バズ部を運営する株式会社ルーシー代表取締役の石井穣です。
先日、私たちは「AI対策90日プログラム」というサービスをリリースしました。プレスリリースでは、問い合わせ2.2倍、受注前年比4倍ペースといった数字を出しています。
ただ、今回お伝えしたいのは、その数字の話ではありません。
そこにたどり着くまでに、私たちが何を見て、何を試して、何を切り捨てたのか。その話です。AI対策をこれから始める方が、同じ遠回りをしないで済むように、その過程を残しておこうと思います。
先に結論から書きます。
AI対策で最初にやるべきことは、FAQの追加でも、構造化データの実装でも、LLM向けの表現調整でもありません。自社の強みを、AIにも人にも伝わる水準、6,000字レベルまで言語化することです。
ここを飛ばしたら、いくらAI施策をやっても「AIからの引用は増えるのに問い合わせは増えない」という状態で止まります。
目次
3年前からAIには本気で向き合ってきた
2022年の年末にChatGPTが公開されて、その2か月後には、社内で「全員でAIを使っていく」という方針を出しました。

「判断が早かったですね」と言われることがありますが、私自身にはそこまで特別な感覚はありませんでした。必要な変化だからやる、という感覚です。
AIが突然現れたとも思っていませんでした。機械学習も言語処理も、以前から流れとしてはありました。その延長線上で、ChatGPTによって言語の扱いが一気に変わった。世の中はかなり大きく変わるだろうとは見ていました。
そこから私自身、毎日のようにAIを触ってきました。
ChatGPTの初期段階でも、性能には驚きましたが、私の中で「これはコンテンツ制作に確実に使える」とはっきり思えたのは、ChatGPTの「o1」モデルが出たときでした。自分のリクエストに対する理解が明らかに変わった。それまでのAIは、10回試して1回か2回、自分が満足できるものが返ってくればいい方でした。それがo1では、3回か4回まで上がってきた。数字だけ見ると小さく見えるかもしれませんが、使う側からすると大きい差です。
確かなのは「AIは入力に忠実だ」ということ
2024年の半ばごろから、「AI対策をどうすればいいか」という相談が急に増えました。見出しをQ&A形式にする、FAQを増やす、構造化データを入れる。そういう施策がAI対策として広まっていた時期です。
ただ、それらを見ても「これで本当に事業が動くのか」がピンと来ませんでした。毎日AIを触る中で、一つだけ確かだと思えていたことがあったからです。
AIは、入力に忠実に動く道具だということです。
雑に投げれば雑な答えが返ってくる。深く考えた情報を渡せば深く整理された答えが返ってくる。AIは、こちらが渡した情報の解像度までしか返してくれません。
同じ質問を、入力の仕方だけ変えて試したことがあります。「この業界のマーケティング戦略を作って」と投げたときに返ってくる答えと、背景情報と重要度を渡したうえで同じ質問を投げたときに返ってくる答えは、質がまったく違いました。AIの性能は同じ。違うのは、渡した入力の解像度だけです。
この原理は、AIを使う利用者側だけでなく、AIに読まれる企業側にもそのままあてはまります。
AIはこれから、ユーザーに代わってWeb上の情報を読み、「どの会社がこの質問の答えか」を判断します。企業のWebサイトは、AIにとっての「入力」そのものになる。
Webサイトに「実績豊富」「お客様に寄り添う」「高品質なサービス」と書かれていれば、AIは「他の何百社も同じことを書いている会社」としてしか理解しません。そこからは、比較も推薦も生まれない。ユーザーに推薦される候補から、静かに外れていきます。
逆に言えば、Webサイトに書く言葉の解像度を上げれば、AIが会社を理解する解像度も上がる。これが、AI時代のWebサイトの本当の勝負どころです。
引用されるかどうか、順位が上がるかどうか、という表層の話ではありません。AIに「この条件ならこの会社だ」と判断させられるかどうか。そこまで設計しきらないと、事業は動きません。
強みの言語化からやり直すしかない
AIに「この条件ならこの会社だ」と判断させるためには、AIに渡す材料、つまりWebサイトに書かれている自社の強みが、そのレベルまで具体的である必要があります。
「実績豊富」「お客様に寄り添う」「高品質」。従来のSEOではこれで通用しました。でも、この水準では、AIは他の何百社と区別できません。AIが比較と推薦の材料にできるのは、その会社にしか書けない、具体的な事実だけです。
世間のLLMO施策が引用数ばかり追うのも、同じ構造だと思いました。「数字が動いたかどうか」を追っていて、「事業が動いたかどうか」を追っていない。私がやりたいのは、そっちではない。
だから、AI対策の入り口は、テクニカルな施策ではなく、自社の強みの言語化からやり直すことに決めました。
最初のクライアントで、6,000字の強みが出てきた
2025年の秋、新しいアプローチを最初に適用したのは、都内の士業事務所でした。長いお付き合いのある既存クライアントです。
2時間× 3回の強みのヒアリングに入る前、私は「強みはこのあたりだろう」という仮説を持っていました。過去のやり取りから、ある程度の当たりはついていたからです。
ところが、実際に話を聞くと、その場所からは思ったほど出てこない。こういうとき、引き下がる選択肢はありません。どこかには絶対にある。そう思って角度を変えて掘り続けます。強みのない会社はほぼないからです。ただ、本人たちが気づいていないだけです。
そうすると、最初に想定していた場所とはまったく違うところから、その事務所にしかない強みが出てきました。「これをWebに載せれば、間違いなく問い合わせが取れる」と、その場で確信できるものでした。
最終的に、この事務所の強みを言語化したテキストは、6,000字を超える文字量になりました。

