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11/27水19:00〜20:00
どれだけ素晴らしいWEBサービスを開発したとしても、プロモーションやマーケティングを行わなければ、市場には浸透しない。
一気に市場に浸透するプロモーションを行うには、莫大なヒト・モノ・カネが必要だ。
ところが、国産のWEBサービス、チャットワークは、限られた予算と、限られた人材で運営されているにも関わらず、短期間で10万ユーザー突破という偉業を成し遂げた。
それも、全て自己資金でだ。
そのチャットワークが、開発以来行って来たマーケティング、プロモーション手法を、バズ部に特別に提供して頂いた。WEBサービスを開発して、世の中に価値を与えたい人、起業を目指している人、また、企業のマーケターの方は、特に必見だ。
それでは、前置きはこの当たりにして、チャットワークが、限られたリソースの中で、短期間で10万ユーザーを達成し、あのDropBoxやEvernoteを遥かに有料ユーザー率を記録しているマーケティング/プロモーションプランをステップ・バイ・ステップで全てご紹介する。
目次
2011年2月より、3月の正式なローンチに向けて、口コミを起こしてくれるファンを確保するための試みを行った。
具体的には、USTREAMを使った業務効率化のオンラインセミナー開催や、Twitterでチャットワークのモニター募集を通して、日頃からお世話になっている取引先、チャットワーク開発前にリサーチをした方、そして、親しい友人に先行利用ユーザーの募集を行った。
この時点で、USTREAMから約200ユーザー、Twitterから約150ユーザーがチャットワークに登録した。当時のUSTREAMの視聴者数は350人で、Twitterのフォロワー数は8500人だった。
2011年3月1日にチャットワークを正式リリース。リリース開始直後は、2月に行った先行ユーザー獲得施策が功を奏して、口コミが広がり、毎日300名を超える新規ユーザーが登録をしてくれた。
当初は、このまま口コミの波が広がり、新規ユーザー数は右肩上がりに成長すると予測していた。ところが、予想に反して、すぐに新規ユーザー数が数十人にまで落ち込んでしまったのだ。
そこで、すぐさま代替策を実施することを決めた。具体的には、各種オンラインプレスリリースの発行や、ブログメディアに対するチャットワークの紹介依頼だ。PR会社、ブログメディアともに、サービスの理念や真新しさに注目してくれて、積極的に紹介してくれた。
他社のオンラインメディアにアプローチしたことによる効果は抜群で、翌週には、新規登録者数が爆発的に増加し、初月から1万を超えるユーザーが登録してくれたのだ。
【2011年4月】
短期間で1万を超えるユーザーが登録したため、ユーザーから様々な意見や改善の声を頂くようになった。ユーザーの声への対応は後回しにして、新規ユーザー募集を押し進めるべきという声も上がったが、既存ユーザーを大切にするべきという経営判断を行った。
理由は以下の2つだ。
チャットワークには、「Skypeやメールの代替サービスとして、世の中の生産性を上げること」という明確なサービスコンセプトがある。そして、勢いに任せて、このコンセプトから外れてしまうと成功はないと、それまでのビジネス経験の中から判断したのだ。
さて、数多く寄せられたユーザーの声の中から、最優先で対応することを決めたのは以下の2点だ。
また、この時点から、チャットワークの定量的・定性的な利用分析を定期的に行い、サービスの継続的な改善のために、社内リソースの再分配を行った。
【2011年5月/6月】
小さなプロモーションだけで、短期間で1万ユーザーを超えたこと、ユーザーからの高いフィードバック率という結果を受けて、チャットワークというサービスが、人びとから必要とされていることを確信。
それは、同時に、似たようなサービスが生まれるリスクを意味する。そのため、社内会議により、世界市場でチャットワークブランドを構築する必要性を全社で共有し、迅速に海外展開に向けての市場調査と準備をスタートした。これが2011年5月のことだった。
