私たちはコンテンツの網羅性とどのように向き合うべきか?

 

こんにちは。ルーシー(バズ部)の松澤です。

コンテンツ制作に取り組んでいると、「網羅性が大事」という話をよく聞きます。私も「網羅性が大事」だと思っていますし、網羅性と本気で向き合ってきたことが、コンテンツマーケティングの成果の大部分に好影響を与えてきたと実感しています。

では、コンテンツ制作における網羅性とはなんでしょうか?

私は数え切れないほどのコンテンツ制作に関わってきましたが、網羅性を意識すればするほど失敗する方が多い傾向を感じてきました。

私は網羅性という言葉には2つのパターンがあると考えています。

  • SEOのための網羅性
  • ユーザーのための網羅性

前者はSEOを強く意識しています。SEO的な視点で情報が大量に積み上がっていくため、ユーザーにとってよくわからないコンテンツになりがちです。失敗してしまう方ほど、網羅性をこのイメージで捉えているように感じます。

後者はユーザーに役立つことを強く意識しているパターンです。「満足=網羅」という前提に立つため、ユーザーにとって価値のある高品質なコンテンツに近づきやすいです。当然ですが私が推奨したいのはこのパターンです。

多くのコンテンツ制作者が作るべきコンテンツはもちろん後者であるはずです。
なぜならコンテンツを受け取るのはユーザーであり、ユーザーは自分にとって役立つコンテンツを求めているからです。そしてそれによって、SEOで結果を出すことも可能だからです。

今回はこの網羅性について、どのように実践につなげていくのかを解説していきます。


網羅性には2つのパターンがある

前述した通り、私は網羅性には次の2つのパターンがあると考えています。

  • SEOのための網羅性
    キーワードを網羅しようとする(例:競合コンテンツや関連ワードの調査に力を入れる)
  • ユーザーのための網羅性
    ユーザーの特定の状況に必要な情報を網羅しようとする(例:ユーザー理解や品質の向上に力を入れる)

それらの傾向をざっくりと整理したのが次の表です。

SEOのための網羅性ユーザーのための網羅性
思考の出発点検索エンジンの攻略ユーザーの状況
情報の数過剰適度
情報の質低い高い
情報の選択なしあり
情報の一貫性なしあり
文脈なしあり
独自性なしあり
特徴・競合コンテンツのリサーチ
・関連キーワードのリサーチ
・ユーザーの理解
・品質の向上

最大の違いは思考の出発点です。

  • 検索エンジンの攻略を出発点とした場合:
    必要以上の過剰な質の低い情報が、無作為に置かれたコンテンツが出来上がる。だからユーザーの役に立たず、マーケティングの結果にも繋がらない。
  • ユーザーの価値を出発点とした場合:
    必要な範囲で質の高い情報が選択され、一貫性のあるコンテンツが出来上がる。だからユーザーの役に立ち、マーケティングの結果にも繋がる。

もう一つ注目してほしいのは独自性です。
「独自性と網羅性のどちらを選択すべきか?」といった議論が行われがちですが、私はそれらを比較すること自体が間違っていると考えています。SEOのために網羅するから独自性が失われるだけであって、ユーザーのための網羅すれば自ずと独自性が高まるはずだからです。

次からそれぞれの違いについて詳しく解説します。


SEOのための網羅性を高める作り方は今すぐやめよう

SEOのために情報を網羅したコンテンツを作成するのはもう時代遅れです
「上位表示しているコンテンツから、あらゆる情報を抜き出してまとめる」といったことをやっている企業はユーザーの信頼を失います。

無秩序に情報が並ぶため、ユーザーにとって価値の低いコンテンツになってしまうからです。辞書のように色々な情報がたくさん詰まったコンテンツになってしまうイメージです。

SEOのための網羅性を目指し始めると、次のような行動を起こすことになるはずです。

  • 関連キーワードの詰め込み
  • 競合コンテンツが扱う情報の詰め込み

関連キーワードと競合コンテンツを「ヒント」として扱う分にはまだ理解できますが、それらを「詰め込む」ことを目的にするのはやめましょう。


ユーザーのための網羅性

ユーザーの状況を想定し、そのために何が必要なのか。その観点での網羅は、情報の量ではなく質です。
ユーザー理解に徹し、ユーザーが行動の意思決定をするために何が必要なのか。その必要な情報を、必要なだけ選択し、必要な形に加工して提供するのが特徴です。

