- オンライン
12/18水13:00〜15:30
アメリカの不動産テック企業「Zillow(ジロー)」を知っているだろうか?
「Zillowing(Zillowする)」というZillowアプリを使って家をブラウジングするという意味の言葉が広まったほど、アメリカではトップクラスに有名な企業だ。
そんなZillowが最近、「このままでは本来目指していたゴールが達成できない」とブランドの再構築(リブランディング)を行い、成功したことが注目されている。
リブランディングといえば、よく有名企業の失敗事例を見かける。
例えば2010年にアパレルのGapが新しいロゴに刷新し多くの批判と数百万ドル(数億円)の損失という結果となったり、2009年に飲料のトロピカーナがオレンジジュースのパッケージデザインを変更し売上が20%減少し3000万ドル(40億円)の損失となったりしている。
では、Zillowはなぜ成功したのか?
その裏には、デザイン一新などの表面的な変更に留まらず消費者ニーズを徹底的に理解した根本改善がある。
既存のブランドイメージを破壊し、どう新しく浸透させていくか。
Zillowの具体的な施策が、2023年9月に開催された世界最大級のコンテンツマーケティングのイベント Content Marketing World(CMW)の講演で紹介されていたので一部をぜひ紹介したい。
※本内容は、2024年2月20日にバズ部のメルマガ読者向けに配信した内容に加筆修正したものである。バズ部ではこういったコンテンツマーケティングに関する情報を月に1回程度配信している。ぜひ興味のある方はメルマガ登録してほしい。
目次
Zillowは、不動産のブラウジングからローン組みまでできる「家購入の全てができるアプリ」。「Zillowはブラウジングアプリではない、不動産エージェントである」というキャッチコピーが印象的だ。
日本もそうだと思うが、北米でも家を買うプロセスは非常にストレスフルだ。大量の書類を提出したり何件も内見したり頭金を用意したり…それをアプリ一本でシンプルにできるというのがZillowの画期的なところである。ミレニアル世代は電話で話したがらない、Z世代は話すことすらしたくない、アプリがいいという傾向があるとZillowのマーケティングトップが講演で話していた。
また、Zillowがすごいのは保有するデータ量が膨大であることだ。家の基本情報に加え、過去の価格推移までわかる。ボーリング場付きの家だったり、将来パン屋さんを開きたい人のためにオーブンが4つある家だったり、一人一人のニーズに合うような細かい検索機能まである。
「Zillowing(Zillowを使って家をブラウジングする)」という言葉が広まっていた通り、Zillowはすでに有名なブランドだ。なぜリブランディングする必要があったのだろうか?
それには、Zillowが本当に伝えたいブランドと、消費者のブランドイメージとの乖離があったからだ。
「Zillowing」という言葉は、Zillowを使って憧れのキッチンを眺めたり、上司の家の値段を調べたり、隣人のインテリアを覗き見したりするようなことを指す。Zillowは、このような単に面白おかしく見るだけの「Zillowing」から脱却し、本来のゴールである「より多くの人のマイホームを現実にする」に焦点を当てたブランド戦略を再構築した。
「Zillowing(Zillowを使って家をブラウジングする)」という言葉が広まっていた通り、Zillowはすでに有名なブランドだった。しかし、確立されたブランドであっても、変化するニーズの中でその評判を維持し続ける必要がある。
Zillowは、覗き見る楽しみを提供する単なるブラウジングアプリとしての側面を受け入れながらも、本来築きたかった「家購入の全てができるアプリ」を実現するための戦略を展開することを決めたのだ。
CMWの講演ではZillowが行なった3つの施策が紹介されていた。
①誰のニーズに応えるべきか明確にし、たった一人に話しかけるように発信する
②「自分にも家が買える!」と確信させるためのサービスを開発する
③誰もが予期しない場にコンテンツを発信し、既存イメージを破壊する