その間も、STEP3で表面化した課題解決のための開発を継続しており、6月15日にユーザーインターフェースを全面的にリニューアル。更に、ユーザーの声をもとに機能を拡張した有料版と、チャットワーク海外版をリリース。
さらに、海外市場調査の第一歩として、シリコンバレーで開催された”SF New Tech”というPRイベントに出場。
350人のアメリカ人の前でプレゼンを行った。
収穫として、海外のニーズと日本のニーズの違いを実感するとともに、海外にも確実にニーズが存在することを確信した。
この時の確信をもとに、後の2011年8月、9月に、代表の山本敏行氏が、マーケティングリサーチのために、サンフランシスコへの居住を決定。(後のSTEP6に繋がる。)
【2011年7月】
徹底的なユーザー目線によるWEBサービスの改善が功を奏し、ユーザーから感謝の声や成功事例のご報告が相次いで届くようになる。
株式会社船井総合研究所や京都大学、KDDIなどの大手有名機関や、株式会社ギャプライズ、株式会社ロケットスタートなどの急成長企業もチャットワークを導入。
これらの成功事例を取材し、プロモーション資料として活用することで、 企業としてチャットワークを導入する会社が急増した。
その結果、地道な口コミによるチャットワークの認知度が加速し、特別なプロモーションも必要なしに、7月の時点で3万ユーザーを突破した。
【2011年8月/9月】
また、4月から進めていたiPhoneアプリをようやくリリースできた。iPhoneアプリのリリースに時間がかかった理由は、Apple社の承認を受けるまでに数々の調整が必要だったからだ。そのため、iPhoneアプリの機能水準が、PC版と比べて劣ってしまい、リリース直後から改善の声が殺到した。
ユーザーは、最初からGoogleやTwitterアプリレベルの操作性は当然という認識であるという重要な教訓を得て、この教訓は現在のサービス開発に活かされている。
国内でチャットワークの土台がほぼ完成したことを受けて、代表の山本敏行氏が、本格的な海外調査のためシリコンバレーに居住。シリコンバレーの起業家や、投資家と親交を深める。
【2011年10月/11月/12月】
この時期に、国内のマーケティングが加速化し5万ユーザーを突破する。この3ヶ月で行った施策を、時系列でご紹介する。
①ターゲットを絞った広告プロモーション
チャットワークリリース後、4月からユーザーの定量データ・定性データを細かく分析していた。それらのデータを活かして、3つのターゲット層を選定。それが以下の3つだ。
そこで、これらのターゲット層にリーチするため、「nanapi」「Facebook」「SOHO」サイトにアプローチを行い、広告を掲載。ターゲットを絞ってプロモーションを行った結果、低予算で、アクティブなユーザーを獲得することに成功。この時点で4万ユーザーを突破。
②KDDIとの業務提携準備
チャットワークに注目していたKDDIと接点が生まれ、業務提携の話を進めた。実現すると、官公庁や教育機関にもチャットワークが導入できるようになり、マーケティングの幅が広がるため、時間を割いて業務提携の話を進めることを決定した。
③ユーザー専用キャンペーンの実施
ユーザー分析の結果、非アクティブなユーザーが多数存在していることが分かった。グループチャットを一つも作っていない利用者が44%もいたのだ。逆に言うと、アクティブユーザーが56%という高い数字を出していた。
しかし、その現状に満足することなく、「既存のユーザーを大切にする」というサービス精神を徹底するために、非アクティブユーザーに対してケアを行うことを決めた。
具体的には、ステップをクリアしていくとストレージ容量が増えるという、いわゆるゲーミフィケーション効果を狙った「ステップガイド」を追加。ステップガイドを通して、アクティブユーザーになってもらうキャンペーンを行った。
このように新規ユーザー獲得と、既存ユーザーに対するケアを並行して行うことによって、低予算で5万ユーザーを突破することに成功した。同時に、チャットワークのアクティブな利用者のパーセンテージも増加した。
【2012年1月、2月、3月】