(2時間× 3回の対面ヒアリングを実施し、実際に約6,000字まで言語化した強み)
長いと思うかもしれません。でも、そこまで具体的にしないと、AIは「この質問の答えはこの事務所だ」と判断できない。人が読んで魅力が伝わる水準まで。同時に、AIが比較と推薦の判断材料にできる水準まで。そこまで落とし込まないと、事業は動きません。
6,000字の強みをサイト全体に反映する
強みを具体的に定義した後、ここからがスタートです。
商品ページ、サービス詳細ページ、事例ページ、FAQ、構造化データ。Webサイト全体を、この6,000字を軸に塗り直していきます。一部だけ強みを書き直しても、AIはサイト全体から一貫した像を読み取るので、全体を更新する必要がありました。
ただ、塗り直しの作業を進めていく中で、一つ大きな問題に直面しました。
事例コンテンツの制作です。
事例は、検討フェーズでAIが「この会社が答えだ」と判断するときの最も重要な判断材料になります。強みが6,000字あっても、それを裏付ける具体的な事例が揃っていなければ、AIの推薦には繋がりません。
ところが、質の高い事例を1本作ろうとすると、ヒアリング、構成設計、執筆、確認のすべてを丁寧にやって、だいたい120時間かかります。これを90日のプログラム期間中に何本も、さらにプログラム終了後もクライアント自身の手で継続的に量産していく必要がある。どう考えても、従来の人力制作では回りません。
事例記事生成システムを一社ずつ作り込むことにした
そこで、一社一社に合わせて、事例記事を自動的に作れるシステムを開発することにしました。
本気で作ったら、思った以上のものができました。
ベースのエンジンはGemini 2.5ですが、その上に載せる1万文字超のプロンプトは、お客様ごとに個別設計します。そこに入るのは、最初に整理した6,000字の強み、その会社の商材特性に合わせた記事構成、業界に合わせた語彙と言い回し、そしてバズ部14年分の非公開ノウハウです。
これで、1本120時間かかっていた事例制作が、9時間で書けるようになりました。

ここで「この事例記事生成システムをパッケージ化してツールとして販売する」という選択肢が当然出てきました。システムとして切り出して売れば、スケールもするし、売上も積み上がる。経営判断としては、そちらが合理的です。
でも、その時の私は、どうしてもその判断ができませんでした。
多くの企業は、自社の強みをまだ言葉にできていません。ツールだけをお客様に渡したら、曖昧なインプットからは曖昧なアウトプットしか出てこない。つまり売上は上がらない。そういう結果が見えていました。
結局、ツール単体の販売はやめました。一社ずつ、その会社専用にシステムを組み上げて、90日プログラムの中で納品する、いまの形にしました。
このプロンプトを1社分組み上げるだけで、私たちの工数は50時間を超えます。汎用ツールを売ったほうがスケールすることは分かっています。でも、強みがその会社ごとに違う以上、推薦される理由も会社ごとに違う。仕組みも一社ずつ作り込まないと、意味がない。そう判断しました。
これでプログラムが終わったあと、お客様自身の手で、自社の強みを反映した事例を毎週量産し続けられる状態が残ります。一度整えて終わり、ではなく、続くものを残す。それがこのサービスの形です。
お客様が欲しかったのは、「AI対策」ではありませんでした
最初のクライアントと契約する場で、代表からこう言われました。
「これって、やって終わりじゃないんですよね。ちゃんと問い合わせを取るところまで、面倒を見てくれるんですよね。いつも本質を見ているバズ部さんですから。」
この一言は、私のこれまでの意思決定を安心させるものでもありました。
お客様がほしかったのは、AI対策の発注先ではありません。問い合わせにつながるところまで伴走してくれる相手です。
これは、14年前にバズ部を始めたときから変わっていません。私たちはずっと、お客様がまだ言葉にできていない強みを見つけて、言語化して、世の中に届く形に変えてきました。届ける相手が検索エンジンだった時代も、AIと人の両方になった今も、やっていることの核は同じです。
私たちにとってAI対策は、急に始まった別の仕事ではありません。これまでやってきたことを、今の環境に合わせてやり切ることです。
「うちの良さがWebでは伝わらない」と感じている方へ
営業で話せば伝わるのに、Webだとなぜか伝わらない。問い合わせは来るけれど、理想の案件とズレる。AI対策はやっているのに、事業のインパクトが見えない。
もしそう感じているなら、問題は努力不足ではありません。
強みが、結果が出る水準まで言葉になっていないだけです。
見出しやFAQを書き換える前に、まずやるべきことがある。私はそう考えています。順番を間違えなければ、景色は変わります。
AI対策90日プログラムの詳細と、無料の「AI検索戦略診断」はこちらからご覧いただけます。
株式会社ルーシー 代表取締役石井穣











