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05/14水12:00〜13:00
「サイトのどこで離脱が起きているのか、何を直せばよいのか、わからない」
「分析ツールを導入したいけれど、料金が高いし、難しそう……」
このような悩みを抱えている方はすぐにでも、「Microsoft Clarity(マイクロソフト クラリティ)」を導入してほしい。ClarityはMicrosoft社が無料で提供している行動分析ツールだが、「こんなに簡単に、しかも明確に、答えがわかるのか!」と驚くはずだ。
この記事では、Microsoft Clarityの基本から応用まで、実務で即効の効果を出すためのガイドを提供する。
Webマーケティングの現場では、数値だけではなく “ユーザーの実際の行動” を把握する重要性が高まっている。本記事をきっかけとして、Microsoft Clarityを使いこなし、ピンポイントで効果の出るサイト改善をスタートしよう。
目次
まずはMicrosoft Clarityとは何か、基本的な事項を確認していこう。
Microsoft Clarityは、2020年にMicrosoft社から公開された完全無料のWebサイト行動分析ツールである。
サイト訪問者が「どこをクリックしたか」「どこで離脱したか」といった具体的な行動を可視化し、見つけにくいユーザー体験(UX)上の課題を発見できる。
【Clarityの基本情報】
Clarityはこのように無料でありながら強力な分析力を備えており、誰でも始められる有用なツールである。
GA4との関係性について、もう少し詳しく見ておこう。
これまで、サイト分析といえばGoogle社が提供する「Googleアナリティクス(最新バージョンはGA4)」が、業界標準として君臨してきた。
そこへMicrosoft社のClarityが颯爽と登場してきたわけだが、GA4では獲得できない「生の体験」をデータ化する革命的ツールとして話題になった。
Microsoft Clarityは、数値の羅列ではなく、人間の行動を直接見せるという根本的なアプローチの違いがある。
【他ツールと比較したClarityの特性】
こういった価値こそが、Clarityがサイト改善の必須アイテムとなっている理由だ。
では次に、これらの価値を実現する具体的な3大機能「ヒートマップ」「レコーディング」「インサイト」の実力を徹底解剖していこう。
Microsoft Clarityの核心は、ユーザー行動を立体的に可視化する3つの主要機能だ。ヒートマップ、レコーディング、AIインサイトが連携して、サイト上で実際に何が起きているかを多角的に把握できる。
ヒートマップはWebページ上のユーザー関心度を色の濃淡で表現する視覚的ツールだ。赤は高関心、青は低関心を示し、ページの注目ポイントを一目で把握できる。
【Clarityで使えるヒートマップ分析の種類】
ヒートマップの真価は、複雑なデータを直感的に理解できる点にある。
数値では見えにくいパターンが視覚的に浮かび上がり、専門知識がない人でも「このボタンは埋没している」「この情報は読まれていない」といった問題を簡単に発見できる。
レコーディングはユーザーのサイト操作を動画として再生する機能だ。マウス移動・クリック・スクロール・入力などを再現し、ユーザーの生の行動を克明に記録する。
【レコーディングの強力な分析価値】
レコーディングの最大価値は「ユーザーの文脈」の理解にある。
たとえば、「直帰率80%」という無機質な数字だけでは原因は不明だ。しかし、録画を見れば、「料金表の見つけにくさによる離脱」といった具体的な要因が浮かび上がってくる。
Clarityのインサイト機能は、AIを駆使してユーザー行動から自動的に問題パターンを検出するものだ。人間の目では見逃しがちな問題も浮き彫りになり、効率的に改善点を特定できる。
【AIが自動検出する4大問題行動】
加えて、生成AIのCopilot機能では、チャット形式でデータ解釈を支援してくれる。
「エンゲージメントが最も多いページはどれですか?」「ユーザーの不満が最も多いページはどれですか?」といった質問にAIが即座に回答してくれる。分析の専門知識なしでも、核心的なインサイトを引き出せる。
これは、知識の差や技術力によるデータ活用の障壁を破壊する、革命的な進化といえるだろう。
Microsoft Clarityの導入は簡単で、専門的な技術や知識がなくても短時間で実装できる(慣れている人なら5分もかからないだろう)。
以下では、Clarityを実際にサイトに導入する際の基本的な流れを解説する。
Microsoft Clarityを利用するための最初のステップは、アカウント作成とプロジェクト設定である。
Microsoftの公式Clarityサイト(clarity.microsoft.com)にアクセスし、トップページの[使い始める]または[サインアップ]ボタンをクリックする。
サインアップ方法選択のダイアログが表示されるので、既存のMicrosoftアカウント・Facebookアカウント・Googleアカウントのいずれかでサインインする。
メールアドレスの確認画面が表示されたら、Clarity使用条件の確認などを行い、チェックボックスにチェックを入れて[続ける]をクリックしよう。
続いて「新しいプロジェクトを追加する」の画面が表示される。
プロジェクトの名前(通常はサイト名)・WebサイトのURL・業種カテゴリを入力し、[新しいプロジェクトを追加する]をクリックしよう。
