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11/27水19:00〜20:00
オランダ人コンテンツマーケター、カーライン・ポスマ(Carlijn Postma)氏を知っているだろうか?
カーラインはオランダのマーケティングエージェンシーの代表で、世界最大のコンテンツマーケティングイベントContent Marketing World2019(アメリカ)でも登壇した注目のマーケターだ。
彼女が紹介した「オーディエンスジャーニー(Audience Journey)」がとてもシンプルで画期的だ。いわゆる神話の法則であるヒーローズジャーニーをベースにユーザーの体験を考えていくことで、新たなコンテンツのアイデアを生み出す。(※フレームワークの詳細はバズ部の記事を参考にしてほしい。「カスタマージャーニーに違和感を感じる人必見!Carlijn Postmaが提唱するオーディエンスジャーニーとは?」)
実は今回カーラインへの単独インタビューが叶い、なぜオーディエンスジャーニーを思いついたのか、それが持つパワー、作成のポイントなどを聞いてきた。
もっと良いコンテンツを作りたいと考える人は新たなヒントを得られるはずだ。ぜひ参考にしてほしい。
カーライン・ポスマ (Carlijn Postma)
オランダのコンテンツマーケティングエージェンシー”The Post”の代表。
スピーカーとして世界最大のコンテンツマーケティングイベントContent Marketing Worldにも登壇経験あり(2019年)。自身はライター・ブロガーでもあり、2019年9月には「Binge Marketing ~the best scenario to build your brand」(オランダ語)を出版。
目次
カーラインは、普段はオランダに住んでいるが、アメリカへ出張があるタイミングでサンフランシスコで待ち合わせた。インタビューは、彼女が主張するオーディエンスジャーニーの元となるヒーローズジャーニーに注目したきっかけからスタートする。
コンテンツマーケティングはアメリカやオランダでも、この4、5年ほど大流行しており、皆がコンテンツを作り続けています。しかし、作ることばかりに注力してしまい、その目的を見失っていると感じたんです。
そこで私は、コンテンツを作る前に「本当に読み手(オーディエンス)が求めているものは何か」を考えるためのモデルをつくろうと思いました。
そこでヒントを得ようと思ったのがハリウッド。なぜなら彼らこそ世界一のコンテンツクリエイターだからです。彼らはどのようにストーリーを語り、どのようにオーディエンスを惹きつけ、ずっと魅了し続けられるかを熟知しています。
ハリウッドについて調べている中で、ジョゼフキャンベルのヒーローズジャーニーに出会いました。彼の理論は、すべての神話やストーリーには共通する構造があるということ。有名なスターウォーズなどハリウッドで映画を作る際は彼のストーリー構造を当てはめているケースが非常に多いんです。バンビやジェームスボンド、ほかにもほぼどんな映画でも。
すべての映画は出発・冒険・帰還の3つのパートによって構成され、主人公のありふれた日常からすべては始まり、12のステップを経ます。そしてその主人公のジャーニーを、オーディエンスもそのまま体験するのです。
Carlijn Postmaが提唱するオーディエンスジャーニーとは?
最初はありふれた日常から始まり、どこかで興味を持つトリガーに出会い、その情報を得るために行動を起こすのです。そして次に抵抗を感じます。やっぱりこの情報・商品・ブランドは求めていないかもと。そこでメンターが求められるのです。冒険の扉を開け、一歩踏み出すために必要なメンター、それは専門家やロイヤルカスタマー、インフルエンサーかもしれません。そこまでがまず第1のパートで、私はジョゼフキャンベルのヒーローズジャーニーをそのまま応用しています。
どんなコンテンツをつくるべきか、どのようにオーディエンスを次のステップへ導けるのかを考えるのに役立つツールです。
企業側の論理(ビジネス)に関係のない「普段の生活」のマインドセット・心理状態、興味関心からスタートすることが、オーディエンスジャーニーの強みです。
カスタマージャーニーの終着点はセールス(商品サービスが売れること)であり、企業側の目線です。しかし、コンテンツマーケティングにおいては、そのような短期的な視点だけでなく、ユーザーにファンになってもらう長期的視点が大事です。
最大の利点は、オーディエンスに本当にフォーカスできるということ。ターゲットグループではなく、オーディエンスのことを考えられるという点です。
もうひとつは、オーディエンスを惹きつけて離さないコツが含まれていること。
私の新しい本で「binge-content」と呼んでることなんですが・・。binge-watchingという言葉を聞いたことがありますか?1つのテレビシリーズのいくつものシリーズを一気にまとめて視聴することをいいます。これと同じようなことを、みなさんのコンテンツでもぜひやってほしいんです。