「ニーズの充足=網羅」という前提に立ち、ユーザーの役に立つことだけにフォーカスされています。

次の図を見てください。

ニーズの範囲

網羅性の範囲を決める要素の一つに「ニーズの範囲」があります。ユーザーのための網羅性は、ニーズの範囲を満たすように情報を網羅します。

SEOのための網羅性と比べてみましょう。

SEOのための網羅性とユーザーのための網羅性

SEOのための網羅性はニーズの範囲に収まることもあれば収まらないこともあるでしょう。一見すると情報が網羅されているように見えますが、大抵の場合それらにまとまりはありません。ユーザーにとって無関係な情報まで網羅されてしまうからです。

そしてもう一つ、網羅性の範囲を決める要素として「ニーズの深さ」があります。
表面的な浅いニーズを満たすだけでは不十分です。ユーザーすらも気付いていないような深いニーズも含めて充足させることができれば、ユーザーにとっての網羅性は高いと判断できるでしょう。

SEOのための網羅性とユーザーのための網羅性

つまり、網羅性とはユーザーニーズを「立体」として捉え、「体積」をどれだけ充足させられるかの度合いを示す言葉と言えます。網羅とはユーザーの心を満たすことです。

次からは具体例を見ながら解説していきます。


ユーザーのための網羅性を体現したコンテンツ事例

ここで紹介するのは、「ワンルームマンション投資」に関するコンテンツです。

キーワードワンルームマンション投資
検索ボリューム6,600
検索エンジンの順位1位
記事タイトルなぜワンルームマンション投資はやめろと言われるのか?
記事URLhttps://www.musashi-corporation.com/wealthhack/division-apartment-investment
記事構成1.ワンルームマンション投資とは
 1.1.利益を得る仕組み
 1.2.意外と運営費用がかかるワンルームマンション投資
2.ワンルームマンション投資をおすすめしない5つの理由
 2.1.空室で家賃収入ゼロになりやすい
 2.2.家賃保証の内容が想定と違う
 2.3.収支が赤字の重大さに気づきにくい
 2.4.保険代わりとしては不十分
 2.5.節税効果は小さい
3.ワンルームマンション投資で失敗した実例3選
 3.1.ワンルームマンションを購入、月々十数万円の手出しが発生したHさん
 3.2.投資額の割に利益が少なすぎると不安になった Kさん
 3.3.ワンルームマンション投資で借入金額が膨らみ、身動きがとれなくなってしまったOさん
4.不動産投資に失敗しないために当社がお伝えしたいたった1つのこと
5.ワンルームマンション投資をおすすめできるケース
6.さいごに

順位チェックツールが示す通り、公開から3年以上安定的にSEOで上位表示し続けている記事です。(※青いチャートがGoogleでの検索順位)

Google検索順位

順位だけでなく、アクセスやコンバージョン、さらには売上にも大きく貢献している記事です。

この記事で想定したユーザーを簡潔にまとめると次の通りです。

  • ワンルームマンション投資のことをよく知らない
  • ネガティブな声が多いことはなんとなく知っている
  • 投資の対象とすべきかどうか判断したい

つまりこの記事で訴えかけるべき主張は「投資の対象にすべき」もしくは「投資の対象にすべきでない」といった明確な結論です。その結論を支える情報を集め、根拠を充実させることでニーズの範囲と深さを網羅することが可能です。

もしSEOのための網羅性を目指したら、次のような構成になっていたことでしょう。

  1. ワンルームマンション投資とは
  2. ワンルームマンション投資のメリット
  3. ワンルームマンション投資のデメリット
  4. ワンルームマンション投資はやめとけ?からくりや危険性を解説
  5. ワンルームマンション投資の始め方
  6. ワンルームマンション投資で失敗しない方法
  7. ワンルームマンション投資におすすめの会社
  8. まとめ

