やればやるほど成果が遠ざかる「コンバージョン最適化」の罠|海外レポート【バズ部社長AI活用コラム】

毎年サンディエゴで開催されている世界最大級のカンファレンス、Social Media Marketing World 2026。毎年申し込みして主要な講演はチェックするようにしています。今年は特にAI検索の台頭、コンテンツ過剰供給、信頼の崩壊——日本で議論されているのと同じ論点が、より先鋭的に語られていました。

その中で一つ注目すべきなのは、コンバージョン最適化の専門家として知られるTalia Wolf(タリア・ウルフ)氏の講演「Conversion Optimization 2.0」です。

その内容を少しお見せしながら、私自身が考えていることも改めて言葉にしておきたいと思います。


AIの普及で「コンバージョン最適化」が空回りしている

Talia Wolf氏は、コンバージョン最適化の世界で15年以上活動してきた専門家です。GetUpliftというCRO(コンバージョン最適化)専門のエージェンシーを運営し、B2B、SaaS、金融、旅行、小売など、業界を問わず多くのブランドを支援してきました。

彼女が一貫して批判してきたのが、自身が「ハムスターホイール(回し車)」と名付けた、最適化の悪循環です。

多くの企業は、コンバージョンを改善しようとして、ボタンの色を変えたり、フォーム項目を減らしたり、競合のページを真似たり、新しいA/Bテストツールを導入したりします。一見すると「データドリブンに動いている」ように見えます。しかしこれらの施策はすべて、「なぜ顧客が買うのか」という根本的な問いを飛ばして、表面的な要素をいじっているだけだ、というのが彼女の指摘です。

(これは、全くもって同感です。)

そしてAIの普及で、この悪循環はさらに加速しています。ChatGPTで5分でランディングページが作れるようになった結果、誰もが同じようなページを量産し、同じような訴求を出すようになった。皮肉なことに、「もっと早く、もっと多く」がAIでできるようになったことで、ブランドの差別化を失わせています。


あなたのロゴを入れ替えても、誰も気づかない

講演の途中、Talia氏はこう問いかけました。

「もし私が今、あなたのWebサイトに行って、ロゴだけを競合のロゴと入れ替えたら——誰か気づきますか?」

会場が一瞬、静かになりました。

差別化とは何か。それを一行で突きつけてくる問いです。

機能を並べる。実績を並べる。「お客様一人ひとりに寄り添う」と書く。「業界トップクラスの実績」と書く。「ワンストップで支援」と書く。気づけば、競合のサイトとほとんど同じ言葉が並んでいる。ロゴだけが違う。

これがハムスターホイールの正体です。ボタンの色を変えても、ヘッドラインをA/Bテストしても、根本の問題は解決しません。「うちでなければならない理由」が、そもそも言語化されていないからです。

AIで誰もが同じ文章を、同じ速度で、同じクオリティで量産できる時代になりました。ロゴを入れ替えても気づかれない会社は、これからもっと増えていきます。

(この指摘も、完全に同意します。私もクライアントのウェブサイトを見るときに一番気になるのがこの部分です。競合とほぼ同じ訴求しかできていない企業が多いですよね。)


コカ・コーラは「茶色い炭酸水」を売っていない

Talia氏は、コカ・コーラを例に挙げてAIが作成したLPを見せていました。機能と価格とスペックだけを並べた、典型的な「テクニカルLP」です。

(ここで指摘しているのはAIの使い方ですね。AIも使い方を間違えると、こうなりますね。)

講演資料より


日本のLLMO議論への既視感

さて、Talia氏のハムスターホイールの話は、今日本で起きている「LLMO(大規模言語モデル最適化)」の議論そのものだと感じました。

LLMOという言葉が広まってから、私のもとには「見出しをQA形式に書き換えるべきか」「FAQを記事の最下部に量産すべきか」「特定のツールを導入すべきか」という相談が頻繁に届くようになりました。

そのたびに感じるのは、「顧客に選ばれる理由」を作らないまま、「AIに拾われる施策」だけを積み重ねても、中長期的な競争優位にはつながらないということです。

これは、SEOの初期に起きたことと全く同じ構造です。被リンクを買う、キーワードを詰め込む、Hタグを調整する。アルゴリズムを追いかけるテクニックは、無駄とまでは言いませんが最後の味付け程度に考えましょう。


なぜ私たちは「テクニック」に惹かれてしまうのか

これだけ無効化されてきた歴史があるのに、なぜ世界中のマーケターはテクニックから抜け出せないのか。

理由は二つあると考えています。

一つ目は、テクニックの方が「やった感」が出やすいから。「QA形式に書き換えました」「FAQを30個追加しました」「新しいツールを導入しました」は、社内で報告しやすく、上司にも説明しやすい。一方、「顧客が本当に何を求めているかを再定義しました」は、地味で、成果が出るまでに時間がかかり、社内で評価されにくい仕事です。

二つ目は、テクニックは外から買えるから。ハウツー記事、ベンダーの提案、ツールの導入。すべて、外部から「答え」を買ってくることができます。一方、顧客理解は外から買えません。自社の顧客に直接向き合い、自社の強みを言語化する作業は、自分たちでやるしかない。

この「外から買えるか」「自分たちでやるしかないか」の違いが、多くの企業をハムスターホイールに留まらせている根本原因だと考えています。


では、本質的なAI対策とは何か

AI時代の勝ち筋は、シンプルに言えば、AIに代替されない領域に投資することです。

今まで大事だった情報は、大事ではなくなります。AIが持っているからです。

ではAIが持っていない情報とは何か。それは、今まで細かすぎて軽視されてきた情報です。
目の前の一人のお客様が抱える固有の状況と、それをどう解決するか、そしてそこにある感情です。

その顧客は何を恐れているのか。どんな選択肢の中で迷っているのか。社内で誰に説明する必要があるのか。何があれば「これで決めていい」と思えるのか。

どうすると失敗するのかもとても大事ですね。

ここを理解して蓄積したり、発信していけるか。それがこれからのマーケティングの成否を分けます。

いち早く成果を出したい場合は、やるべきことは三つです。ターゲットを絞り込み、その顧客にとっての自社の強みを言語化し、それを事例で証明する。

地味で、AIに頼ることはできません。

ただ、これを本当にやれている会社は、驚くほど少ない。だからこそ、すぐに成果が出るし、やる価値があるのだと思います。

本稿で触れた「絞る・言語化する・事例で証明する」という3ステップを、90日で実装するプログラムも提供しています。よろしければAI対策90日プログラムもご覧ください。


今回参照した情報源

カテゴリー AI検索(LLMO)

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