたとお伝えしたが、問題はそれだけではない。
単純に広告運用は競合が増えすぎているのだ。
矢野経済研究所:インターネット広告市場に関する調査を実施(2021年)より
Web広告は年々市場規模が拡大し、企業の投資額も増大している。競合が増えたことで入札単価が高騰しており、今の所下がる見込みはない。
結果的に今後広告に頼った集客を実践する場合、競合の増加と配信の自動化によって札束を使った顧客の奪い合いが激化することになるのだ。
広告の大きな課題はコストの観点から潜在顧客にリーチすることが難しいことだ。
企業がマーケティング活動を行う中で、AIの出現と競合の増加によって顕在顧客だけを対象にした広告施策に頼るのはジリ貧になっていく。
そこで、消費者の購買プロセスの序盤で消費者と接点を作ることが競合との差別化に繋がるが、その時に広告を使うとコストが合わない。
例えば、旅行会社が沖縄ツアーを販売したい時に「ストレスが溜まっていて、ストレス解消法を探している会社員」という購買プロセスの初期にいるユーザーに「沖縄旅行に行きましょう!」という広告でリーチしてもCPAが合わないのは容易に想像がつくはずだ。
しかし、この時に自社で「おすすめのストレス発散法」というコンテンツを用意していれば、購買プロセスの序盤にいる潜在顧客に広告費をかけずにリーチできるというわけだ。
コンテンツマーケティングにおいて、「発信したコンテンツは半永久的に残る」というもの重要な事実だ。長期的にビジネスを展開していく上で大きなアドバンテージになる。
TV広告やPPC広告などだと掲載期間が終了したらそれで終わりだが、自らが発信したコンテンツはずっと残り続ける。そして長期的にブランドを形作り、ビジネスへ大きな影響をもたらすものとなる。
例えば、バズ部の「SEO対策」という記事コンテンツは2013年に書いたものだが、2年、3年経っても毎月10,000人以上集客し続けている。この記事を経由した問い合わせも多い。
シンプルな話、毎月お金を払って広告を出し続けるのと、自らコンテンツを発信して効果を発揮し続けるのとどちらが効果的なのかということだ。広告は出せば出すほど結果を得られるだろうが、近年広告単価は上がり続けていて費用対効果は下がる一方だ。
もちろん、月の売上など短期目標を達成する手段として広告を活用するのはもちろん良い選択となりうるだろう。しかしファン育成やブランディングなど長期目標を達成していくために本当に効果的なマーケティングは何かを考えなくてはいけない。
現代の人々が商品を買いたいと思って選択する際、情報収集手段としてもっとも利用されていたのは「検索」だ。
また、Googleが2015年3月に行った5,398人を対象にした調査ではスマートフォンユーザーの82%が商品を購入する際にスマホで調べてから購入しているという結果を公開している。
これらの調査結果に示唆されているとおり、消費者の多くは商品の購入時に検索行動を行っている。つまり、広告を見るのではなく能動的に情報を得たうえで購入の決断をしているのだ。
この能動的な情報収集時に消費者に対して「心から満足できる」コンテンツを提供できるかどうかが重要になるのではないだろうか。
世界をリードする1800のブランドによって作成されたコンテンツの58%は貧弱で、無関係であり、配信に失敗しています。消費者にとっては意味がありません
そもそも商品サービスに関するコンテンツが少ないのと多いのでは、多いほうがいいに決まっている。例えば機能が似たようなWebアプリだったら、使い方やレビューなどのコンテンツがしっかり用意されている方が選ばれるだろう。企業にとっても顧客との接点は増えるし、売上のチャンスが増える。
「でも、もうそういうコンテンツは飽和状態なんじゃないか」と思うかもしれない。
それは違う。世界に流れるコンテンツの量は莫大だが、価値あるコンテンツは少ない。
世界有数の広告・PR代理店ハバスグループが世界33か国約38万人に対して行った調査によると、ユーザーが目にする企業発コンテンツのうち60%は「質が悪い」もしくは「自分に関係ない」と考えられているというデータがある。正直、私たちも日々コンテンツを消費する立場としてそんな実感があるだろう。
私たちはもっと人に選ばれるための価値あるコンテンツを発信していかなかればならない。これからでも遅くない。
日本でも少しずつ、デジタルシフトの波に押されて注目され始めてはいるが、多くの企業は「コンテンツが今後を決める」という真実に気づいていない。
ただ、リテラシーの高い企業、先進的な企業は少しずつ気づき始め弊社への相談が増えてきている。
今後のマーケティング活動はAIによってよりシステマチックになっていき、技術面での差がなくなっていく。その時、他の多くの企業に先んじることができるのはAIが解決できない価値あるコンテンツの創出を実践できる企業だけになる。
コンテンツマーケティング101のページで、具体的な始め方のノウハウを公開していくのでぜひ実践に活用してほしい。