アクティブユーザーの多さや、ユーザーの増加速度を見て、チャットワークを社のメイン事業とすることを決定。マーケティング効率を考えて、社名をEC studioからチャットワークに変更。一番のメリットは会社のブランディングの向上が、チャットワークサービスのブランディングの向上と直結することにある。
例えば、国内外の様々なイベントに出席する際でも、「EC studioです。チャットワークをやっています。」というのと、「チャットワーク㈱です。チャットワークをやっています。」と言うのとでは受け手サービスに対する認識が大きく変わる。
さらに、情報誌『R25』にnanapiのけんすう氏がチャットワークを使って仕事をやっているという記事が登場し、Yahooニュースに掲載されることで新規登録者が爆発。3月に行った一周年キャンペーンと相まって、6万ユーザーを超える。
【2012年4月〜7月】
チャットワークが2年目に入り、様々な相乗効果が生まれて来た。
まずは、5月に7万ユーザーを突破、KDDIとの業務提携を正式締結、チャットワークの海外進出を同時発表。これにより、認知度が向上し、6月に8万ユーザーを突破。IT Mediaにも掲載され、ネットだけでなく、リアルでも認知されるようになってきた。
そのため、以下のようにリアルでの施策を開始。
以降、ネット上でのプロモーションは、Facebook広告とPPC広告のみに。
【2012年8月】
チャットワーク9万ユーザー突破。代表の山本氏がシリコンバレーに移住。念願のスマホアプリの開発者を採用し、サービスの更なる改善への体制を整える。
【2012年9月】
10万ユーザーを突破。現在は、アメリカ西海岸の起業ブームを支えている”TechCrunch”主催の、スタートアップ登竜門、TechCrunchディスラプトに出展準備中。
【2012年9月〜】
チャットワークは、世界で受け入れるために価格設定をWEBサービス料金の世界基準である、1アカウント100円程度としている。この条件で収益化するには世界中で売れる必要がある。そこで、「世界で最も競争が厳しいシリコンバレーで学び、日本で作り、アジアで売る」という作戦を立案。
具体的な施策としては、9月のアメリカTechCrunch Disruptへ出展に続いて、10月にはシンガポールの展示会に出展し、アメリカとアジアに同時にアピールする。
これから半年で、100万ユーザーを獲得するまでの道のりを、チャットワークFacebookページでお知らせしていくとのことなので、是非、注目しよう。
チャットワークは、アクティブユーザーの50%以上が毎日チャットワークを利用しており有料ユーザー率が非常に高いことが特徴だ。
また、Dropbox、Evernoteの有料ユーザー率は4~4.5%に対し、チャットワークはそれ以上である。この事実は、「メールの代替・Skypeチャットの代替となり、世の中の生産性を上げる」というサービスコンセプトにユーザーが共感し、実際にメリットを得ている証拠である。
それでは、最後に、チャットワークが、この18ヶ月で行って来たプロモーション施策のうち、成功要因と失敗要因のまとめをご紹介する。
成功した行動のまとめ
リリース直後のメディア戦略。初月に1万ユーザーを獲得。会社名をチャットワークに変更。社名を変えるという社運をかけたチャレンジに共感したユーザーが口コミしユーザー登録増加。様々なジャンルのユーザー導入事例の制作。ソーシャル上で150いいね!超える成功事例も登場し、提案資料としても活用。ソーシャル戦略。Facebookページのファン数が間もなく1万人。サービス名の月間検索数が昨年対比2倍。サイトの月間新規訪問者は2.3倍。
失敗した行動のまとめ
セミナー。ツールに直結するテーマだと人が集まりにくい。USTREAMセミナー。完全に失敗したとは言えないが、先行リリースの時点では視聴者数は集まったが、リリース後の安定確保に課題が残る。ターゲットを絞らずPRを行ったこと。利用シーンを分析し、どの層に向けてアプローチするか選択する必要がある。スマートフォンアプリへのリソース配分。口コミが広がる時はスマートフォンからの登録が多い。リリース当初はネット経由でのみのPRに執着していた。予想以上にリアルでの広がりが多い。
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