マーケティングファネルのように、ステップを踏むごとにオーディエンスは少なくなっていくものですが、このようなTVシリーズのやり方を取り入れることで、すべてのシリーズを見逃してはいけないとオーディエンスをしっかりつかまえつづけることができます。
これが私の考え方の根本です。このジャーニーに沿ったコンテンツ全体を1つの最高なTVシリーズと捉えて、オーディエンスを離さないコツをハリウッドから学んでいるのです。各コンテンツはそのシリーズのエピソードにあたります。
一番大切なのは、最初の「普段の生活(ordinary world)」で、それをしっかり設定することがまず大事です。
次に「冒険へ出発するきっかけ(call to adventure)」は実際にオーディエンスをアクションに導くためのステップで、これによってメインの題材が定まります。
同じような形で、「冒険を思いとどまる(refusal to call)」では、そのブランドや題材に対して何かハードルになるもので、抵抗を取り除くか別の題材に代えるかという選択が必要になります。
それに対しての次のステップが「助言者に出会う(mentor)」のところで、そのハードルを乗り越えてもらう力になります。
これら最初の4ステップはやはりすべての基礎になるとても大切なところと考えます。
そして、6の「敵・競合(enemies)」のところもとても大事なのに見逃されがちなところ。自社の製品・サービスの競合については皆当然よく認識しているのですが、ここでつくることにしたコンテンツの競合についてはいま一度よく認識する必要があります。たとえばレシピをコンテンツにするとしたら、料理番組やスーパーマーケットまで競合になったりするのです。それでもそのコンテンツで戦おうとするかはよく考えなくてはいけません。
とりあえず最初の6までをやってみるだけでも、コンテンツのプランニングという点において今よりもより良いインサイトやコンテンツのアイデアが得られると思います。
ステップ9の「報酬(reward)」はカスタマージャーニーの場合は「売上」にあたりますが、オーディエンスジャーニーの場合は「信頼」になります。
これらのステップにおけるコンテンツマーケティングのゴールは何よりロイヤルオーディエンスを得ることです。
いえ、あくまでこの12のステップを網羅するというだけで、いくつかのステップが共通するコンテンツということもありえます。1つのコンテンツを再利用するというのも立派な戦略です。SNSや外部メディアなど含めれば、実際たくさんチャンスがあります。
オーディエンスファーストの考え方です。その考え方そのものがコンテンツマーケティングであり、結果を大きく左右します。どのプラットフォームでどの形態でどのコンテンツを出すかという話ではありません。「何を」提供するかが大事なのではなく、「どのような考え方」でマーケティングしていくかという部分が求められるのだと思います。
コンテンツマーケティングにはハリウッドと同じようにshowrunner(番組制作責任者)が必要だと思っています。大筋のストーリーラインを決め、ライター達を束ねる人です。そしてライター達もコンテンツマーケティングを理解していることが重要です。同様に、マーケティングを分かっているジャーナリスト、マーケティングを分かっているTV製作者というような人たちがこれからはもっと必要になってくると思います。
私たちはもっとメディアパートナーと協力して進めていくべきです。それは今までのような30秒のCMスポットに資金とリソースを投入するということではなく、広くどのようなコンテンツの組み合わせ・最適なプラットフォームでどのようなストーリーを伝えていくか、まず最初の戦略立案(メディアプランニング)の時点でしっかりとやっていくということです。
正直アメリカのマーケティングはかなりアグレッシブで、分かりやすくセールスに結び付けようとしているものが多いように感じます。その点オランダは、コンテンツを提供する中で結果的に購読してくれたり、売り上げに結び付けばというもう少しマイルドなアプローチです。
もう一点は、私たちはたった17百万人の小さな国なため、コンテンツマーケティングを始めやすいというのがあります。オランダで試金石として始めたものを他のヨーロッパの国にも展開し、徐々に広げていくというようなことができます。
実はオランダはTV番組フォーマットの輸出国としても有名です。たとえば”voice of 〜国名〜” という今や世界中に展開されている歌のオーディション番組などいろいろな番組が世界中に輸出されています。コンテンツクリエーションの強さという意味では、それがコンテンツマーケティングに生かされているという面は大いにあると思います。
コミュニケーションに関する研究が盛んと言われるオランダで活躍するカーライン。オーディエンスへフォーカスする姿勢がひしひしと伝わるインタビューだった。
オーディエンスジャーニーは、自らも悩みながらコンテンツを作り出す彼女だからこそ導き出せたフレームワークなのだろう。
実際にバズ部でもオーディエンスジャーニーを日頃のコンテンツ制作、メディア設計に活かしている。
ぜひ参考にしてほしい。
▼カーラインが提唱する「オーディエンスジャーニー」の詳細記事はこちら