プロジェクトを作成すると、以下のような画面に遷移する。
Clarityをインストールするには、トラッキングコードを設置する必要がある。多数の設置オプションが用意されており、各サイトに合わせて最適な方法を選べる。
WordPressプラグインやGoogleタグマネージャー(GTM)を利用する場合は、一番上の段(サード パーティのプラットフォームにインストールする)の[すべてのプラットフォームを表示]をクリックして一覧を表示させよう。
WordPressやGTM、その他のプラットフォームが表示されるので、使いたい方法を選んで設定を進めていく。
以下は主要な設置方法の概要だ。
【トラッキングコード設置方法】
トラッキングコード設置後、正しく機能し始めると、「あと少しで完了です」の画面が以下のようなダッシュボードの画面に切り替わり、レコーディングやヒートマップにもアクセスできるようになる。
なお、初回のデータ表示までには、最大2時間かかる。「あと少しで完了です」の画面のままデータが表示されない場合、まずは2時間待とう。それでも反応がない場合には、設定手順を最初から見直すとよい。
Clarityを活用する前に、初期設定を確認しておこう。
まず、[自分のプロジェクト]をクリックしてプロジェクトリストを表示し、設定を行いたいプロジェクトの[歯車]マークをクリックする。
設定画面に遷移し、左側のメニューからさまざまな設定ができる。
とくに重要なのが、自社アクセスの除外(IPブロック)とプライバシーに配慮したデータマスキング(マスク)である。
フォーム入力の多いサイトや顧客情報を扱うページがある場合は、マスキング設定を慎重に行おう。定期的にレコーディングをチェックして、意図しない情報漏えいがないか確認する習慣を持つことが大切だ。
また、Clarityのようなレコーディングツールを使用する場合、プライバシーポリシーでその旨を明示することが法的にも推奨される。「当サイトではユーザー体験向上のため、Microsoft Clarityなどの計測ツールを利用し、匿名化のトラフィックデータを収集しています」といった文言を追加しておこう。[Clarity プライバシーポリシー]と検索すると、各社の実際の文言がヒットして参考になる。
もうひとつ補足として、プロジェクトの設定画面から[セットアップ]にアクセスすると、Googleアナリティクス(GA4)やGoogle広告との連携ができる。
Clarityが提供する質的な行動データと、GA4やGoogle広告が持つ定量的な成果データや流入経路データを連携すると、より深く具体的なサイト改善や広告最適化のアクションへつなげられる。
たとえば、GA4で付与したUTMパラメータ(campaignなど)を基準にClarityで行動パターンを観察したり、Google広告のクリックがどのような行動につながっているかを確認したりできる。サイト改善の質が向上するので、ぜひ連携しておこう。
Microsoft Clarityから得られるデータを実際のサイト改善に活かすには、単に眺めるだけでなく、課題発見から改善実施、効果検証までのサイクルを回すことが重要だ。Clarityを用いたサイト改善の実践方法を見てみよう。
ヒートマップは、ユーザーがページのどの部分に関心を持ち、どこを見落としているかを視覚的に示す強力なツールだ。ページレイアウトやコンテンツ構成の問題点を、効率的に見つけ出せる。
ページ上のどの要素がクリックされているかを確認し、意図したとおりにユーザーが行動しているか評価する。たとえば、CTA(Call To Action:行動喚起)ボタンに十分なクリックが集まっていないなら、視認性や魅力度に問題がある可能性が高い。
あるいは、クリックできない要素(装飾的な画像やテキスト)に多くのクリックが集中している場合は、それらをリンクに変更するか、クリックできないことが明確にわかるデザインへ修正すべきである。
ページのどこまでユーザーがスクロールしているかを分析し、重要なコンテンツの配置を最適化する。
スクロール率が急激に低下する地点があれば、そこにユーザーの関心を引き続けない要素がある可能性が高い。重要な情報や行動喚起の要素がスクロール率の低い位置にある場合は、より上部に移動させる、あるいはユーザーの興味を引き続けるための工夫が必要である。
同じページでも、デスクトップとモバイルではユーザー行動が大きく異なる場合がある。Clarityではデバイスタイプごとにヒートマップをフィルタリングできるため、両者を比較して問題点を特定できる。
たとえばモバイルではスクロール率が極端に低い、特定のボタンがタップしづらいといった問題が明らかになれば、レスポンシブデザインの改善につなげられる。
注意(アテンション)マップを使って、ページ内の各コンテンツ要素の「実際の注目度」と「ビジネス上の重要度」を比較する。
重要なメッセージやオファーが十分に注目されていなければ、デザイン的に強調する、位置を変更するといった対策が必要である。逆に、さほど重要でない要素に過度な注目が集まっている場合は、ユーザーの注意を分散させないよう調整しよう。
レコーディングでは、ユーザーが実際にどのようにサイトを操作し、どこでつまずいているかを具体的に観察できる。