施策の結果、「単なる検索ツールを超えている」という認識+12pp(パーセントポイント)増加、ブランド純粋想起94%(推移は不明)となった。
(講演スライドより再作成)
印象的だったのはZillowのマーケティングトップの方が言っていた言葉だ。
私たちが社内でZillowブランドについて語るように、顧客が(単なるブラウジングとは違う側面の)Zillowについて話すようになったんです。その時、私たちは何かを達成したと確信しました。
社内で話しているようなレベル感で顧客が自社について話してくれるようになるなどすごいことであり、しっかりと魅力が伝わっている証拠である。
なぜここまでできたのか?Zillowが実施した3つの施策を紹介する。
Zillowは独自の調査から、「初めての住宅購入者が増加している」ことに着目した。(※ちなみに北米では家を何度か買い替えるのは珍しくない)この新たな購入者が誰なのかを徹底的に調査した結果、70%が既婚者であり、40%が幼い子供(多くは5歳未満)を持っており、78%がペットを飼っていることがわかった。
つまり、初めての住宅購入者は単に自分自身のためだけに物件を探すのではなく、家族やペットの存在によって、庭の有無やドッグランの有無などが家購入の決め手になり得るのである。
また、今コンテンツ発信に重要なのは「他の誰でもない、自分が話しかけられている」感をコンテンツに入れることである。そこで「人のために家探しする」というニーズにぴったり合致するメッセージを発信することにした。
▼こちらが実際にターゲットに向けて作られたCMの一つだ。(実家近くの家を探してる?というメッセージ)
アメリカでは金利が2020年には3%だったのが今は7%に上がり、購入できる家の選択肢が狭まっている。新規購入者の場合はなおさらで、金銭的問題に加え複雑な購入プロセスに圧倒され、家購入から遠ざかってしまう人もいる。家を購入する人を増やすためには、「自分にどれだけの家が買えるか」を知ってもらい、自分が家を購入するというイメージを鮮明に持ってもらう必要があるとZillowは考えた。
そこで、価格計算ツールを開発。年収や頭金を入力すればいくらの家が買えるのかがすぐわかるようにし、詳細機能で金利や返済期間などかなり細かく入力できるようになっている。
そして、次に人々が気になるのは、じゃあローンはどこで組めるのかということである。
実はZillowを通じて住宅ローンを受けることが可能であったが、多くの人がその情報に気付いていなかった。そのため、このような人々に対して、ピンポイントな動画広告を発信した。
▼こちらがその動画(まだ上司の家の値段をZillowしてるの?あなたの家のローンをZillowできるよ!)
「Zillowは家購入の全てができる」と訴求するコンテンツ(動画広告など)を作っても、それが広まらなければ意味がない。
CMなどマスへのアプローチも大事ではあるが、Zillowは通常とは違う方法もとることにした。これまでの既存イメージを大きく破壊するインパクトが必要だったからである。
そこで、NBA決勝戦、映画の広告、ディズニーとの連携(映画ホーンテッドマンションとのコラボ広告など)、Spotifyポッドキャストなど誰も予期しない場にコンテンツを配信。その意外性で多くの人が注目し、Zillowが今までのイメージと違うことをより伝えることができた。
以上の3つの施策により、冒頭の「単なる検索ツールを超えている」、「ブランド純粋想起94%」という認識の向上といった結果となった。
Zillowのリブランディング施策から学んだのは、たとえ大企業でも企業は進化し続けなければならないということだ。なぜなら、消費者の価値観は常に変動するからだ。消費者の強いニーズに特化しカスタマイズされたものが他社から出されたら一瞬して負ける。常に私たちは人々の細かいニーズも敏感に感じとり、変化しなければならない。
広告に頼り切ったマーケティングの打開策としてコンテンツマーケティングについて調べているけれど、よく分からないと悩んでいませんか?
本書は弊社やクライアント様がコンテンツマーケティングに取り組み
など、コンテンツマーケティングの効果と、具体的な施策内容を全94ページに渡って詳細に解説しているものです。
ぜひ、貴社のWEBマーケティングにもご活用ください。