関連キーワードや競合コンテンツが「メリット」や「デメリット」などの情報を取り上げているからです。
SEO的視点で情報を引っ張ってくることで出来上がる典型的な構成です。踏み込んだ主張もなく、何を解決できる記事なのかもわかりません。
情報が羅列されているだけだから、独自性が失われているのもご理解いただけるはずです。

繰り返しになりますが、ユーザーのための網羅性を目指せばSEOで結果を出すことは可能です。しかも数年にわたって上位表示し続けます。

実際、ここで紹介したクライアントはSEOで大成功しています。

サマリー

狙ったキーワードの多くで上位表示を達成し、安定的に50万PV/月を獲得し、SEO起点のコンバージョン数は安定的に100件以上、売上は毎年50億円ほど創出しています。

だからSEOのための網羅性を目指すのではなく。ユーザーのための網羅性を目指すことを強く推奨します。そうすれば、結果的にSEOやマーケティングの成果を創出できるからです。


ユーザーのための網羅性を高める方法

方法は単純です。
SEOを目的化せず、ユーザー満足のために手順を踏むだけです。大きく分けると次の6つの手順に分けられます。

  1. 対象ユーザーを限定する
    誰か一人でよいので対象ユーザーをはっきりと定義しましょう。明確な一人のユーザーをイメージできれば、その人が抱えるニーズが見えるはずです。
    反対に、最大公約数的な発想で複数のユーザーをまとめるのは避けた方が良いです。複数のユーザーそれぞれが固有のニーズを抱えており、それらのニーズを一つにまとめようとすること自体が非現実的だからです。
  2. 明確なゴールを持つ
    対象ユーザーがコンテンツを通じて何を達成できればよいか考えましょう。
    例えば「ボールペン おすすめ」で検索するユーザーであれば、自分にとって最高に役立つボールペンに出会うことです。ユーザーが求める結果をコンテンツのゴールとして設定しましょう。
  3. 中心的な論点を捉える

    対象ユーザーとゴールを踏まえて中心的な論点を捉えましょう。
    私が推奨するのは5W1Hで分解するパターンです。「What(何)」を求めるユーザーに対して、「Where(どこ)」を提供しても話の筋がずれてしまいます。
    「What(何)」なら「What(何)」に、「How(どのように)」なら「How(どのように)」にフォーカスしましょう。

  4. その論点を深掘りする
    中心的な論点が決まったらそこを徹底的に掘り下げましょう。
    論点を横にずらすのではなく、縦に掘り下げていくイメージです。
    「外壁塗装の費用相場」という論点なら「住宅の種類別の費用」「塗料の種類別の費用」「時期別の費用」といった具合に、いくつかの切り口で分解できるはずです。分解すればするほど重要な論点が網羅されていくイメージです。
  5. 情報を選択する
    完璧にここまでのステップを踏んでいればこの5つ目のステップは不要です。
    ただ私の経験上、完璧に進められる人はいません。色々思考しているうちに絶対にノイズが入るからです。
    一度立ち止まって最初のステップから考え直しましょう。今あなたがコンテンツに取り入れようとしている情報に不要な情報が混ざっているはずです。そういった情報は思い切ってコンテンツから外してください。対象ユーザーにとって意味がない情報はノイズになるからです。
  6. コンテキストを作る
    あとは情報を整理するだけです。ユーザーにとって自然な流れでコンテキスト(文脈)を調整していきましょう。
    情報を羅列するのではなく、ユーザーの状況に合わせて情報を適宜加工しながらストーリーを構築していくイメージです。MECE(漏れやダブりがない状態)を意識しながら論理的に構成しましょう。

まとめ

SEOのための網羅性は一時的には順位が上がるかもしれません。
実際に現実ではそういったコンテンツが上位表示されているケースもあるからです。一時的であろうとSEOの結果だけを望むのであればそれでも良いのかもしれません。

それでも私はユーザーのための網羅性を目指してコンテンツを制作すべきだと考えています。私がユーザーだったらそういったコンテンツを求めるし、そういったコンテンツを発信する会社から買いたいからです。

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  • B!

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実際にバズ部が取り組んだプロジェクトについて、どの様に圧倒的な成果を実現してきたのかを下のページで詳細にまとめています。ぜひ参考にしてください。