GA4などの定量データから離脱率が高い・またはコンバージョン率が低いページを特定し、それらに絞って録画を確認する。Clarityのフィルター機能を使えば、特定ページのセッションのみを抽出できる。あるいは、Clarity上で「ページの継続時間(ユーザーがページに滞在した時間)」「ページのクリック数」といった条件でも絞り込みできる。
複数の録画を観察し、似たような行動パターンを分類する。たとえば「フォームの特定項目で入力を中断する」「特定のセクションで長時間迷う」「特定のボタンを何度もクリックする」といったパターンが複数のユーザーに共通していれば、それはUIの問題点を示している可能性が高い。
録画を細かく観察し、ユーザーがつまずいているポイントの詳細を把握する。フォーム入力でのエラーメッセージがわかりにくい、リンクやボタンの反応が遅い、情報が見つけづらいレイアウトになっているなど、具体的な問題点を考察しよう。たとえば、ユーザーがマウスを行ったり来たりさせている、同じ場所を何度もクリックしている、長時間滞留している、といった行動は、混乱や不満の兆候である。
モバイル端末とデスクトップでは異なる問題が発生することが多い。デバイスタイプでフィルタリングし、モバイル特有の問題(タップターゲットが小さすぎる、タッチ操作での誤タップが多発するなど)やデスクトップ特有の問題(情報が分散しすぎている、ナビゲーションが複雑すぎるなど)を区別して特定する。
問題点を探すだけでなく、スムーズにコンバージョンまで完了したセッションの録画も分析する。成功パターンを理解すれば「何がうまくいっているか」という視点が得られる。それを強化する方向での改善策が立案できる。
インサイト機能では、ユーザーのフラストレーションや困惑を示す特定の行動パターンが自動検出される。これらのインサイトを活用し、ユーザーにストレスを与えている具体的なUI要素や機能を特定して改善しよう。
ダッシュボードの[インサイト]セクションに表示された項目から、[ビデオ]マークをクリックすると該当ページの録画を確認できる。
ユーザーが同じ場所を短時間に連続してクリックする行動は、明らかなフラストレーションのサインだ。
反応が遅すぎるボタンやクリックしても期待通りに動作しない機能など、録画を確認して原因を突き止めよう。
クリックしても何も反応しない要素へのクリック(デッドクリック)は、誤解を招くデザイン(下線付きテキストや反応しそうに見えるアイコン)を修正するか、実際にクリックに反応するよう変更する。
とくにモバイル画面では、タップできる部分の判別が難しい。操作可能な要素とそうでない要素を、視覚的に明確に区別することが重要である。
新しいページに移動した直後にブラウザの戻るボタンで元のページに戻る行動(クイックバック)が頻出しているページを特定しよう。
改善策として、遷移前ページリンクのテキストやアイコンを明確にする、リンク先の説明を追加する、あるいはポップアップでプレビューを表示するなどを検討する。
ユーザーが情報を探して何度も上下にスクロールする行動(過剰スクロール)は、情報の配置や設計に問題があることを示す。
こうしたページでは、情報の整理(見出しの明確化・目次の追加・重要情報の強調)、検索機能の強化、ナビゲーションの改善などを行い、ユーザーが目的の情報にすぐたどり着けるようにする。
Clarityでは、インターフェース内の複数の場所からCopilot(生成AI)を利用できるようになっている。
たとえばダッシュボードの場合、右上にあるCopilotのアイコンをクリックすると、チャット画面が開く。
例として「ユーザーエンゲージメントを向上させるにはどうすればいいですか?」と質問してみると、以下のとおりデータ分析結果をもとに提案してくれる。
どんどんCopilotを活用して、データの解釈や実践的な改善案の策定に役立てよう。
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このように、Microsoft Clarityの各分析機能を活用すれば、ユーザーのストレスポイントを発見して、具体的な改善策を導き出せる。
ヒートマップでは視覚的に問題点を把握し、レコーディングでは実際のユーザー行動から詳細な障壁を特定し、インサイト機能ではフラストレーションの原因となる要素を自動検出できる。さらにAIによる分析サポートを使えば、人間の洞察力を最大化できる。
重要なのは、これらの分析から得た洞察を実際の改善アクションに落とし込み、改善後の効果を再度Clarityで検証するというPDCAサイクルを確立することだ。
データに基づく継続的な改善プロセスを組織文化として定着させることが、長期的なサイト最適化の鍵となる。
本記事では「Microsoft Clarity」をテーマに解説した。要点をまとめておこう。
最初にMicrosoft Clarityとは何か、基本事項を解説した。
Microsoft Clarityの3つの機能として以下を解説した。
Microsoft Clarityの導入方法と基本設定として、以下のポイントを解説した。
Microsoft Clarityを使ってサイト改善に活用する実践例として以下を解説した。
無料で利用できるClarityは、予算やリソースに制約のある小規模サイトでも、プロフェッショナルレベルのUX分析ができる画期的ツールである。既存のGA4に加えてClarityを導入し、数値と行動の両面からユーザーを理解しよう。得られた発見を、効果的で根拠に基づいた改善施策の実行につなげてほしい。
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